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Special  作者: 久莉
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リスクとヤク

リスクとヤク

しょっぱいギャグにさえなっているのか不明な代物

キャラ大崩壊

これは駄作



 広大な敷地を誇るナイト学園、その中でも屈指の広さを持つ武術訓練場。現在はその一割にも満たない空間しか使われていないが、その一角がなんとも言えない空気に包まれていた。

 今日は珍しく全員集合し連携訓練のはず、そう確かに訓練をしている筈だったのだ。なのに、それなのに。


「リスクのアホ!」

「うるせぇこの天狗野郎!」

「「ぐぬぬぬ…!!」」


 どうしてこうなった。


 それが、この場にいる渦中の二人を除いた全員の共通見解だった。

 前述の通り生徒らは訓練を行っており、確かに最初は順調に課題と長所を見付けながら滞りなく行われていた。

 ここ最近の課題はいくら体が覚えていると言っても戦闘における思考法がまだ拙いスリクやナイト学園に在籍して日が浅いヤクにウィンクらといかに連携するか。

 基本的なことは人数が増える前とは変わらないが、細かいことは教師らも交え戦闘に関しては一日の長であるカリスを中心に長い間彼の隣で戦ってきたリスクもその話し合いに加わっていた。知識も豊富なラルも時折意見を求められたりもするが、基本的にあまり口をはさむ機会は少ない。不自然や不都合があればすぐに言える質でもあったので、このことを誰も変に思っていなかった。

 ことはヤクが発したある一言につきている。


「今みたいになるなら先行は僕の方がいいんじゃない?」

「…は?」

「ヤク、いきなり…でもないな、うん。どうしてそう思うんだ?」

「言うからにはそれなりの理由があるんだろうな」


 遮蔽物によって敵味方双方視界が制限された状況下での奇襲を想定した訓練。基本方針はリスクとカリスが先行し、その後をウィンクとヤクの第二陣も更に畳みかけるように奇襲。そして小柄かつ身軽なスリクや魔法使い二人が状況に応じて攪乱という方向で一度訓練。改善点はないか話し合っている中に、突如ヤクが割り込んできた。常なら何かしらたしなめてくるウィンクが何も言ってこないことから、彼にも思い当たる節があるらしい。


「まず、現状として連携がとりやすい組み合わせで今の訓練をやったのは分かってるよ。でもこの状況下で柔軟性を求めるなら先行は僕とリスク。第二陣にウィンク、スリク。それで一番後ろにカリス。スリクとカリスは入れ替えてもいいかもしれないけど…こっちで僕は試してみたいね」


 すらすら、明朗と告げられた内容に一同少しだけぽかんとしてしまう。双剣を扱うカリスが後ろで魔法使いたちの護衛?と言うのは彼らにとっては予想しづらいものであった。


「俺が一番後ろ?」

「少なくとも一番前にいるのは僕はやめた方がいいと思う。確かに戦闘中の状況って混乱しやすいけど、指示を出す人間が全体を俯瞰出来ない位置にいるってどうなのさ。カリスはそういう役回りだって分かっているから慎重な動きできるだろうし。あと、詠唱中って無防備じゃん?僕は簡易詠唱しか基本的に使わないからそうでもないけど、大きな魔法使うなら誰かが守ってなきゃ危ないと思うんだよね」


 スリクって性格的に自分も飛び出して行っちゃうでしょ。さっきも見てたんだけど。

 そう後から告げられた言葉に一同は更に驚く。確かにヤクは第二陣ではあったが、魔法と剣術両方共に器用に使いこなしかなりせわしなく動いていたヤクに観察をする余裕がどこにあったのか。


「まあ僕は天才だからね、それ位朝飯前さ!」

「…それはもう聞き飽きた」


 急に割り込まれて機嫌が急降下したリスクは低く返した。どうにもこのまっすぐすぎる少年と自己陶酔のきらいがある少年の二人は折り合いが悪い。少年のお決まりの自慢めいた発言を聞いて辟易した様子で切り返す。


「それに、僕は足が速いしちゃんと剣もあてられる。それに魔法での攪乱なんてお手の物だし?」

「器用貧乏なだけだろ」


 思わず言ってしまったリスクの一言にヤクがギッと睨み付ける。いつも飄々としているヤクにしては珍しくまた妙に迫力があるその表情に思わず少しリスクはたじろいだ。


「ねぇリスク?」

「な、何だよ」

「器用貧乏っていうかさ、その貧乏って部分?意味そのまんまみたいに本当みすぼらしいと思わない?それってすごく僕に似合わない言葉だと思うんだけど」

「知るかよそんなの、自慢やお得意のナルシストならよそでやれよ」


 この妙に人の琴線に触れてくるようなヤクの物言いがリスクは苦手、いや正直に言ってしまえば嫌いだった。雰囲気が違うとも分かってはいたがいかんせん良くも悪くも嘘を吐けないリスクは苛立ちもそのままにヤクにぶつけてしまった。それに呼応するようにヤクの機嫌も急降下して、瞬間的に沸点まで上り詰めた。


「ああもう我慢できない!あのさリスク、僕は器用貧乏って言葉がいっちばん嫌いなの!」

「だからなんだってんだよいちいちうざってぇなおい!」

「この僕に失礼なことを言ったことに対し謝罪を要求する!!」

「誰がそんなん了承するか!!」

「本当はこれくらいじゃすまない所をむしろ感謝してほしいくらいだね!!同学のよしみで譲歩してあげてんのにその態度ってなんなのさ!?」

「僕は何にも悪いことなんか何1つしちゃいねぇからだよ!!それで譲歩とかどうやらナルシストは大概がせっまい心の持ち主らしいな!!?」

「それは違うね!第一僕はナルシストではなく、僕への自己評価は全て客観に基づいたまぎれもない事実だ!!それは僕と世の中のナルシストの人たちに対する偏見だ!!」

「僕や他の皆といった客観という視点からはお前はナルシストだという共通見解があるんだがな!!」

「あ、また言ったな!?」

「あぁん!?何度でも言ってやるよこのナルシスト!!」

「こんの、敵に突っ込むことしかできない猪単細胞!!」

「てめぇ!!」


 まさに売り言葉に買い言葉。

 一瞬のうちに怒りの頂点に達した二人は周りの様子などお構いなしに互いに罵倒し合っている。しかも頭に血がのぼっているため、叫ぶ言葉はシンプル、言ってしまえば稚拙なものばかり。

 現在が訓練、つまり敵側の為にいつも以上の教師等が揃っている中でも構わずに言い争っていることから、語弊がややあるが、完全に互いに夢中になっている。

 この事態の収拾の為に一番に動こうとしたのはやはりと言うかなんというか、まあ息子のリスクが堂々と子供のような言い争いを続けていて情けないのと純粋の怒りの表情半々といったアシスで、怒声を発そうと一歩前に出た。のを、横から伸びた手が制する。


「カリス、」

「まあ、止めなくてもいいと思いますよオレは」

「何故?」


 少し長い前髪の隙間から覗く双眸は切羽詰まった様子はなく、アシスの低い声に問われてもその姿勢は全く崩れない。


「いや、まあ珍しい光景だなと思って。ほら、オレ等って歳の離れた兄弟みたいな側面あるんで、ああいう喧嘩とかほとんどしたことないじゃないですか」

「それはお前が他の生徒に強く出ないのもあるだろう」

「…否定しませんけど。少し様子見ましょうよ、リスクくらいの年頃はたまにはああやって遠慮のない言い争いも必要ですし」

「…最終的には止めるぞ」

「それは勿論。他の生徒らの意見も聞いて、次の訓練開始までには止めますよオレだって」


 ちらりとアシスが向けた視線の先に居るリスクの表情はなるほど確かに一見単に怒っているようにしか見えないが、わずかに喜色が見え隠れしている。考えてみればリスク、ヤク、そしてウィンクは同い年だ。生徒全員が少なからず歳に開きがあった今までと比べて、同い年で対等に接してくる存在は確かに新鮮だろう。そういった意味では思いっきり感情をぶつけられる相手と言うのは貴重だ。

 普段なら割と率先してリスクを止めに入るカリスも今はのんびりと構えて止めたらいいのか考えあぐねておろおろしているミカリとスリクに気にしないように言い含めているし、本当に気にしなくてもいいのかもしれない。もし目に余るようだったらウィンクもいるし止めようと考えたアシスはあっさりと言い争う二人の声を意識から追い出した。





 そうして暫く冒頭のような不毛極まりない言い争いを二人は続けていた。二人は武器こそ構えてはいないものの、半分つかみ合うような体制になっている。怖いのはヤクの魔法の暴発だが、実際の所ある程度安定した精神が要求されるためその心配はない(とラルのお墨付きである)。

 双方にブレーキ役の人間もいる訳だから、心配そうにそわそわとしていたスリクやミカリをカリスは宥めて、リスクが誰かと対等な立場で思いっ切りぶつかっているのを見守っていた。お前は母親か何かか。


「大体さ、いくら速くたって剣はあてるためのもので、当たらなきゃそれこそ意味なんてないよね!僕みたいになんだってそつなくこなせるのがいいに決まってる!!」

「一芸持っている奴の方がいいだろ!!特定の場面、もしくは使い方で誰にも負けない武器になるんだよ!!」

「でもその剣を振る為の体力が持たないんだから本当救えない!!このもやし!!」


 あぁ、最近なんだか筋力トレーニングを増やしているみたいだけど体力ないのを気にしていたんだな、とカリスは思い当たる。別に極端にもやしという訳でもないからオレは問題だとは思ってないんだけどな、それに多分リスクなら大丈夫だろうけど、あまり筋肉つけすぎると身長伸びにくくなるらしいし。それでもヤクに言われるのは嫌なんだろうな、今だってすごい眉間に皺が寄っている。オレも人の事なんて言えないけれど相変わらず分かりやすい表情してるなぁ、とのんびりと構えてみている。


「この、アホ、ボケナス!!お前なんかウィンクいなきゃどうせ上手く他人とうまくやれねぇだろうが!!」

「それリスクにブーメランって分かってる!?リスクだってカリスがいなきゃなんにもできないくせに!!」

「それはカリスが基本的になんでも優れているからだ当たり前の事言ってんじゃねぇよ!!カリスが僕の不足している所を補って、僕がその分自分の得意な事でカリスを助けてきたんだ!!」

「え、オレ?」


 思わずカリスが口に出してしまったことは誰にも責められないだろう。それと同等に周囲も少し驚いていたのだから。しかし淀みなく続けられていた言い争いはその趣をやや変えながらも決して止まらない。唯一の止められるタイミングはもう失われていた。あらゆることで張り合うようにして言い争いを続けてきた二人はほぼ反射のように相手が言ったことよりも自分の言い分が優れるように返答を重ねていく。例えそれが自分自身の事ではなく、自分が最も付き合いの長い仲間のことだったとしても同様だった。


「うぐ、」

「言い返せねぇのか!?そりゃそうだよな、お前の性格じゃ友達もそんなにいなそうだもんな!」


 今まで上取り続けていた上げ足がすぐには見つからなかったのか思わず言い淀んだヤクの腕を振りほどいて得意げに言い放つリスク。その言い方か内容か、それともその両方に我慢がならなかったのか、とにかく先程以上に視線を鋭くしたヤクは語気荒く返す。


「僕の美を理解できない人間なんてその目が節穴と言うかもう単なる穴なんであって、そんな美しくない人間こっちから願い下げだね!!その分分かってくれた人に対して僕は最大限の誠意を尽くしているよ、例えばウィンクみたいな!!」

「え、ちょっと急に何言ってるんですか」

「ウィンクは僕が今まで生きて中で一番付き合いやすいっていうかもう一緒にいて居心地が一番いいんだよ!僕のこともこの完璧さもまあ共感してくれるのかはまあ結構あいつ正直じゃないから教えてくれたことないんだけど!!でも多分僕のこと一番分かってくれているのはウィンクで、何やっててもあいつとなら上手くいくような気が僕はしているし、実際剣とってもなんか一緒にやってても一番息が合うし!!あんな最高の相棒がいて、どこが友達いなそうだって言えんのかなリスク!?因みに僕交友関係は狭く深く派だから友達って言える人間特別多くなくってもいいんだよね!!」

「…」


 ウィンクもまた急に名前を出されて、しかも内容が予想外だったために友達が多いに越したことはないという反論は彼の中で霧散してしまう。


「それとも何?リスクは浅く広く派?空虚な交友だね!」

「うるっせえよんなこと誰も言ってねぇよ!どう見たって他の皆も頼りになりすぎるくらいだろうが!!

スリク何て自分犠牲にして世界救ってんだ、生半可な覚悟じゃできねぇし、今も何も覚えて無くてもあんなに明るく前向きだ!!戦うのも強いのはお前も知ってんだろ!!ミカリもラルも、僕達のことを魔法で助けてくれる!!僕は全然魔法なんて使えないし、だからどんな苦労をしてるかなんて想像もつかねぇよ!?でもあの二人すっげぇ頭いいから滅茶苦茶努力してんのは僕だってわかる!!ミカリが使う魔法はいつだってタイミングもその効果も僕の予想する以上に的確だし、ラルの治癒魔法も優しい!知ってるか、治癒魔法って使用者の気質がもろに出るんだってよ!他にも何人かに治癒魔法を受けたことはあるけど、僕はラル以上に治癒が上手くて優しい術士を見たことはない!!」


 もう互いへの罵倒ではなく、聞いている側が照れてしまうような自分が信頼の置いている相手への全力の惚気のようなものを恥も外聞も全く頭にない二人はそのまま仲間の褒め合いを続けている。勿論それらは相変わらず大声で怒鳴り合うように言われているため、生徒らには一字一句違える事無く鮮明に耳に届くわけであり。


「やった、リスクに誉めてもらった!今の僕も!ミカリも凄いってさ!!」

「は、はい…!私も嬉しい、です!」


 ガッツポーズをして純粋に喜びを表すスリクと照れているのか少しだけ頬を紅潮させて表情を綻ばせるミカリ。すぐにスリクに促されて小さくハイタッチを交わす姿は非常に微笑ましい。


「全くもう、馬鹿なんだから…!よくもああ恥もなく!」


 この場において最も達観した風に見えるのはラルで、半分呆れでもう半分は照れ隠しといったところか。ただリスクを見るその瞳はそれ以外の何かが揺らめいているような気がしたが、それは誰にも気づかれず故に存在はしない。そして。


「そりゃあ年上とは思えない言動もたまにはあるけど、基本的に何でもそつなくこなせるしいっつも僕たちの事も考えてくれてる!!カリスこそ最も頼りになる人間だね!!!」

「だったらそれ以上に落ち着いているウィンクの方がいいにきまってる!!!」

「「  」」


 先程から最も二人に話題に上らされているカリスとウィンクは今まさに止めを刺されていた。カリスに至っては両手で顔を覆ってしゃがみ込んでしまっている。表情こそ窺えないが、手で隠し切れていない耳は赤髪に負けない位赤い。

 ウィンクも似たような状態で、穴があるなら入りたいという気持ちを全身で表現中の二人は誰かに、恐らくアシスに肩を優しく叩かれた。どうせ、表情は何とも言えない生ぬるいものなんだろう。余計に居た堪れなさが増すだけなのでやめてほしい。


「あん!?あのジジイ!?そりゃ強いしいう事ムカつく位正論だし!?そのくせなんか僕に対して頑固だよ!!でも、なんだかんだ言って信頼してっけど何か!!?」


 そんな彼まで最終的には飛び火し、彼もまたカリスら同様に崩れ落ちる。その気配に二人は内心ざまぁと思う。五十歩百歩というか完全に自分のことは棚上げにしての考えである。

 このようにスリクとミカリは最初に二人が争っていたのをおろおろしながら見ていたのが嘘のように、また自分らがほめられないか少し楽しみになってむしろ嬉々としてウィンクとリスクを見ているし、それを形容しがたい表情で見ているラル、崩れ落ちたカリスとウィンクにアシスというある意味壮絶な状況を見かねた他の教師が止めるまで二人は言い争いを続けていた。




 余談。

 自分達が今まで何を言っていたのか遅れて自覚した二人がその羞恥のあまり、林檎も真っ青な位顔を赤くして訓練場から逃亡し、立ち直ったアシスの指示によってこれ幸いとばかりに逃走するターゲットを捕獲する訓練に置き換えられ学園全体を使った鬼ごっこに発展するのはまた別の話である。





書いて頂いたお話第5弾です!

今回はリスクとヤクのお話を載せたいと思います。

こちらも前に書いて頂いたもので、中々投稿できずにいたものです。

このあまり本編では書いたことのないような堂々とした喧嘩のシーン……とっても面白かったです!

こういう人と人とのぶつかり合いも、ちゃんと書けるようになりたいですね!



【以下作者コメント】

これはしょっぱい

何か気を付けないとすぐにシリアスに走りそうになるから中途半端な出来になってしまった…

私がギャグっぽい地の文(作者視点が絡むような、いわゆるメタ視点)を一貫させるのが苦手だからってのもあると思う

きっと16歳トリオはそれなりに仲いし、ヤクとリスクなんて喧嘩するほど、の典型だと思うんだがいかがでしょうか

お粗末さまでした


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