一
少しだけ、昔のこと。
白い髪の女の人が、黒い髪の男の人を助けて、森へ戻ってきた後のこと。
『エルディリカ。樹の中の命を救ったとして、千年間の追放を言い渡す』
白い髪の男の人が、そう言いました。
ひどく重そうな手錠を付けられた女の人は、そっと目を閉じました。
『何か、言うことはあるか』
白い髪の男の人が尋ねると、白い髪の女の人は小さく首を振りました。
『では、これにて閉廷する』
かん、かん。終わりを告げる音が、響きました。
白い髪の女の人は、金色の髪の人たちに連れられて、歩き出しました。
『なあ、どういうことだよ! おまえ、こうなるって分かってて、俺を助けたのか?』
手錠をかけられた白い髪の女の人に、傷だらけな黒い髪の男の人が言いました。
白い髪の女の人が立ち止まり、それに伴って金色の髪の人たちも立ち止まります。
女の人は少しだけ顔を上げると、黙ったまま小さく頷きました。
『エルディリカ』
ふと、別の場所から声が聞こえました。
女の人に声をかけたのは、先ほど判決を言い渡した白い髪の男の人でした。
『これが、おまえの望みだったのか?』
その言葉に、女の人はまた小さく頷きました。
それを見た白い髪の男の人は、悲しそうに俯きました。
『青年、君はどうか好きなように生きて。
君はどうか、自由に、何にも縛られずに、生きて』
白い髪の女の人はそう言って、再び歩き出そうとしました。
すると、黒い髪の男の人が、白い髪の女の人の手をぎゅっと握りました。
『……一緒に行く』
黒い髪の男の人の言葉に、白い髪の女の人は目を丸くしました。
『おまえ、言ったじゃねえか。俺の生きられる世界があるって。
そう言って、連れ出してくれたじゃねえか。一緒に行こうって』
黒い髪の男の人が、白い髪の女の人を、真っ直ぐに見つめました。
白い髪の女の人は、黒い髪の男の人を、目を丸くしたまま見つめました。
『だから』
ぎゅう、と、黒い髪の男の人は、白い髪の女の人の手を握り締めました。
『一緒に行こう』
それは、白い髪の女の人が、黒い髪の男の人に言った言葉でした。
『――ありがとう』
白い髪の女の人がそう言うと、黒い髪の男の人が嬉しそうに笑いました。
その笑顔を見た白い髪の女の人も、嬉しそうに微笑みました。
一緒なら、どんな世界でも生きられると思えました。




