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プロベイショナー 第一章『ワン リトル キス』  作者: 早生しあ
STORY 2
13/23

叔父さんとアドルフくんと【6】

 しばらく経ち、アドルフくんが顔を出した。泣いたような顔をしている。

 お父さんに話を聞いたのかも。

「メグちゃん?」

 あたしの方を見て尋ねる。あたしは頷いた。

「おじさんに聞いた。俺を……助けてくれたって」

「俺が必死で看病した話は聞いた? 聞いた? 治った記念のくす玉も!」

 ぽーんと玉が弾け、『アドルフくん完治祝』なんて横断幕がアドルフくんの頭に被さる。

「な、なんだよ、これ。ずっとお世話になってたって、本当なんだな……」

 高い声で、ぶっきらぼうに喋る。でも、思った通りのリズムで、ずっと隣で聴いていた鼓動と同じだった。

 アドルフくんは目を泳がせて、やがてあたしに視点を定めた。

「なんてお礼を言えばいいのか……」

 でも心はこもってない。無理もないと思う。

 事実として目の当たりにしてはないけど、お父さんに伝えられたはず。両親はお亡くなりになったって。

「アドルフくん、家に電話したから、貴方の伯母様が迎えに来られるまでお茶でも飲んで」

 お母さんは立ったままのアドルフくんをソファに座らせる。

 あたしの隣が軽く沈んだ。

 アドルフくんに、言ったのかな。あたしの下僕ってこと。

 あたしはアドルフくんをじっと見る。

「メグちゃん、ありがとう」

 お礼を迫ってると思われたのか、アドルフくんはあたしにお礼を言った。

 お父さんの方を向く。お父さんはあたしに「言ってない」と口パクで伝えた。

 なんで言わないんだろう。

 ヴァンパイアって……。

 一瞬疑問に思った。でもすぐにあたしは思い直した。

 突然、ヴァンパイアにされたと聞かされたら、アドルフくんはどう思うだろう。両親が亡くなって、本とかでは悪者のことが多いヴァンパイアになって。

 もしあたしだったらおかしくなってしまうかも知れない。

「何が起こったか思い出せなくて。だからメグちゃんがどうやって助けてくれたかもわからなくて、ごめん」

「構わないのよね。どうやって助けたかなんて問題じゃないのよね。アドルフくんが起きたことが嬉しい問題なのよね」

 アドルフくんはお母さんの出したホットミルクに口をつける。

「呼んでくれた伯母さんのこと、俺はあんまり知らないんだ。父さんに姉がいるってことしか聞いたことなくて」

 知らない人。でも、きっと血が繋がる人の方がいい。あたしの弟になってほしい、なんて思っちゃいけない。




 夜中にアドルフくんの伯母さんが迎えに来る。黒い車で来て、アドルフくんを抱き締めた。

 アドルフくんはあたしに何度も手を振って、お父さんお母さんにお礼を言って帰っていった。お父さん達よりアドルフくんと話した回数の少なかった叔父さんは不満そうだった。



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