第30話 悪役、子ども番組で“正義の父”を演じる
――「台本より、子どものアドリブの方が怖い件。」
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「社長、今日の現場、子ども番組らしいですよ!」
ミナセが資料を見ながら言った。
「新番組《ピュアピュア☆ヒーローズ!》……子どもたちに“正義の心”を教える番組です!」
「タイトルがすでに眩しいな。目が痛い。」
「で、うちの役割が……えっと、“悪役だけど本当はいい人のお父さん役”です!」
「おい待て、なにその倫理観の混線事故。」
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スタジオ入り。
ステージはピンクと黄色の洪水みたいな配色。
司会の着ぐるみキャラが、にこやかに出迎えてくる。
「アオトさんですねー! 今日は“悪役パパ”よろしくお願いします!」
「……悪役パパ。字面がすでに業が深いな。」
隣を見ると、ミナセも出演らしい。
名前は“子怪人ミナトロン”。
「社長! 今日もがんばりましょうね!」
「お前、テンション上がってるな。たぶん今日が一番危険だぞ。」
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リハーサルが始まる。
子どもたちがステージ上に整列し、カメラが回る。
「さあ今日は、“悪い人にも優しくできるかな?”のコーナーです!」
(……タイトルの時点で俺が負け確定じゃないか?)
司会「今日来てくれたのは、ブラック・アオトンさんと、その娘のミナトロンちゃんです!」
子どもたち「わー!」
(うん、拍手の音が怖い。だって俺、悪役だし。)
司会「アオトンさんは悪いことをしてしまいました。どうしたらいいと思う?」
一人の子どもが手を挙げた。
「ちゃんとごめんなさいしたらいいと思う!」
「うん、それは……正解だな。」
別の子が言う。
「でもね、悪いことした人にも、“どうして悪いことしたのか”聞いてあげたい!」
(……おい、いい子すぎるだろ。)
台本には“反省して泣く”と書かれていたけど、
なんかもう、それどころじゃない。
「……そうだな。悪いこと、したかもしれない。
でも、それで誰かが笑ってくれたなら……それも、ちょっとだけ、いいことかもな。」
スタジオが静まる。
子どもたちが見上げている。
スタッフの誰かが「アドリブ!?」と小声で叫んだ。
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放送後、番組は予想外の反響を呼んだ。
SNSでは《#悪役パパ》《#アオトン泣ける》がトレンド入り。
「“悪も優しさを持っていい”って、息子が真顔で言ってて泣いた」なんてコメントまで。
「社長、またバズってます!」
「もうこれ、悪役の定義とは……?」
ミナセがスマホを見ながら笑う。
「アオトさん、“悪役で良い人”って新しいジャンルっすね!」
「……どんどん立場があやふやになってきたな。」
でも、悪くはなかった。
子どもたちのまっすぐな目を思い出す。
あの視線に、正義も悪も、関係なかった。
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その夜、帰り道。
通りの電柱に貼られたポスターが目に入った。
《ピュアピュア☆ヒーローズ! 次回ゲスト:ブラック・アオトン(特別講師)》
「……講師て。」
思わず笑ってしまう。
悪役なのに、正義を教える。
それも、今の時代らしいかもしれない。
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次回予告
第31話「悪役、人生相談を始める」
――「“彼氏がヒーローすぎて疲れます”とかいう相談、対応マニュアルにない。




