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(旧作)ワールドアウト・ロストマン  作者: くつぎ
唯 黒い髪の俺とおまえ
37/39

 少しだけ、昔のこと。

 白い髪の女の人が、黒い髪の男の人を助けて、森へ戻ってきた後のこと。


『エルディリカ。樹の中の命を救ったとして、千年間の追放を言い渡す』


 白い髪の男の人が、そう言いました。

 ひどく重そうな手錠を付けられた女の人は、そっと目を閉じました。


『何か、言うことはあるか』


 白い髪の男の人が尋ねると、白い髪の女の人は小さく首を振りました。


『では、これにて閉廷する』


 かん、かん。終わりを告げる音が、響きました。

 白い髪の女の人は、金色の髪の人たちに連れられて、歩き出しました。


『なあ、どういうことだよ! おまえ、こうなるって分かってて、俺を助けたのか?』


 手錠をかけられた白い髪の女の人に、傷だらけな黒い髪の男の人が言いました。

 白い髪の女の人が立ち止まり、それに伴って金色の髪の人たちも立ち止まります。

 女の人は少しだけ顔を上げると、黙ったまま小さく頷きました。


『エルディリカ』


 ふと、別の場所から声が聞こえました。

 女の人に声をかけたのは、先ほど判決を言い渡した白い髪の男の人でした。


『これが、おまえの望みだったのか?』


 その言葉に、女の人はまた小さく頷きました。

 それを見た白い髪の男の人は、悲しそうに俯きました。


『青年、君はどうか好きなように生きて。

 君はどうか、自由に、何にも縛られずに、生きて』


 白い髪の女の人はそう言って、再び歩き出そうとしました。

 すると、黒い髪の男の人が、白い髪の女の人の手をぎゅっと握りました。


『……一緒に行く』


 黒い髪の男の人の言葉に、白い髪の女の人は目を丸くしました。


『おまえ、言ったじゃねえか。俺の生きられる世界があるって。

 そう言って、連れ出してくれたじゃねえか。一緒に行こうって』


 黒い髪の男の人が、白い髪の女の人を、真っ直ぐに見つめました。

 白い髪の女の人は、黒い髪の男の人を、目を丸くしたまま見つめました。


『だから』


 ぎゅう、と、黒い髪の男の人は、白い髪の女の人の手を握り締めました。


『一緒に行こう』


 それは、白い髪の女の人が、黒い髪の男の人に言った言葉でした。


『――ありがとう』


 白い髪の女の人がそう言うと、黒い髪の男の人が嬉しそうに笑いました。

 その笑顔を見た白い髪の女の人も、嬉しそうに微笑みました。


 一緒なら、どんな世界でも生きられると思えました。


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