ヴァンパイア少女の救った人間【7】
叔父さんはあたしから数歩離れる。
「ヴァンパイアはむやみに殺せば裁判にかけられる。昔、罪もない人間の男の子が、ヴァンパイアの嫌疑をかけられて人間達に虐殺された。それ以来、教会はヴァンパイアを処刑するためのライセンスを作った。だから俺はこの首を持って殺さざるを得ない状況だったと説明する必要があるんだ。有罪になりたくはないからな」
「え……」
あたしのせいで?
「被害者が増えるよりましだ」
叔父さんは笑い、これでその少年も安心だとあたしに告げた。
「携帯の電波が通じるとこに出たら、警察に連絡しよう。ヴァンパイア対策のある方に連絡して、人間への説明は、森に殺人鬼が出たとしてもらえばいい」
あたしに行くように促す。あたしは男の子のそばに駆け寄った。顔色は良くなってる気がする。首のハンカチから血が滴っているが、もう大丈夫だと思えた。
「この子はどうなるの? 家に帰れるかな。病院で怪我を治すの?」
「警察が何とかしてくれる。両親のいない子どもの後成りヴァンパイアだから、まず調教からだな。人間に害をなさないようにしてから、成人するまで監禁してくれるだろう。安全だ。成人したらマスターであるメグがその少年の身の振り方を選べばいい。下僕として死ぬまでこきつかっても、そのまま閉じ込めてても、面倒だったら殺しても」
「い、嫌なのよね! なにそれ! 助けた意味もないのよね!」
「でも……」
「あたしが連れて帰るのよね!」
淡々と言う叔父さんに腹が立つ。この子なんて見てないように、どうでもいいように。
あたしは男の子の腕をあたしの肩に回して立たせた。
「綺麗にするのよね……」
水遊びしてたところで血を洗ってあげたい。ハンカチも綺麗にしてまた巻かないと。
あたしは叔父さんの声を無視して水場に行く。男の子を寝かせて、ハンカチを洗った。
「治ってる」
傷が塞がっている。治ってると断言まではできないけど、でも大丈夫。
男の子の血まみれの体をハンカチで何度も拭いた。たくさんの傷があるけど、どれももう深くない。あたし自身も水に飛び込んで血を落とした。
「何て名前か教えてほしいのよね。あたしの下僕。家に帰れるのよね。安心して」
「う……」
男の子が小さく唸る。気づけばすっかりと夜の闇に包まれていた。
見えるものが変わらないから気づかないもので、あたしは大きくため息をつく。
叔父さんがあたしをじっと見ている。あたしは思い切り無視をして男の子を背負った。
「家が言えるまであたしの家で怪我を治すのよね。だってあたしの大切な下僕なのよね。下僕って弟って意味だって友達が言ってたのよね」
軽い。
血を飲んだから、力を得ることができたんだと納得する。
でも、もう飲まない。
「あ……」
背中で男の子がまた声を出した。柔らかくて心地いい。
好き。
話したことも顔をきちんと見たこともない相手にそう感じた。
男の子のお母さんの歌声を聴き、それが好きになった。
逃げてと言った男の子の優しさに惹かれた。そして、びっくりするくらい怖くて、それが終わった今、安心した。
「ただいま」
家に着き、あたしは玄関先で待つ両親に半ば詫びるように挨拶する。
かけられる声の前に、男の子を急いで部屋に連れて行き、あたしのベッドに寝かせた。