孤独と戦う少年少女Ⅱ
なかなか話進まない様な気がしますね
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魔法少女という者がどんな存在なのかは言及しなかった。怪獣に蹂躙され、僕は確実に死んだと思うのだけれど、今こうして地球の空気に浸かって沈んでいるのだと思うと、感動は無く、寂しさだけが肌に沁みる。人間という生物は、与えられ失いながら進んで行くと言われ、それには関心したが、僕の場合はどうだ。
すべて失った。絶望で全てが屈し、貶められる気分だ。僕が思うに人はみな、独りになる事を拒んでいる。独りという事に恐怖している。
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「ねえキリカちゃん」朝を向かえ、太陽が姿を現す。布団から身を起こし、卓袱台が置いてある方へ首を向けると、キリカちゃんが朝のニュースを眺めながらお茶を啜っていた。紫の座布団に姿勢正しく正座して、淡く湯気が出ているお茶をずずー、と啜っている。紫の座布団を見て、笑点が脳に浮ぶ。
「何」キリカちゃんの冷え切った強弱の少ない声で返って来る。キリカちゃんの口調は、冷たい印象を伴いながら必要最低限の事だけで短くまとめ、そして少々の傲慢さを放ちながら喋る。と、いう印象だ。
未だに僕は信じてはいない。彼女が魔法少女という者なのか。ただ自称しているだけだと、言い聞かせている。僕は非現実の事が嫌いなのだ。
「キリカちゃんはさ、学校とか行かないの?」答えは解っていた。昨日の夜、椎名さんに聞いた事だ。けして意地悪や、からかいではない。ただ、僕は彼女の事を救いたい、と脳が判断したのだと思う。
「悪いか」キリカちゃんが声を発し、呼吸を整える事無く言葉を続ける。「不良生徒なんだよ」その声は何処か独りという現状に寂しさを覚えている彼女の印象が感じ取れた。窺えた。結局、人間は独りという事に恐怖を覚え、戦慄している。
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「違うよね」多分、僕が昨日椎名さんに聞いていなくても、これは嘘だと気付いていただろう。「昨日、椎名さんと話していたんだ」
布団を畳みながら声を吐く。「何勝手に話してんだよ」キリカちゃんはお茶を卓袱台に置き、威嚇を放ちながら僕の方へ顔を向けて来る。「煩わしいんだよ、お前」あんたかお前、どっちかにしてくれよ、と脳裏で呟く。「僕はマコトだよ」そして名乗る。
「君は独りになった事を不幸だと思っているんじゃないかな」椎名さんは空になったお茶の器をポットの下に置き、お湯を足す。「それは、どういう事ですか?」唐突に訊ねられた言葉の理解が出来ず、質問を質問で返してしまう。椎名さんはお茶っ葉を取替え、再び啜る。「君はさ、友達もすべて潰されて、家族も死んだという方が確率があるこの現実を、どう思ってる?」椎名さんが訊ねて来た。そんなの、「嫌に決まってますよ」
人間は独りになる事を恐れている。僕は覚悟する間も無く孤独となり、蹂躙された。そんな現実を僕はまだ信じてはいない。夢見心地なのだから。いつかは目が覚め、いつも通りの日常が続くと信じている。この死なない身体も嘘だと言い聞かせている。
「ねぇマコト君。君は人間が死んだ後、どうなるか解るかい?」
「いえ、死んだ事無いんでわかりません」本当は死んでいる筈なのに、と率直に愚痴を抱く。不自然な位に正常を保っている内蔵や千切れた筈の足は何処を見渡しても傷は無く、疼く気配なんて毛頭も感じなかった。
「まあね。でも、僕が思うに命が止まればそこは無だと思うよ」と椎名さんは吐く。中学生が考えそうな事を言われ、僕が好意を抱いていた異性の顔が脳裏を過ぎる。同時に無って何だろう、と煩悶する。椎名さんは「ほら、眠りに付くと目覚めれば朝じゃないか」その睡眠中が永遠と続くのかな、と僕は思うんだ。と、解説され、益々苦悩する。それと同時に脳に浮んだのは、「じゃあ、人は死んでも夢は見るんでしょうか」なんて在り得ない事を訊ねる。
椎名さんは愉快な笑いを見せながら「夢は寝ている間でも脳が僅かに起動しているから見るんだよ」と否定して来た。夢くらい見させてくれよ、と思う。でも、幽霊などが存在するのであれば人は死んだ後も生きているんじゃないか、と思ったりもした。それは中学生の時だった。
死ぬ事へ恐怖を感じた僕は、母親に「幽霊とか存在するのなら、人って死んだ後も生きるのかな?」と訊ねた。すると母は微笑み、「さあねぇ。でも、そうだったらいいよね」と返してくれた。確かにそれなら希望も望めた。だけれど、僕はこの現実というのは齟齬の連鎖だと肝に銘じて生きている。だから、自分で質問しときながら、すぐに矛盾が浮んだ。
「でも、それだと生きるという意味が無いよね」
あくまで現実的な答えだが、質問の舞台は現実ではない。詰まるところ、答えは誰も知らないという事だ。それと、僕はどれだけネガティブなんだ、と倒壊の蹂躙。
母親は今、僕を見てくれているのだろうか。答えを教えてくれよ。これだから僕は非現実な事が嫌いなんだ。
はい。僕だけが理解していて、読んでる人にはわかるかな?とか心配になります。 伏線回収とかしたいけど、自分自身が忘れちゃうような人なんで・・・