神の力を宿し、セリア様?
突如現れた敵の大軍。
戦いは敵の敗走と言う形で終息はしたものの、この戦いで被った被害は甚大だった。
突如として瓦礫と化した謎の街。
戦に巻き込まれ、炎に包まれ焼け落ちた街々。
そしても何よりも、多くの民の命が踏みにじられた。
絶望の中、命からがら生き延びた人々は巨大な敵を撥ね返した騎士団の活躍に喝采を送った。
だが、騎士たちの一部は自分たちの力だけで勝ったのではない事を知っていた。
そんな一部の騎士たちの口から、噂が広がり始めた。
この危機を救ったのは神の力を宿したブルゴーニュ大公ブルレック家の孫娘セリアだと。
セリアが神の力を宿していると言う噂は反大公派の貴族の一部を大公派に鞍替えさせるほどの影響力があった。
しかし、ブルゴーニュ大公ブルレック家当主ジェレミーこそ、この噂が正しいもので無い事を知っていた。
大公の屋敷は他を寄せ付けぬほど広大であり、外周には防衛のための塔が配置され、その敷地の中には多くの建物があった。
大公は一番大きな建物の中にある一室の中を、イラついた表情で歩きまわっていた。
そんな大公を一人の男が立って、眺めている。
大公は今回の事件の根源は16年前に抹殺したはずのアスラの力を宿した赤子にあると断定していた。そして、その抹殺したはずの赤子が生き残っていた理由に考えを巡らせていた。
大公の頭の中に色々な可能性が浮かんだが、得られた結論はただ一つだった。
「ジェラールめ。あやつにはめられたわ」
ジェラール。アスラの力を宿した赤子を見出し、その力を封印した司教。
そのジェラール司教にはめられた。
そう結論づけた大公が男の前まで進んできた。
「あの戦いの日、あの力を使った本物の少女がどこに消えたのかを探るんだ。
しかし、我々の動きを悟られてはいかん。
折角、我々に反抗的だった勢力の一部までもが、我々をあがめ始めておるのだからな」
「分かっております」
「それと、ジェラール司教のあの当時の行動をもう一度洗いなおせ。
そこから、何か分かるかも知れん」
「分かりました。
確か息子がいたはずです。名をレオンとか言ったと思います。
レオンが何かを知っているかもしれません」
「頼んだぞ」
男は大公に一礼し、部屋を出て行った。




