文化祭 その11
夏休みの少し前、バイトがある日で1人で帰ろうとしたら女の子に呼び止められて体育館へ続く渡り廊下へ連れて行かれた。
日差しはジリジリ暑いけどここは校舎の影になって少しだけ涼しい。
「すみません、急に呼び止めてしまって、1年の皆川ゆりっていいます。
…単刀直入に言います、私、佐野先輩のことが好きです」
直球!真っ直ぐ目を見て告白できるのって凄いなあ、普通に感心しちゃったんだ、俺。
「でも私、間宮先輩のことが好きな佐野先輩が好きなんです」
ん?
「先輩が間宮先輩しか見てないのは知ってるし、相手にされないのもわかってます。佐野先輩は間宮先輩としか付き合ってほしくないんです」
「えーと、じゃあなんで告白したの?」
「だって好きなら気持ち伝えたくなりませんか?だから佐野先輩も毎日、間宮先輩に好きって言ってたんじゃないんですか?」
そうか、伝えたいから言ってたんだよな俺。
っていうか、1年生も知ってるとか恥ずかしいんだけど。
自分勝手な思いを押し付けてるだけって分かってるけど黙ってたら一生伝わらないから圭ちゃんにしつこい、ウザいって言われても言い続けてたんだ。あわよくば好きの暗示にかかって絆されてくれないかななんて思ってた。
そんな都合よく行くはずないんだけど少しくらいは期待したいじゃん。
圭ちゃんにしていたことをいま俺がされる側になってる。そっかこういう気持ちなんだ。
なんか少しわかった気がする。
「私の気持ちだけでも知っててもらいたかったんです。押し付けてるだけだってことはわかってるんですけど、迷惑ですよね、すみません……」
「ううん、凄いね、凄いよ。ちょっとびっくりしたけど。でもだからこそちゃんと返事させてくれる?俺、圭ちゃんが好きなんだ。皆川さんとは付き合えない、ごめん」
「はい、気持ち受け取ってもらえただけで充分です、ありがとうございました。間宮先輩とうまくいくといいですね」
とにっこり笑う。
凄いな、強いな、そんなふうに思えるんだ。俺はやっぱり無理かも…俺だけ見てほしいって思っちゃう。他の人見てほしくない、取られたくない。
言い続けていればいつかはなんで思っていたけど、それすら出来なくなったらどうしよう。俺ちょっと怖くなってきちゃった。
「そんなことがあってその日は駅まで一緒に帰っただけ。多分そこを見られたのかもね。たまに学校で会うと声かけてくれるから、なんてことない世間話をしたりするかな。なんかお互い気持ちがわかる者同士というか、一緒に戦ってる戦士みたいな感じなんだよね」




