表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/51

魔法陣の布陣

 西侵に動き始めた東方のバンガロール王国に、進路上の小国はことごとく恭順を示した。敵無き道を進む東方軍は瞬く間に接近してきたばかりでなく、恭順してきた国々の兵力を併呑することで、100年前と同様その兵力を増大し続けている。

 東方軍の先鋒は異空間から解放された100年前の部隊で、すでに隣国の首都を取り囲むように包囲していた。

 この国に攻めて来るのももはや時間の問題であり、国王は全軍に出撃準備の命令を下している。王の命令に応じ、ブルゴーニュ公国も全軍での出撃準備をしていた。


 マウエス王は先鋒のはるか後方を進軍していた。100年前の王ハルラールはマウエスと共にそれぞれの籠に乗って進んでいるが、あくまでもマウエスの好意による客将的立場である。進軍を開始した当初、その先鋒の中心はマウエス直下の兵だったが、ここに来てその先鋒を担っているのはハルラールの兵達である。

 ハルラールの兵達の動きは逐一戦場から、ハルラールの下にも伝えられていた。そして、今、ハルラールは自軍が配置された地図を見ながら、首をひねっている。

 やがて、ハルラールはかごをマウエスと並べるよう担ぎ手に命令した。

 ハルラールを乗せた籠が警護の者たちの輪を破って、マウエスの下を目指して動き始めた。マウエスはその報告を聞くと、自分の警護の一辺を解いた。

 警護の者がいなくなった隙間から、ハルラールがやって来て、横に並んぶ。マウエスはそのハルラールにちらりと目をやっただけで、すぐに正面を向いてハルラールを無視した。


 「マウエス王。

 聞きたい事がある」


 「ほぅ。どのような?」


 マウエスは一瞬ハルラールに視線を向けたが、すぐに正面に視線を戻したまま、そう言った。


 「我が軍の配置だ」


 「それが何か?」


 「何故、5軍に分けた?」


 「何故?

 包囲のためですよ」


 「5軍でなくともよいだろう。

 しかも、この配置は」


 ハルラールがそこまで言った時、マウエスが一瞬にやりとした。しかし、すぐに真面目な顔をして、ハルラールを見た。


 「何か?」


 「これでは魔法陣」


 「なんと!」


 マウエスは驚いたような声を出し、ハルラールが手にしている地図に手を伸ばした。


 「これはいけませぬな。敵に踊らされたのやもしれませぬな。

 ハルラール王、彼らは今の配置にも、あなたの命令で付いております」


 「しかし、配置する地名を助言され、彼らに命じたに過ぎない。

 場所を決めたのはマウエス王、あなたの部下ではないか」


 「いやいや。そのとおり。私が申し上げたかったのは彼らはあなたの命にしか従わないという事ですよ。

 今から、彼らに移動を命じに向かってもらえませんでしょうか。

 これは敵のわなにはめられたのやも知れず、一刻を争うことになります。

 私の部下たちに警護させますので、よろしくお願いします」


 マウエス王の要請にハルラールは頷いてみせた。

 立ちさるハルラールの後姿を見つめながら、マウエス王の顔がほころんだ。


 「あなたにも役だってもらいますよ。

 最高にね」


 マウエス王のその言葉はハルラールには聞こえていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ