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已矣哉 睦月詩帖  作者: alIsa


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6/9

至高の一服 / 最後の一服


ストック分のタバコを吸ったら禁煙しようと考えていた

最後の一本は実家で迎えた正月の真夜中に吸うことになった


 まさか最後の一服が、こうもあっさり済まされようとは

 最後にしてはなんともあっけなくて寂しい

 得てして物事の終わりは、こんなものなのかもしれない

 最後を飾る至高の一服を、あれこれ考えてたんだけどなぁ


 例えば好物を、寿司やピザを山ほど食った後、余韻の中で一服

 満腹感と金額が大きければ大きいほど、納得感も強まるはずだ


 例えば暖房の効いた部屋で酒を馬鹿ほど飲んだ後、寒いベランダで一服

 味はマズイに違いないが、情景のかっこよさで釣りがくるほどだ


 一日外で用事を済ませてクタクタになった後、風呂上がりに一服

 多分これが一番うまい、一日我慢した後が一番うまいんだから


 朝起きて体幹トレーニングをした後、コーヒーと一緒に一服

 朝日とコーヒーの湯気に混ざった煙は、どこか儀式めいてるんだ


 実際の最後の一服は、そんな劇的(ドラマチック)なもんじゃなかった

 夜、俺はコソコソとベランダに出て、タバコに火をつけた

 風が強く、遠くでゴーゴー鳴っていて不穏だった、寒かった

 手前の道路は人通りが全くなく、不気味なほど静かだった

 新年のめでたさなんて、俺自身にも周囲にも欠片もなかった

 大きな川を挟んだ向こうに、車のヘッドライトが小さく見えた

 周囲の家は灯を消して、この家だけが煌々と明かりをつけていた

 空は雲で覆われて白濁りしていた、田舎のくせに半端に明るかった

 タバコの味は全然しなかった、携帯灰皿だけがパンパンになった

 帰省してから最もしょうもない一服だった、最悪とさえ呼べない


 物事の終わりは得てしてあっけないものだ、そんなこと分かっていたが

 あと一箱買って、もう一度最後の一服を、やり直すわけにはいかないかなぁ

 

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