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異世界で、英雄譚をはじめましょう。  作者: 巫 夏希
第四章 封印されし魔導書編
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第百七話 ライトス銀と魔導書⑤

「よくここまでやってきた。……まあ、正確に言えばキキョウがここまで連れてきたのだから、ということになるか。キキョウよ、よく予言の勇者ご一行をここまで連れてくることが出来た」


 レガドールの国王は、ハイダルクの国王と雰囲気が似ていた。とはいえ、古くは国王の一族は一人の男の子孫になっているらしいので、ハイダルクの国王とレガドールの国王は遠い親戚ということになる。


「さて、君たちが次に何をすべきなのか、教えて進ぜようじゃないか。聞いた話によれば、バルト・イルファという魔術師によって船が燃やされてしまった、と。ならば船を造らねばなるまい。とはいえ、この国で作る船は、ただの船じゃつまらないだろう?」


 ニヤリ、と国王は笑みを浮かべた。


「国王陛下。……その、何をお考えになられているのでしょうか?」

「考えている。考えているとも。私は常にいつも考えている。……ええと、確か、そうだったな。ルズナは居るか?」

「ルズナ。……あの古文書ばかり読んでいる学者ですか? 彼が一体……」

「いいから呼んできなさい。彼の研究を使えば、きっと度肝を抜くはずですよ。あの神様気取りの馬鹿女の、ね」

「了解いたしました。……それと国王陛下、いくらこのような場所だとはいえ、言葉を慎んだほうがよろしいかと。どれほどあの女の手下が紛れているかどうか、未だはっきりとしていないところもございますので」


 そう言って、キキョウは謁見の間を後にした。




 キキョウがルズナと呼ばれる学者を連れてくるまで、五分ほどの時間を要した。キキョウに連れられてきたのは古く分厚い書物を読んでいた男性であり、連れてこられたというよりもその見た目からすると――『引っ張られてきた』という側面のほうが強いだろう。


「どうしたんですか、キキョウさん。急にこのような場所に連れてきて……。ややっ、ここは謁見の間ではありませんか。国王陛下への報告の日は未だのはずでしたが……。何かありましたか?」


 眼鏡の位置を直しつつ、ルズナは言った。

 なんというか、強烈なキャラだなあ……。


「ルズナよ。お前、過去に古文書にてあるものを発見した、と言っていたな。確か『空飛ぶ船』とか言っていたか……」

「……ええ、確かに言いましたが」

「それを作ることは、理論的にも可能だと、言っていたな。そして準備も進めている……と」

「ええ、まあ、確かに……言いましたが?」

「足りないものは何がある? ライトス銀か? 浮力を作る空気よりも軽い素材とやらか? それともそれ以外のものか?」

「いえ、そう言われましても……。ああ、確か、ライトス銀だったかと思います。ライトス銀なら、ライトス山から採掘すればいいのですが、最近、ライトス銀があの山から採掘されにくくなってきたのですよね」

「採掘出来にくくなった? ……ああ、そういえばそのような報告があったような気がしたな。なぜ採掘出来ないのだったかな?」


 ルズナは眼鏡を直すような仕草を一つ。


「ええ、ええ。確か、採掘の最中にどうしても破壊できないような石が見つかりまして……。ああ、でも大きさ的には石じゃなくて岩になるのかな。とにかく、それを破壊しないと、もうこれ以上採掘することが出来ないのです。四方八方坑道は伸びているのですが、そこからは横にも奥にも進めることが出来ないのです」

「ふむ……。そうだったな。しかし、ライトス銀が無ければその空飛ぶ船も作ることが出来まい……」


 国王陛下は何か考えるような仕草を始める。

 つまるところ、これ以上は手詰まり。

 やる方法としては、明確に一つ決まっているというのだけれど、それをこちらに提示することが出来ないということだろう。


「あの、僕たちが向かうことは出来ないですか?」

「……というと?」

「僕たちがライトス銀を取りに行くことは、可能でしょうか?」


 国王陛下が言いたくて言えなかったことを、こちらから提案する。

 それを聞いて目を丸くするのは国王陛下とキキョウだった。

 ……当然だろう。あちらから言い淀んでいたことを、敢えてこちらから提示したのだから。


「それは不可能では無い……だろう。だが、そんなことを頼んでしまっていいのかね? 別に、ほかの人に任せてしまっても問題ない。君たちに危険を冒してまで、ライトス銀をとってもらう必要は無い。それに、ライトス銀が取れない可能性だってあるわけだからな」

「いや、けれど待っている時間もありませんから」


 その言葉にメアリーたちも頷いていた。

 どうやら、僕たちの考えは一緒だった。

 それを見た国王陛下は頷いた。

 その頷きは、ライトス銀を採取してきて良いという同意の頷きだった。


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