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転生逆行王女の終活 〜悪の王女は二度目の人生で贖罪を選ぶ〜  作者: はな


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34、赦せないのに、嫌いになれない



「………どうして、そんなことを言うんですか?貴方は、私のことなんて──」

「俺はエリーのことが……幼い頃から、君のことが好きなんだ」

「それは……貴方にとっては妹のような──」

「妹だなんて、一度も思ったことはない。1人の女性として……愛している」


 そう言い切ったサイラス様は今にも泣きそうな、切ない瞳で私を見つめている。


「……エリーを助けることができなかった俺が許されるとは思っていない。これからもずっと償い続ける。……今のエリーに自分が不要なら、諦めようと思った。それでもどうしても君を諦めることができないと、再会して痛感した。だからどうか君の側にいさせてくれないか──」


 この人は、誰だろうか。


 そもそも救えなかったとか、償いだとかそういう問題でもない。


──サイラス様が言っていることが、理解できない


 それならなぜ、私にそっけなくなったのか。


 今更 ──そう、今更なことだ。

 もう色々と諦めたのに、私の心を乱すのはやめてほしい。


 好きだった。


 私には、お兄様とサイラス様しかいなかった。

 2人のためなら全てを捨てられるくらいとても大切だった。


 それでもお兄様との好きとサイラス様の好きは、だんだんと違うものになっていった。


 貴方は間違いなく私の初恋で──


 でもだんだん気持ちが大きくなるにつれて、貴方はそれに比例するようにそっけなくなっていった。


 だからなおさら、考えないようにしていたのに。


 私のことはそういう対象ではなくて、貴方にとってはただ妹のようなものなのだと自分を納得させて。


 それでも全く知らない人に嫁ぐより、好きなサイラス様と一緒になれるのはとても幸運なことだと。


 そういう気持ちがなくとも、支え合える関係になれればと、良い関係でいられたらと思っていた。


 やっと前を向く心の準備もできていたのに。


 そっけない貴方と会う度に、捨てきれない想いにどれだけ苦しんできたか。


 私が回帰して、他に好きな人がいたのだと、あの態度にも無理やり納得して……どんな想いで貴方を諦めたのか。


 どんな想いで全てを捨てて出てきたのか。


 ──貴方は何もわかっていない。


 だから今回、本当は会うつもりもなかった。


 前回のことで誤解があったのだとつい先ほど理解した。


 それでも──


 頭で理解はしても、心は追いつかない。


 ぐちゃぐちゃな気持ちが、涙となって溢れてくる。この場から離れたいと思うのに体は動かない。


「なら……ならどうして、私にそっけなくなったの……?もう、私のことは嫌いになってしまったのだと、そう思って──」

「エリーのことを嫌いになるわけがないだろう!!むしろその逆だ。俺は子供で……君を……君が私に好意を向けてくれるたび、嬉しくて……気持ちが昂って、緊張して……うまく話すことができなくなっていったんだ……」

「そんなの……そんなの信じられない……」


 サイラス様は悲痛な表情をしていた。

 どうして、貴方がそんな表情をするの。


「そう、だろうね……俺も自分がいかに愚かだったのか、近くにいるときも、君と離れてからもずっと考えていた。だから……これからは何があっても君を守るし、どんな形でもいいから側にいたい。そして正直な俺の気持ちを伝えさせてほしい……お願いだ……」


 サイラス様は座っている私の前で跪き、私の両手を自身の両手で離すまいとするように、強く握りしめて額に当てて懇願する。

 

 記憶にあるサイラス様からは全く想像できない姿だった。

 彼の切羽詰まった様子に、私は言葉が出なかった。


 嘘を言っているようには見えない。

 でもだからと言ってすぐに信じることもできない。


 信じるのが怖い。

 もう傷つきたくない。


 この心の傷は思っていたよりも深いものなのかもしれない。


「私は……確かに貴方のことは好きでした。それでも今は……わかりません」

「それで構わない……俺のことが、嫌い?」

「嫌いでは……ないです」

「今はその言葉だけで十分だ……ありがとう、エリー」


 そう言って目尻に涙を貯め、泣き笑いのような笑顔を私に向けた。


 その笑顔は今まで見たどの笑顔より、鮮明に私の頭に残るものだった。



◇◇◇



(これは、一体どういう状況だろう……?)


 あの後、サイラス様は遅い時間に思ったより時間をとってしまった、すまない。と謝った。

 そして今日はいろいろ考えることも多かっただろうからと催眠魔法をかけてくれた。


 そのおかげで余計なことを考えずすぐに眠ることができ、治療院の手伝いも疲れを残すこともなく行くことができた。


 ヴォルが言っていた通り夜中に雨が降ったようだが朝には晴れていた。


 そして治療院に到着してラルフさんによって怪我をした人たちの状況を、記憶が曖昧なこともあり確認しようと思っただけだった。


 しかし──


「あ、おい見ろ!あの方は……」

「聖女様だ!おはようございます!」

「先日は本当にありがとうございました聖女様!」


 私が治療院に着くと患者さんが次々とキラキラした目で私をみてくる。おかしなことが、起こり始めた。


「いえ、怪我が治ってよかった、ですけど……その聖女って……?」


 私は至極普通の疑問を投げかけたと思うのだけど、みなさんはこの人は何を言っているんだろうという、きょとんとした顔をしつつも答えてくれた。


「我々の怪我を治してくださったじゃないですか!」

「それに、貴方がきてからこの病の症状がぐっと軽くなったんです!今ではもうあと斑点が消えるのを待つだけです!」

「そして私たちに治癒してくださった後倒れてしまって……」

「自分を犠牲にしてまで私たちを救ってくださりありがとうございます!」


 そんなことを口々に言われて困惑してしまう。


 ──私は聖女なんて大それたものではない

 


読んでいただきありがとうございます!

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