表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『この世界、悪が足りない。』   作者: よしお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/47

第31話 悪役、人生相談を始める



――「“彼氏がヒーローすぎて疲れます”とかいう相談、対応マニュアルにない。」



スタジオの照明が落ち、赤いランプが点く。

ディレクターが指を上げた。


「3、2、1……スタート!」


「こんばんは、《夜のアクターズ・ルーム》へようこそ。

 今夜も“正義と悪のあいだ”で揺れるあなたのお悩みに、悪役代表・ブラック・アオトンが答えます。」


──そう、俺はいま、“人生相談番組”のMCをしている。


いや、どこで人生こうなった。



きっかけは例の教育番組の反響だった。

“悪役パパが泣ける”の声がバズり、制作会社から「夜の相談コーナーやりませんか?」とオファーが来た。

おかげで俺はいま、“昼は怪人、夜はカウンセラー”という謎の二足のわらじを履いている。



「では、最初の相談メールです」

アシスタントのミナセ(今日もミナトロンのまま)が読み上げる。


『ラジオネーム:ヒーロー彼氏に振り回される彼女さん』

『彼はいつも正義のことばかり考えていて、デート中もパトロール優先。私は悪い人扱いです。どうしたらいいですか?』


……おい、これヒーロー業界でリアルにありそうだな。


「うーん、難しいな。

 正義ってのは、他人のために動くことだ。でも、相手を犠牲にしてまで続けると、それはもう“独善”だ。

 ――つまり、君の彼氏、ヒーロー病だな。」


ミナセが苦笑する。

「社長、それ放送コード的に大丈夫ですか?」

「知らん。病気扱いした俺も病気だ。」



次の相談。

『悪役なのに、最近“人助け”しちゃいました。どうしたら悪に戻れますか?』


「……そのままでいい。悪ってのは、善を知ってて選ぶ道だからな。

 何も知らずに壊すのは、ただの空っぽだ。」


スタジオが静かになる。

ディレクターが親指を立てた。

ミナセが小声で「名言出ました!」と言ってる。



収録後、控室。

ミナセがモニターを見ながら言う。

「視聴者コメントすごいですよ。“悪役に救われた”って!」

「……救われるのは勝手にしてくれ。俺はまだ迷子だからな。」


スマホが震える。

通知には、ひとつのDM。

《ありがとう。あなたの言葉で、明日ちょっと頑張れそうです。》


名前の欄には――“Mikage_Y”。

(……おいおい、またお前か。)



その夜、外の風がやけに涼しかった。

街のどこかでヒーローがパトロールし、どこかで怪人が芝居をしてる。

俺はその真ん中で、コーヒーを飲みながらぼやく。


「……正義も悪も、夜になると似た顔するんだよな。」


カメラの赤ランプがまた灯る。

次の収録が始まる。



次回予告


第32話「悪役、ラジオで正義を語る」

――「“ヒーローからの投書”が来た時点で、もう平和は遠い。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ