表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/51

戦乱回避と東方軍再侵攻

 大公の屋敷の中は騒然としていた。輝く金属の甲冑に身を包んだ騎士たち。それを取り巻く槍を構えた兵たち。みな、今にでも打って出る気概に満ちていた。

 そして、その屋敷の門は開かれていて、まだまだ駆けつけてくるであろう貴族たちをいくらでも迎え入れられるようになっていた。


 テオドールを乗せた馬車が門をくぐると、その前に騎士たちが立ち塞がった。

 進路をふさがれ馬車が止まると、馬車の窓からテオドールが顔をのぞかせた。


 「私はドヌーヴ公である。大公に話がある」


 「これはドヌーヴ公。失礼いたしました。

 どうぞ」


 進路を塞いでいた騎士たちは道を開けた。馬車は再び進み始め、奥を目指す。ドヌーヴ公が到着した事は大公に伝えられた。

 テオドールが場所化に庶民風の男一人を引きつれ、大公の下を目指す。大公の屋敷の者たちが、二人をいぶかしげな表情で見つめながら、何かをささやき合っている。


 「ドヌーブ公が連れているあの小汚い男は何?」

 「これから戦争だと言うのに、なぜあのような服装なの?」


 二人に聞かせたくないのか、聞かせたいのか分からないが、二人にその声は届いていた。


 「大丈夫でしょうか?」


 庶民風の男が心配そうにテオドールに言った。その言葉にちらりと目を向けただけで、黙ってテオドールは進んでいく。

 テオドールの前を行く、大公のメイドが重厚そうな木製のドアの前に立って、取っ手に手をかけた。テオドールたちに軽くお辞儀をした後、そのドアを開く。

 その奥には甲冑姿の大公が控えていた。

 今にでも戦争。そんな状況下、戦争とは程遠い服装のテオドールに一瞬むっとした表情をしたが、怒る事はなく、手招きをした。


 「ドヌーヴ公。

 その男はなんじゃ」


 テオドールが近づき始めると、庶民風の男を指して言った。


 「はい。私が使っております情報屋です」


 「お目にかかれて光栄です」


 情報屋がそう言って、頭を下げた。大公はここに来た理由が、その庶民風の男が持つ情報と関係がある。そう理解した。


 「で?」


 「はい。この者は東方の国々出身の者ともつながりがあるのですが、東方の大国バンガロールが再び軍を進めて来ていると言うのです」


 「バンガロールが?」


 「はい」


 「確かか?」


 「今、手の者を放っておりますが、戻って来るまでには時間がかかりましょう。

 それまでに国内が割れては敵の侵攻を防ぐ事ができなくなります」


 「それだ!」


 大公はそう言いながら、大きくうなずいた。そして、その部屋に紙とペンを持って来させ、何かを書き始めた。


 一体何を書いているのか?

 何のためにそんな事を突然し始めたのか?

 テオドールは黙っていることができなかった。


 「大公、どうされたのですか?」


 「カルサティ公の下に私の使者として、今書いている手紙を届けて欲しい」


 「そこには何と?」


 「今、貴公が言われた事をそのまま書いている。

 私はこの衝突を避けたい。

 貴公の協力でかの家に送り込んだ手の者によると、カルサティ公自身は対決を避けたがっているらしいが、周りの雰囲気はそれをさせそうにないとの事だ。

 この話はカルサティ公にこの対決を止めさせる大義となろう。

 貴公は自分の考えをもって、カルサティ公を説得してくれればよい」


 そう言うと、書き終えた手紙に封印をして、テオドールに手渡した。


 「しかし、まだこの話が真実かどうかは分かってはおりませんが」


 「かまわない。

 頼んだぞ」


 「承知しました」


 テオドールはそう言うと、大公の正式な使者としてフランツの下に向かって行った。


 フランツは大公が言ったとおり、この対決を避けたがっていたため、すぐにこの話を受け入れ、二つの勢力は一旦解消された。

 とは言え、一度別れた勢力が分かりあえるようになるはずもなく、訪れたのは見かけ上の造られた一時の平穏だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ