血液を操る少女Ⅰ
連載物ですが、恋ントスが完結したら始めたいと思うのでとりあいず一話
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気が付けば、僕の人生は韜晦に隷属で倒壊の蹂躙だった。
気が付けば、失恋も僕の韜晦癖が原因で倒壊した。
気が付けば、恋も何もせずに終わって行った。
人陰に潜み、物陰に隠れてばかりだった。遠く離れたままで眺めるだけで満足していた。
僕が好意を抱く女性は、僕の友人と付き合った。ほら、倒壊だ。蹂躙だ。歪だ。努力もせず、勇気が無く、逃げ込んだ。僕はいつもそうだった。人生というのは、そういうものだ。
夏休みまじかの真夏日。唸る様な熱気に身を委ね、支配された空間で空を眺めた。澄み渡った青空だった。雲一つない、清澄で無限な大空だった。そう信じたかった。
熱気を残しながら、僕は夜を迎える。教室の窓から覗ける空に聳え立っていた楼の物体は、怪獣だった。
ゴジラの様な怪獣の下半身が露となっていた。空に隠れ、腕も顔も把握出来ない程の巨体だった。こんなの、特撮ヒーローでも出てこないよ、と恐怖の戦慄に身が屈し、僕は尻餅を付いていた。
その巨大な足元が動きを見せる。右足が浮き上がり、窓から消える。踏み潰される。目が見開き、徐々に軋む音を轟かす天井に目をやる。
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教室内は静寂に包まれ、僕はというと眠気と瞼の上で格闘を繰り広げていた。手の甲を抓り、電流が走る感覚に慣れたのか、眠気は容赦なく脳を浸食していった。駆逐する事が困難となり、眠気に敗北した僕は机に身体を預けた。英語の教師の声が強弱の無い律動で耳に入る。何を言っているかは理解出来なかったが、睡眠に益々身が沈んでいった。
痴がましく、緩慢な僕は咆哮の様な巨大な轟音で目が覚める。咄嗟に起き上がり、ざわめく室内を見渡し、全員が視線を送る方へ首を曲げる。そして僕は驚愕する。
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視界に映るモノはすべてが歪んでおり、光は無かった。何処も彼処も消灯されており、校内は元々の形を留めていなかった。瓦礫に下敷きとなっている僕は生きてるのか?左腕に違和感を感じ、目をやる。不自然に捻り曲がった手首からは肉が食み出たまま固まり、一部紫色に青褪めていた。指もすべてが手の甲の方に向いており、歪に粉砕した骨が覗けていた。
辺りは薄暗く、先程まで英語を教えていた教師の首がボールの様に転がっている光景が目に入り、嗚咽した。痛い。痛い。痛い。なのに死んでいない。左足の感覚が感じ取れず、動かそうとすると瓦礫が練り込み切断している事に気付く。教室を支えていた柱がズレを生じ、僕の左脇腹に突き刺さったまま安定している。
なんで死んでいない?
内臓が跳び出て、体液が滲み出ている。肉が捻られ、血管がミミズの様に肌から露になっている。そして疑問が孕む。
なぜ死なない?
おかしい。僕は率直な感想を覚える。何故死なないんだ。僕だけ死んでいない。いや、本当は死んでいる筈だ。内臓は削り取られ、心臓も粉砕している感覚が脳に焼かれる。それなのに。
死んでいない?
とっくに僕は倒壊した筈だ。僕は脆い。儚い。なのに、死んでいない。朦朧とする意識の中で生きている実感が湧かないのに、生きている。もしかすると死んでいるのかもしれない。
「お前、なんで生きてんの?」
声が聞こえた。奇麗で透き通った透明感のある少女の声だ。闇の中で淡い光が感じ取れた。霞む視界で漂う光の正体は、輝きを放つ無数の粒子だった。肌に触れたとたんに染み込む様に姿を消し、瓦礫の隙間などにも潜り込んで行き、可憐だ。と素直な感想を抱く。その瞬間、視界に銀色の軌跡が映り込だ。
銀色の軌跡を目で追って行くと蒼白い光に包まれた少女が視界に映り込む。清澄な光の粒子に彩られたその少女の格好がすこし夢を見過ぎていた。
メイド服に似たふんわりとした印象の服は、全体にフリルに支配されていた。桃色のファンシーなスカートは短く、太股も隠しきれてなく、レースの様なフリルがここにも支配していた。腰周りに巨大なリボンが彩り、風に靡く。薄い桃色のローファーが地に足を付け、白とピンクのボーダー柄のニーソックスが太股の中間まで伸びて肌を隠している。月光の様な蒼白い幻想的な光の粒子をばら撒く頭部にはフリルと共に大きいリボンが付いたカチューシャが雰囲気を拡大させている。白く細い手首にもフリルに包まれていた。ロリータ?違う。一言では説明出来ない少女趣味な服を来た少女が僕を見下す様に眺めていた。
「あんた良く生きてるね」
少女は僕の顔を覗きながら淡々と呟いていた。僕はというと声が出ず、ただ耳を向けるのみ。僕はどうなるんだろう。そんな不安ばかり積もって話もまともに入っては来ない。「まぁいいわ」少女が僕を眺めながら、右手に持っていた拳銃の銃口を向ける。血の気が引き、朦朧とした意識が一瞬覚醒した。
「お前、助けてあげる」
はい。魔法少女の姿が想像しぬくかったりしたら、書き直すのでまた感想お願いします。
この作品は今までの僕の作品とは世界環がちがく、パラレルワールドという事になります。クロスオーバーも無いので一つの作品として読めるかと・・・あと世界が違うので、こっちの世界が舞台の作品ではHNが変わりますので・・・
鯨雲としての作品も見てくれれば嬉しいです。