贖罪
それ選んだのは、五人の中で一番臆病な男だった。
常に笑い、空気を読み、誰にも逆らわない――
最初に“どうせ失敗するに決まってるだろ」”と言った男。
現時点で彼だけが、この結末をわかっていただろう。
レオンは生きている限り、ミオ惹かれる。
そしてミオがいる限り、レオンはミオを愛し、消えてしまう。
レオンはきっと、命を絶ってミオを元の世界に帰す選択をするだろう。
二人が並んで生きる未来は、『あり得ない』。
彼は一人、禁書庫の最奥に入った。
かつて封印された、因果改変術式。
因果を改変……原因と結果の関係自体を取り替えてしまう事で『あり得ないモノ』を『あり得るモノ』に改変出来る術式だ。
この術式を使えば、レオンを失う事なくミオは元の世界に戻れる。
いや、召喚自体がなかった事となる。
術式を見つけたのは彼だけではない。
しかし、その術式の条件はあまりにも恐ろしいものだった。
条件は一つ。
「原因の起点となった者が、
世界から“選択した事実ごと”消える」
それは死ではない。
誰の記憶にも、記録にも残らない消滅。
召喚魔法は五人の力を合わせてようやく起動出来た魔法。
即ち、五人誰もが原因の起点となった者となれるのだ。
召喚魔法を「面白半分」で言い出したのは彼だった。
ならば――
“あり得ないもの”を生んだ因果は、自分が消えれば閉じる。
発動の瞬間、彼は微笑んだ。
「……怒られるの、怖かったんだよな。 でもさ、あの人が笑うなら、安いもんだ。」
世界が、静かに修正される。
そして……五人は、四人になった。
だが誰も、違和感を覚えない。
ただ、理由の分からない胸の痛みだけが残って。




