死んでない
ドンッ
「いてぇ・・・」
俺、佐藤ヒロヤはたった今車に轢かれた。
歩道橋を渡るのを怠ったのが原因だ、こんな死に方は正直納得がいかないが、俺が悪いんだ、14年間のうのうと生きてきたツケが来たんだ。仕方ない・・・・
俺は、そう言い聞かせて、目を閉じた。
「・・・・ヤ」
「ヒロヤ!!!!」
女の甲高い声が俺の耳に刺さる、これを金切り声と言うのか。
てかこの女、俺の名前呼んでるのか?
まさか俺にこの世に残して行く女がいたなんてな、罪な男だ・・・
「ねえ!!起きなさいよ!!起きてってば・・・・・・死ね」
ドッ
「グヲッ」
蹴りやがった・・・しかもわき腹を・・・
「い、痛いじゃないか!!僕はボロボロなんだぞ?もしかしてお前は瀕死の人間を蹴り飛ばして快感を感じるような奴なのか?」
「はぁ?何言ってんの?あんたのどぉーこがボロボロなのよ!!」
目の前の少女ーーー同い年くらいだろうか?ーーーは呆れたように言った。
って、え?
「あれ?俺の体・・・マジで?うおおおおおお!!!!!生きてる!!!!生きてる!!生きてるんだ俺!!」
俺は笑いながら体中をペタペタ触った。
はたから見ればなんと間抜けな描写だろう。
「・・・ねえ、何してんのかわかんないんだけど・・・・・早く行きましょ、こっちも急いでるんだけど」
彼女の目から光がなくなっていく 。
「いや・・・だって俺の体.・・・・・それに・・・ここ、どこだよ」
俺は周りを見渡した。
気持ちが落ち着いたおかげで周りの異変に気がつけた。
ここは、事故現場でも病院の一室でもない、ここは・・・・
どこだ?
「まだ言ってんの?早くしなよ、置いてくよ」
彼女は行ってしまった。
やべ、もう関係に亀裂が入っちゃったかな?何とかしなければ。
「ま、待ってよ!一体どこに行くんだよ!?」
「もう忘れたの?『オブリの滝』よ」