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魔法少女との鎖繋ぎⅠ

 初恋も叶う事無く、あげくの果に人間じゃないとまで言われた。

 もし、僕が韜晦癖から抜け出し、勇気と緊張に浸かりながら、身を小刻みに震わせながら、ミサキさんに喋りかけていたのなら、彼女は相手にしていてくれたのだろうか。

 ミサキさんは僕達のクラスの学級委員で、ある日あんな事を言っていたな、と記憶が浮ぶ。


「やっぱり、私達の年頃になると人生とは何だろう?とか疑問を覚えるわけよ。でも答えが見つからないから悶える。そんなちっぽけなもんなんだよね。だから私はね、「そういう事に疑問を覚える事が人生」だと思うのよ。とりあえず、「生きてみる」という事が大事」


 急に何を語り出すんだ、と教師や生徒達はざわめき、僅かに関心の声を上げる生徒達もいた。僕も、その中だったけれど、声を出す事に緊張し、表すには言い辛い表情だったと思う。


 †

 今もこうして地上に足を密着させ、様々な音だとかに包まれて消える事の無い命を費やしているのに、空を眺めてみれば形が曖昧で筋肉の様に凸凹と膨らんでいる様な淡い塊が悠々と浮いている事が何故か不思議に思った。

 僕とキリカちゃんは今、電車の中で優雅に揺られていた。車窓から覗ける光景は、ほとんどが高層ビルなどの楼の建物ばかりで、そこで著しく世界一高いと言われている電波塔が、頭部の部分を覗かしていた。その電波塔が、まるで自分みたいだな、と思わず苦笑する。


「その急に笑うの、やめた方がいい」キリカちゃんが気味悪そうに僕の顔を覗いて来る。相変わらず口調が冷たい。

「一日一回は確実に説教だね」

「嫌味かよ」

「そうだよ」


 電車の中にいる乗客は必ずと言っていい程、キリカちゃんに視線が向けられる。コスプレか何かと思ってしまう髪の色は、すぐに地毛だとわかるし、その辺りを包む様に宙を舞う粒子が、淡い光を発していて幻想的な空間を作り上げている。

 「相変わらず目立つね」僕がキリカちゃんに囁くと、「魔法少女だから」と鸚鵡返しに返って来た。「そ、そう」思わずたじろいてしまい、僕は再び車窓に首を曲げた。

 電車の速度は一定に保たれており、背景だけを捉え、固定する様に見つめようとすると、一瞬で高層ビルなどが投げ捨てられる様だった。足元の下が、削られて軋む様な鈍く轟々とした音を轟かし、耳を内側から直接叩く様な感覚が恒常する。その律動に合わせる様に肩が悠々と揺れた。揺れる度に隣からきらきらと幻想的な輝きを放つ無数の粒子が肌を撫で、こそばゆく感じる。

 粒子はダイヤモンドの様でもあり、車窓から差し込む光と一体化するかの様に消滅する。キリカちゃんの髪はその光をすべて吸い込むかの様に透き抜けていて、より銀色が神々しくなっていた。

 

「それで、何処に行くの」

「何処行こう」

「決めてないのかよ」


 適当に思い付く場所を脳に浮ばせる。キリカちゃんはどういった所が好きなのだろうか?性格から、好きそうな場所の案を広げて行く。ゲームセンターだとか、浮ぶ場所は大体喧騒としたものばかだりだ。「何処で降りようかも考えていないけれど」正直に吐くと、キリカちゃんは「はあ?」と呆れを表しながら「何で電車に乗ってんだよ私達」と嫌味交じりの事を吐いて来た。


「何処行こう」

「決めてないのかよ」


 †

 それから僕らは、なんとなくの駅で降りて、人ごみに混じり、何となくその軌道に委ねて周りを囲む建物を悠々と眺めていた。そんな中でもキリカちゃんの髪は著しく幻想的な粒子をバラ撒いており、光と共に周りにいる人達の視線までもを吸い込んでいる様だった。目が眩み、視力が落ちたらどうしてくれるんだ、と思ってしまう。


「とりあえずお昼にしようか」

「うん」


 キリカちゃんはそう頷くと、体が軽くなったかの様に、すぐにファミレスの元へと足を運んだ。子供か、と思わず苦笑した。あ、悪い癖だな、とすぐに頬を引き締める。キリカちゃんに見られていなくて安堵する。

 


 店内はお昼という事もあり、大体の席は埋まっていた。客層は様々で家族だったり、一人で来ている者ももちろんいた。僕とキリカちゃんも指定された席に腰を下ろす。案の定、店員もキリカちゃんの髪に目を奪われていた。適当にメニューを選ぶ。

 「キリカちゃんはこういう所とか来るの?」注がれた冷水を啜りながらキリカちゃんに訊ねてみると、「正直初めて」と目玉が忙しなく動いていた。「田舎者みたいだね」僕が苦笑すると、キリカちゃんは落ち着く為に冷水、では無くお茶を啜った。縁から唇を離し、「その癖止めろって」と指摘して来る。

 

「ねえ、あんたさ」

「僕も指摘するけれど、あんたかお前どっちかにしてくれないかな」

「あ、そう。それであんたさ」


 珍しくキリカちゃんからの話題だった。急な事にすこしたじろいてしまい、「な、なに?」とぎこちない。キリカちゃんはずずー、とお茶を啜り、唇を離して口を開く。「死にたいんだろ?」

 「え?」突然そんな事を訊ねられ、さらに困惑する。「死ねないけれどね」


「死なせてあげようか?」

 

この作品のジャンルは、ライトノベルなんでしょうかね。 自分的には人生とは何か、だとかがテーマです。命の脆さだとか儚さなどを描きたいです。 

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