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プロベイショナー 第一章『ワン リトル キス』  作者: 早生しあ
STORY 2
8/23

叔父さんとアドルフくんと【1】

 部屋で男の子のために枕とかタオルとか用意するあたしを、お母さんが呼んだ。

 叔父さんに話を聞いたらしい。

「メグが家族の中で唯一後成りのマスターになったのね」

 あたしの腕の傷にそっと触れて優しく包帯を巻いてくれた。

「あれだけ気に入っていたロングヘアも、こんなに短くなってしまって。綺麗に整えてあげるわね」

 あたしはお母さんに連れられてリビングに行く。椅子に座って、タオルをかけてもらった。

 腰まであった髪はばさばさで、長いもので肩くらい。短いと男の子みたいで。

「ごめんなさい」

「謝らなくていいわよ」

 お母さんはあたしの頭にキスをしてくれた。

「メグは痛い思いをして、それでもあの男の子を守ったの。私の誇りよ」

 でも、とお母さんは付け加える。

「私はメグが心配だから、あまり無理はしないでちょうだいね」

「お母さん……」

 あたしは急に怖くなって、痛くても我慢していた涙をぽろぽろと落とした。一歩間違えば、死んでたり、あいつみたいになってた。

「あの子が起きたら、一緒に家まで送ってあげましょうね」

「……家族がいなかったら? お祖母ちゃんとかお祖父ちゃんとか叔父さんとかいなかったら? そしたらどうしたらいい?」

 両親はもういない。他の家族がいるとも限らない。

「小さい子だから、施設かしらね。ヴァンパイアということもあるから、人間の施設には預けられないわね……」

 お母さんは少し困った口調になっている。

「だから、それだったら監禁施設に入れればいい。調教して、人間を襲わないように……」

「叔父さんはしゃべらないでほしいのよね! 叔父さん嫌い! お父さん……」

 静かにドアの前にもたれているお父さんにあたしはすがった。叔父さんは話にならない。

「メグ、返答は少し待ってくれんか? ベン、もう釈放か?」

「そうだけど。俺はしばらく警察にお世話になってた方がいいか?」

「そんなんはどうでもええ。とりあえずそのメモはなんや?」

 お父さんはあたしの方を見て、叔父さんを問い詰める。

 叔父さんは手に持つメモを開き、お父さんはあたしのそばに歩いてきた。

「メグ、よう頑張ったな。痛い思いも怖い思いもしたし、連れて帰ってきた子も、あれだけ怪我してよう生きとった。メグのおかげやな」

「お父さん」

 あたしはお父さんにぎゅっと抱きついた。お父さんはあたしの短くなった髪をそっと撫でてくれた。

「……警察でついでに子どものことを調べてきた。子どもの名前はアドルフ・ステイマー。母親の身分証から判明した。父親は身分証も免許証も複数持ってる。分かったのはどれにも載ってる同じ顔だけだ。ステイマー姓のだけは、持っていなかった。母親の証明書にある住所のアパートに、父親のステイマー姓身分証があったと今電話で聞いた」

「父親は犯罪者なのか」



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