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『この世界、悪が足りない。』   作者: よしお


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13/27

第13話 ヒーロー候補生、SNS炎上事件。



「先生、これ見ました!?」


朝から教室がざわついていた。

スマホの画面には、拡散中のハッシュタグ。


#悪役講師の学校ってどうなの?


……タイトルからして燃える予感しかしない。


「いや、これ完全にバズる前提の書き方だろ。

 “悪役”と“教育”並べた時点で、勝てるわけないじゃん」


美影が職員室のドアから顔を出した。

「アオトさん、ちょっとした問題になってます。

 ネットで“悪の教育が始まった”って」


「悪の教育て。言葉選びの暴力がすごいな」


「報道陣も校門に来てます」


「早いな!? 俺まだコーヒーすら飲んでないんだけど!?」



グラウンドには取材ドローンが浮かんでいた。

まるで“正義の監視カメラ”だ。

その下で、生徒たちはいつも通り訓練をしている。

いや、しようとしている――のだが。


「……集中できねぇなぁ。あれ全部、俺ら撮ってんのか?」

「“悪役に指導されたヒーロー候補たち”とか、絶対ニュースになるよな」


レイがため息をつく。

「先生、これ、俺たち何すればいいんですか?」


「簡単だ。

 ――堂々としてろ。

 正義ってのは“見られてる時”より、“見られてない時”のほうが試される」



午後。

ネットはさらに荒れていた。

《悪役が教育現場に!?》

《管理局は何を考えているのか》

《でも授業めっちゃ面白そう》←少数派


俺は苦笑しながらコメント欄をスクロールする。

「人間って、見えない敵を叩くのほんと好きだよな」


「先生、炎上慣れしてません?」

「お前ら、俺の“倒され履歴”見たら悟るぞ。炎上より爆発のほうが痛い」


レイが小さく笑った。

でも、隣の女子生徒がそっとつぶやく。

「……うちの親、ニュース見て心配してた。“悪役なんかに関わるな”って」


その声に、場が少しだけ重くなった。

俺は立ち上がって言った。


「いいか。正義を信じるなら、“正義っぽいもの”に流されるな。

 本物のヒーローは、自分で考える。

 ――それが、俺が教えたい“倒され方”だ」



その夜、会議室。

上層部から呼び出しを食らった。

「ブラック・アオトン講師の採用、再検討すべきとの声が出ています」


美影が横で口を開く。

「ですが、現場の評価は上々です。

 炎上は一時的な反応で、彼の教育方針には――」


「わかってる。……ただ、正義のブランドは繊細なんだ」


(ブランド、ねぇ。正義って、そんなに取り扱い注意だったか?)



帰り際、美影がぽつりと漏らした。

「あなたの授業、好きですよ。

 “悪役にしかできない教え方”って、たぶんそれ、誰かの救いになります」


「お、珍しく素直じゃん」

「炎上中ですから。少しはフォロー入れないと」


「SNSより人間関係の火消しが早いな」



次の日、教室の扉を開けると――黒板に大きく書かれていた。


“悪役講師、応援中!”


生徒たちのいたずらだ。

レイが照れくさそうに言う。

「ネットは騒いでても、俺たちは見てるんで」


「……お前ら、ほんとバカで良い生徒だな」



そして、昼休み。

スマホが震えた。

《トレンド更新:#悪役先生の授業受けてみたい》


俺はため息をつきながら笑った。

「……結局、世間ってのも観客だな。

 悪役がいないと、正義も退屈する」



次回予告:

第14話「正義のオーディションと、悪役の審査員」


――「“悪役目線での審査”って、何を評価すりゃいいんだよ。」



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