そして家族へ【3】
「俺、伯母さんに文句言おうと思って……。それで、やっぱりヤマグチの子どもになるのはやめようと思って……」
アディは静かに言った。
「俺のせいで迷惑かけっぱなし。俺、伯母さんと暮らした方がきっとマシだ」
「アディはあたしのお兄ちゃんなのよね! あたし、ずっとお兄ちゃんが欲しかったのよね! 家族なのよね!」
「メグは、家族といるから」
ずきんとした。
家族とかお兄ちゃんとか、今まで全く面識のなかった家で暮らすのがどれだけ辛いか考えてなかった。
わかったつもりだった。
「俺は、義姉さんと血が繋がってない。だが、飯は作ってもらうし、洗濯もしてもらうし、小遣いだってもらう。通販の受け取りも頼んでるし、ああ、支払いは当然。面倒臭いセールスの電話なんかは全部回してる。しかし、それが申し訳ないと思ったことはない」
叔父さん、殴りたい。
「アディは血の繋がりだけが家族だと思うか?」
血ならあたしのをあげたから繋がってるのよね。
アディは頷かない。
「俺としては血の繋がりって、簡単に家族になれる手抜き宣言だと思う。家族にとっての繋がりが血だと思ってるから、それを維持するのに気持ちを注がない。違うだろ。別の相手との繋がりは、本来必死で手を取ることじゃないのか?」
叔父さんの言葉にアディは耳を傾けていた。
「でも、俺は……」
「アディは家族だと無理に思わなくていい。でも俺も兄さんも、みんなアディと家族になりたいんだってことを覚えておいてほしい。メグと変わらないくらい、君を愛してる」
アディは叔父さんに抱き着いた。叔父さんもアディを抱き締める。
「アディ、家に帰ろう。伯母さんに文句言いたいなら、明日付き合ってやるから。あと、深夜の家出は重罪だから、おしりぺんぺんの刑な」
「ええーっ」
アディは文句を言いながらも叔父さんの手を握って家への道を歩き出した。
あたしに振り返る。
「メグも、探しにこさせてごめん」
手を差し出した。
その手をあたしは握る。
暖かくて、小さくて、柔らかかった。
プロベイショナー 第一章『ワン リトル キス』
完結しました。
メグとアディの出会いをお読みくださり、ありがとうございます。
続編
第二章もよろしければお付き合いいただけると幸いです。
ありがとうございました。
2014年11月14日




