表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『この世界、悪が足りない。』   作者: よしお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/47

第33話 悪役、正義ゼミを開講する



――「“悪役が講師”って、そりゃ受講者みんな緊張するわ。」



「えー……それでは本日より、『正義ゼミ』を開講します!」


司会の女性アナが笑顔でカメラに手を振る。

――が、正面に立つ俺の顔(※ブラック・アオトン仕様)は、

その笑顔の八割を殺していた。


だってさ。

壇上に“悪役の仮面”が立ってるんだぜ?

隣にはミナセ(=ネーミングセンス爆死怪人ブランニュー・ミナセ)。

観客席にはヒーロー志望の若者たちがずらり。


ざわざわ……

(“悪役が講師ってマジ?”)

(“あれ倒したらポイント入るんかな”)


……頼むから授業前にバトルモード入るな。



「それではまず、講師の自己紹介からお願いします!」


マイクを渡され、俺は咳払いひとつ。


「株式会社アクターズ・オブ・イービル代表、ブラック・アオトンです。

 本業は、ヒーローの踏み台と社会風刺を担当しています。」


観客の一部が笑い、一部が引いた。

ミナセは横でぎこちなく手を振る。

「し、新人悪役のミナセです! 好きなものはバッテリー充電と社長の労災報告です!」


……なんかもう、自己紹介から社会病理のにおいしかしない。



講義が始まる。

テーマは「正義の副作用」。


俺はホワイトボードにマーカーで書いた。


『正義は、独りで持つとだいたい壊れる』


教室が静まる。

カメラが寄る。

真剣な目でメモを取るヒーロー候補たち。


「正義ってのはな、便利な言葉だ。

 “自分が正しい”と思った瞬間、他人を間違いにできる。

 それが悪意より、ずっと危ねぇんだ。」


前列の青年が手を上げた。

「じゃあ先生、“悪”ってなんですか?」


「悪? ……それは、“正義の副作用を引き受けること”だ。」


一瞬、会場がざわついた。

でもその中に、プリズマスターが座っていた。

彼は静かに頷いていた。



講義の最後、司会がマイクを向けてくる。

「では最後に、講師のお二人から受講者へ一言お願いします!」


ミナセが先に言う。

「正義をやるのも悪役をやるのも、心のメンテ忘れないでください!」

おぉ、成長してるな。


俺は続けて言った。

「ヒーローでも悪役でもいい。

 倒すより、立ち上がるほうを大事にしろ。

 それが、俺たち《アクオビ》のモットーだ。」


拍手が起きた。

――なんだこれ。

悪役講師が拍手浴びるって、どんな世の中だ。



収録後、休憩室でプリズマスターが近づいてきた。

「アオトンさん。今日の話……本当に救われました。」

「おいおい。授業料、高くつくぞ?」

「じゃあ、今度また番組で共演してください。」


彼の目はもう、迷ってなかった。

その光を見て、俺は苦笑する。


「……ま、ヒーローが本気で笑えるなら、悪役冥利につきるな。」



次回予告


第34話「悪役、ヒーローのメンタル相談に乗る」

――「“倒すより先に話聞いてくれる悪役”って、優しすぎんだろ俺。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ