そして家族へ【1】
家に着いて、扉を開けるとあたしは絶句した。
泥棒が入ったみたいにぐちゃぐちゃ。
「なんやねん……」
お父さんですら思わずぼやく。
「伯母さんがしたのか」
アディが呟いて、それでもあたしは気にしない。ここで怒ったらアディが苦しくなる。
「片付けたらいいのよね」
あたしはアディの手を引いて部屋に戻った。
「!」
部屋も荒れている。ベッドそばに置いていたぬいぐるみの綿が出てる。ぬいぐるみの中まで調べたみたい。
あたしは三つ編みの女の子の人形を取った。背中が裂かれて中身が散乱してる。
お母さんがあたしの誕生日にくれたあたしの欲しがってた人形。
「……っ」
あたしは、しゃがんで泣いてしまった。そんなつもりなかったのに。
黒い本ってなんなの。
探してる時にアディが怪我をしても手当てもせずに探し続けさせた。
他人の家を荒らして、壊してまで探す。
黒い本ってなんなの。
「黒い本は恐らく魔術書ね」
お母さんが部屋の前に立っていた。ゆっくり入って、あたしの人形をあたしから取り上げる。
「修繕者に頼んでおくわね。泣かないでメグ、ここの人形やぬいぐるみ達は全て元通りになるわよ」
「おばさん……」
アディが一歩進み出る。
「やっぱり俺……」
「アディ、お母さんって呼んでとお願いしたわよね? お母さんが嫌ならママでもマムでもおふくろでもおかんでもいいからって」
お母さんはアディを抱き締めた。そしてあたしも一緒に抱き寄せられる。
「あなた達は可愛い子ども。お母さんが元通りにするから、悲しまないで。今日はベンのところで夜更かしを許してあげるわ」
何か言いたそうなアディをあたしは引っ張る。お母さんがそういうんだから、何かあるはず。邪魔はしたくない。
叔父さんの部屋は、臭かった。
でも、被害がないのか綺麗だった。
「お、アディ、メグ! ピザ頼んだんだ。ジャガイモとジャガイモのピザ」
「叔父さん、窓開けるのよね! ピザ臭いのよね!」
あたしが窓に寄ると叔父さんは止める。
「やめろ、今日は開けるな。まだ帰ってないからな」
意味深に笑う叔父さんの顔が怖くて、あたしはアディを引っ張って叔父さんのベッドの上に座った。
「アディ、ピザは好き?」
「…………」
アディは頷く。
「俺、トイレ行って手を洗ってくる」
「場所はわかる?」
「ここにもあるけど……」
叔父さんは言うけど、叔父さんの部屋のトイレは数年前の工事の時に汚すぎて部屋に入れなくて暖房付き便座にもなってないから不便なのよね。
アディもきっとそれが分かって部屋を出ようとしてるんだと理解した。
大丈夫。そう言ってアディは部屋を出た。
そして1時間経っても戻ってこなかった。
「ピザが冷めるなぁ。お腹壊してるんじゃないか。心配だ」
叔父さんは呟く。
「見に行くのよね!」
あたしはアディに失礼だと思いながらもトイレに向かうことにした。




