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『この世界、悪が足りない。』   作者: よしお


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16/27

第16話 正義の監査、悪役の税務調査。




「すみません、こちら“悪役株式会社”さんでよろしいですか?」


朝、事務所のドアを開けた瞬間。

スーツ姿の女性二人が、名刺を差し出してきた。


《ヒーロー監査局 第七課 査察官》

《国家税務管理庁 特別会計監査部》


……なんだそのタッグ。

正義と税務の最強コラボだな。


「ブラック・アオトン代表のアオトです。どうぞ、お手柔らかに」

「ええ。では、帳簿と請求書のコピーを拝見します」


あ、これ、詰んだかもしれない。



「こちら、“ヒーロー訓練サポート業務”の経費ですね?」

「ああ、それは現場用の爆発演出費です」

「……火薬量、規定の三倍になってますが?」

「新人ヒーロー、ノリが良くて。正義が暴発しました」


「こっちは“衣装費”。スーツ一式で二十万円?」

「破れます。毎日、派手に破れます」

「……理解しました」


うん、理解されたけど、納得はされてない顔だ。


「それから、この“慰労費”というのは?」

「あ、倒されたあとヒーローに焼肉奢ったやつです」

「経費では落とせません」

「ですよね」



監査官の一人――背の高い方が、資料をめくりながら言った。

「正義と悪の経済構造、非常に興味深いですね」

「え?」

「戦闘イベントやステージ収入、スポンサー契約……“戦い”が産業化している。

その中心にあなたたちのような“演者”がいる」


「……俺たちは、ただの噛ませ犬ですよ」

「けれど、噛ませ犬がいなければ、正義は成立しません。」


その言葉に、少しだけ胸の奥がざらついた。

――皮肉だな。けど、当たってる。



午後、監査が終わったあと。

俺は机に突っ伏していた。

赤間がコーヒーを持ってくる。


「社長、生きてます?」

「うん……正義より税務のほうが怖ぇ」


「でも、監査官の人、途中から“業界研究”みたいになってましたよね」

「悪役の倒れ方にまで経済効果を見出すなっての」



夜、美影からメッセージが届いた。


《監査、ご苦労様でした。あなたの会社、協会の正式パートナーに推薦しておきました。》


「……おいおい。余計な昇進させるなよ」


けど、悪くない気分だった。

――“悪”が制度の中で、正式に認められる。

その皮肉さが、なんか心地いい。



外に出ると、街の巨大スクリーンにニュースが映る。

《ヒーロー活動、GDPの5%を突破》

《正義産業、国家基幹事業に》


「……完全に、正義がビジネスになっちまったな」


赤間が隣でぼそっと言う。

「社長、うちらも税金払ってるんすもんね」

「そう。倒される側も、納税者だ」



その夜、帰り際。

俺はふと、会社の壁に貼った標語を見た。


『悪を演じて、世界を支える。』


……悪役の看板にしては、真面目すぎる。

けど、この街にはちょうどいい。


「よし、次は“正義ポイント精算申告”だな」


「……社長、それ、もうブラックジョークっすよ」



次回予告:

第17話「正義と悪の合同説明会に呼ばれた結果」


――「悪役なのに、“夢を与える側”として壇上に立つ羽目になりました。」


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