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第1話 また見てるの?



  第2王子ユリウス殿下。彼はいつも、私の目線の先にいる。



中庭のベンチで本を読んでいる横顔を、柱の影からそっと盗み見る。

きりっとした眉、柔らかく伏せられた睫毛。ページをめくる指先まで、全部が好き。



 そう、わたしは、彼に恋をしている。





――「リリアーナ、またあの王子のこと見てるの?」


 背後から聞こえた声に、びくっと肩が跳ねた。


「み、見てないわよ。」

「今の反応でそれは無理があると思うけど?」


くすくす笑う少女に、私はむっと口を尖らせながら視線を逸らす。


「見ててもいいじゃない。好きなんだから。」

「あ、開き直った。」


 好き。

 でも、近づきすぎる勇気はなくて。

 だから今日も、こうして遠くから見ているだけ。


 ……の、はずだったのに。





――「今度はストーカー?」


背後から聞こえた声に、心臓が跳ねる。


「移動教室なのよ!行き先が同じだから、つけてるわけじゃないわ。」

「のわりには?視線の先は王子なんじゃないのー?」

「大声で言わないでってば!!」


他の生徒からの視線が気になり、私は小声で言う。


「あなたこそいつもいつも突然現れて...。ストーカーなんじゃないの?」


私は彼女にじりじりと詰め寄っていると、突然、肩に温もりを感じた。



「あの、これ、君のハンカチだよね?昨日落としてなかった?」


毎日聞いている、大好きな声。ユリウス殿下だ。


そう思い振り返ると、驚くほど近くに、彼の顔があった。



近すぎる......!!!


もしかして、今の会話、聞かれた?!



「あ、えっと、あの、殿下!彼女と喧嘩なんてしてないですし、ましてやストーカーなんて!絶対!してないですから!!!」


焦りと困惑で頭が真っ白になり、わけの分からない言い訳をたらたらと連ねる。


「あの、彼女って...?今リリアーナ嬢は1人だよね...?」


ユリウス殿下の驚いた顔に、私の思考は停止する。


私の横には、にやにやと佇む彼女がいる。なのに、私は1人.......?


訳がわからずフリーズしていると、突然、ユリウス殿下が私の両手を取った。


そう、私の両手が、殿下の手に、包まれているのだ。



私の手が、殿下の手に.......???



どういうこと?!バクバクと跳ねる心臓がうるさい。

どうして殿下が私の手を...!!


パンクしきった使えない頭で、精一杯考える。



「リリアーナ嬢。これ、落としてたハンカチだよ。」



ユリウス殿下の声にハッとして、手元に目線を落とすと、私の手にハンカチが握られていた。



...ハンカチ。そういえば、殿下が最初に言ってたわね。



次の教室に向かう彼の背中を見送りながら、私はため息をついた。






◇◇◇


「リリアーナってほんとにおもしろーい!」


彼女は私の横で、またけらけらと笑う。

今日は今までの学園生活の中で、1番疲れた。


やっと授業も終わって、部屋に戻ってゆっくりしたいのに...。


この子はずっと着いてくる。


そして私は、気づいてしまった。




彼女の足が、地面に着いていないことに。


ユリウス殿下に見えなかったのも。

私が彼女と話す度に周りから不審な目で見られたのも。

全て辻褄が合う。



「...あなたって幽霊なの?」


私が呟くように尋ねると、彼女は目を見開いた。


「今更?!?!」



◇◇◇


「ほんとに幽霊なの...?」


私は彼女に手を伸ばすと、私の手はすっと彼女の体をすり抜けた。


「ね?だから、あなたの恋、ぜーんぶ見てたわよ?」


彼女はそういうと、にやっと笑った。



私の平穏な学園生活は、たぶん、この瞬間に終わった。









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