第16話 正義の監査、悪役の税務調査。
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「すみません、こちら“悪役株式会社”さんでよろしいですか?」
朝、事務所のドアを開けた瞬間。
スーツ姿の女性二人が、名刺を差し出してきた。
《ヒーロー監査局 第七課 査察官》
《国家税務管理庁 特別会計監査部》
……なんだそのタッグ。
正義と税務の最強コラボだな。
「ブラック・アオトン代表のアオトです。どうぞ、お手柔らかに」
「ええ。では、帳簿と請求書のコピーを拝見します」
あ、これ、詰んだかもしれない。
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「こちら、“ヒーロー訓練サポート業務”の経費ですね?」
「ああ、それは現場用の爆発演出費です」
「……火薬量、規定の三倍になってますが?」
「新人ヒーロー、ノリが良くて。正義が暴発しました」
「こっちは“衣装費”。スーツ一式で二十万円?」
「破れます。毎日、派手に破れます」
「……理解しました」
うん、理解されたけど、納得はされてない顔だ。
「それから、この“慰労費”というのは?」
「あ、倒されたあとヒーローに焼肉奢ったやつです」
「経費では落とせません」
「ですよね」
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監査官の一人――背の高い方が、資料をめくりながら言った。
「正義と悪の経済構造、非常に興味深いですね」
「え?」
「戦闘イベントやステージ収入、スポンサー契約……“戦い”が産業化している。
その中心にあなたたちのような“演者”がいる」
「……俺たちは、ただの噛ませ犬ですよ」
「けれど、噛ませ犬がいなければ、正義は成立しません。」
その言葉に、少しだけ胸の奥がざらついた。
――皮肉だな。けど、当たってる。
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午後、監査が終わったあと。
俺は机に突っ伏していた。
赤間がコーヒーを持ってくる。
「社長、生きてます?」
「うん……正義より税務のほうが怖ぇ」
「でも、監査官の人、途中から“業界研究”みたいになってましたよね」
「悪役の倒れ方にまで経済効果を見出すなっての」
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夜、美影からメッセージが届いた。
《監査、ご苦労様でした。あなたの会社、協会の正式パートナーに推薦しておきました。》
「……おいおい。余計な昇進させるなよ」
けど、悪くない気分だった。
――“悪”が制度の中で、正式に認められる。
その皮肉さが、なんか心地いい。
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外に出ると、街の巨大スクリーンにニュースが映る。
《ヒーロー活動、GDPの5%を突破》
《正義産業、国家基幹事業に》
「……完全に、正義がビジネスになっちまったな」
赤間が隣でぼそっと言う。
「社長、うちらも税金払ってるんすもんね」
「そう。倒される側も、納税者だ」
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その夜、帰り際。
俺はふと、会社の壁に貼った標語を見た。
『悪を演じて、世界を支える。』
……悪役の看板にしては、真面目すぎる。
けど、この街にはちょうどいい。
「よし、次は“正義ポイント精算申告”だな」
「……社長、それ、もうブラックジョークっすよ」
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次回予告:
第17話「正義と悪の合同説明会に呼ばれた結果」
――「悪役なのに、“夢を与える側”として壇上に立つ羽目になりました。」




