惹かれる心
レオンとミオの最初の数日は、必要最低限だった。
食事。
衣服。
簡単な会話。
1つ1つの事で、ミオはよく謝った。
「ごめんなさい。」
理由は分からないが、
彼女はいつも怯えているように見える。
ある日、レオンはふと問いかけてみた。
「……君は、何に怯えている」
ミオは少し考える。
「魔法が、怖いんです。魔法って人を簡単に消せるんでしょう?」
その瞬間、レオンの動きが止まった。
魔法はレオンにとって、空気のように当たり前のモノ。
それを怖いとは思いもよらなかった。
魔法を知らない彼女にとって、魔法は脅威。
恐ろしいものでしかない。
「少し、魔法を勉強してみるか?」
魔法を知らないミオだが、その身体からは魔力を感じる。
「私が……魔法を?」
「優しい魔法を教えてあげよう。」
魔法を覚えるにつれ、ミオは少しずつ変わった。
廊下の花に足を止め、窓から見える空に、目を細める。
その花をレオンが摘み、ミオの髪を飾る。
そして、常に共にいるレオンの前だけでは、
妙に表情が柔らかくなっていった。
それから、二人の間には柔らかな空気が流れるようになった。
書庫で並んで本を読む。
意味のない散歩をする。
ミオは、ある日、真剣な顔で言った。
「レオン様は、いつも淡々として、感情がない人だって……みんな言います。」
「……否定はしない。」
「でも私には、レオン様が一番感情のある人なんです。」
ミオに柔らかな微笑みを浮かべるレオンを思い浮かべて頬を染めるミオは愛らしい。。
それが、決定的だった。
頬を染めるミオを見て、レオンは気づいてしまった。
自分が彼女を
「帰すべき存在」ではなく
「失いたくない存在」として見ていることに。
あり得ない。
それは、この世界で最もあり得ない感情だった。
ある夕暮れ、ミオはぽつりと言った。
「私、帰れなくてもいいって思ってしまいます。あなたと一緒にいられるのなら……。」
レオンは、即答できなかった。
沈黙のあと、
彼はただ一言だけ返した。
「……それは、私の責任だ。」
ミオは、初めて泣きながら笑った。
こうして二人は、誰にも気づかれないまま
戻れない場所に立っていた。
それが恋だと
名前をつける前に。




