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プロベイショナー 第一章『ワン リトル キス』  作者: 早生しあ
STORY 1
2/23

ヴァンパイア少女の救った人間【2】

 逃げて。その言葉が頭に回る。

 相手は大人のヴァンパイア。あたしは力のない子ども。

 見逃してくれるならともかく。

「この子はあたしが助けるのよね。お願い、あたしに欲しいのよね!」

 あたしはしがみつく。同じ種族だから、その子どもが言ってるんだから。

「殺せと依頼されている。子どももな」

「まだ生きてるのよね! その子はまだ生きてるのよね! 助かるかも知れないから! お願い! あたしと同じ年くらいなのよね!!」

 あたしは夢中で叫ぶ。腕にしがみついて止める。

 その腕でそいつは男の子の首の傷に手を入れた。

 嫌な音がする。男の子は何かの音をもらして、びくんと体を跳ねさせた。

「ひっ……」

 あたしの喉からも悲鳴が出る。血に染まったそいつの手の平は男の子の中で、あたしの全身に鳥肌が立った。

「ソーセージを食ったのか」

 静かに告げるその口に笑みを浮かべていた。

「おねが……もうやめ……っ」

 力が抜けたあたしはしがみつくこともできなくなって、男の子の横にへたり込む。まだ息があるらしい、生命力が強い男の子の手があたしの手に触れていた。

「はやく、にげて」

 うわごとのような言葉が聞こえる。本当に聞こえてるのかもう分からない。

 どうしていいかも。

「見ててもいいけど、子どもが見るには厳しいぞ。これが死んだら全員の首を持って帰る契約だ」

 あたしの膝も腕も血にまみれた。助からないのは分かってて、ここから逃げるのが最善だとも思う。家に帰って大人を呼んできたら……。

「しんじゃう……。この子がしんじゃう」

 きっとあの歌は、そこに横たわる女性の声。たった一人こんなに苦しんで、あたしと同じくらいの男の子が。

 あたしの脳裏に昨日の学校の様子が浮かぶ。みんな幸せそうに笑ってた。こんな痛いこともなく、きっとこの子も昨日はそうだったはず。



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