異世界からの召喚
「どうせ失敗するに決まってるだろ」
ある満月の夜、古い書庫の奥で男五人はエールを飲み、笑いながら古びた魔法陣を囲んでいた。
『あり得ないモノ』を召喚する魔法と書かれた本の1ページ。
研究職という名の雑用係、全員が暇と好奇心を持て余していたのだ。
エール片手に本の魔法陣に魔力を流す。
詠唱が終わった瞬間、空気が震え、眩い光が弾けた。
――そこに、少女がいた。
床に座り込み、長い髪を揺らしながら呆然とこちらを見る少女。
その瞳は不安を隠さない。
「………嘘だろ?」
エールが床に落ちると同時に、そう呟いたのは誰だろう。
予想外な出来事に、誰も動く事は出来ない中、重たい足音と共に扉が開いた。
「……お前たち、何をした」
現れたのは彼らの上司、冷静沈着で誰もが認める美形魔導官・レオンだ。
不自然な魔力を感知したレオン。
慌てて現場までやってきた彼が見たのは、濡れた床と呆然と立ち尽くす5人の部下……そして見知らぬ少女。
呆然とする部下達に一喝し、事情を聞いた彼は、怒りで額を押さえた。
「異世界召喚は国家禁術だ。処罰は免れん。」
男たちが震え上がる中、少女は小さく呟いた。
「私……どうなる、の?」
その声に、レオンの表情が一瞬だけ揺らいだ。
彼は少女の前に膝をつき、視線を合わせた。
「君の名前は?」
「ミオ……です。」
その不安を隠さない瞳に罪悪感が溢れる。
「君は保護対象だ。私の指示に従ってもらう。」
レオンの声は低く、感情がない。
ミオはその言葉の意味を半分も理解できず、ただ頷いた。




