8/9
帰還
レオンと目が合った瞬間、ミオは突然帰還した。
“あり得ないもの”は、消されたのではない。
世界がそれを否定しなくなっただけ。
目を開けた瞬間、ミオは自分の世界の自分の部屋にいた。
「私を帰したのは……誰?」
ミオを帰したのはレオンではない。
あの瞬間、ミオと目が合ったレオンは確かに生きていた。
残されたレオンは、理由も分からず泣いた。
世界が揺らいだと王子が感じた直後に泣き出したレオンを、王子が目を丸くしながら見ている。
そこにミオの姿はない。
いや、姿だけでなく、ミオがいたと言う事実もなくなっていた。
「レオン?何があった?」
「……何かを、失った気がします。」
その涙の意味を知る者は、もういない。
禁書庫の奥で、一冊の本だけが白紙になっていた。
そこに書かれていたはずの内容は、誰にも思い出せなかった。




