表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/47

思い上がり

ぐいぐい押されていたのに急に引かれると追いたくなる心理ってこれか。なんて無様だ。

セオリー通り追いたくなってる自分に驚く。

京士さんへの思いは簡単には断ち切れないと思っていたのに、意外にもすんなり消えていってくれた。


京士さんとプレゼントを買いに行ってからしばらくしてバイト先のカフェに週に1~2回窓際の席に座って本を読んだり、何かの課題をしている女性を見かけるようになった。

そう、京士さんはネックレスをしてこなかった。

その代わりあの小さな一粒ダイヤのネックレスの新しい持ち主が今日も窓際の席に座っている。


千花(ちはな)さんと紹介された彼女は京士さんが言っていた通り、おっとりと優しい雰囲気を持つかわいらしい女性だ。

彼女を、ちーと呼ぶ京士さんは千花さんがくるとソワソワ落ち着かないし、気もそぞろでミス連発。俺の尊敬する先輩像がガラガラと音を立てて崩れて落ちる寸前だ。


千花さんは時折俺を呼んで、

「私が居ると京士くん仕事にならないから、今日は先に帰るって伝えてもらえる?あとで連絡するからって」

「はいwわかりました。伝えますね」

「ふふ、ありがとう、またね」

悪戯っぽく笑う千花さんの首元のネックレスがキラリと光って店の外へ消えた。

その後の京士さんのガッカリ具合といったらなくて、

「ちー帰っちゃった……」

とこれまた仕事にならない。

「早く片付け終わらせて帰りましょうよ」

「うん……」


でも知ってるんだ。

千花さん、閉店間際に店の近くに戻ってきて待っててくれてることを。

いいなって思う、本当に心から。

あんなグズグズになってしまう京士さんに、

「もう、しっかりして!」

とお尻を叩く千花さん、あれをお似合いと言わずになんと言うんだ。悔しいとか嫉妬とかは強がりじゃなくないんだ、本当に。

好きな気持ちは確かにあったと思う。でもそれは大好きな兄貴を取られたくないブラコンみたい感情だったのかもしれない。

本当の兄弟でもないのにそこまで思わせてくれてた京士さんのことが大好きなんだ。

人間として尊敬してる、そういう好きなんだ。


人を好きになる気持ちを知った今なら暁人のこと受け入れられるかもしれない、なんて都合良くいくわけなかった。


なんでいつまでも暁人が俺のこと好きでいると思ってたんだ?

思い上がりも甚だしいよな。散々酷い言葉で振っておいて、自分の恋(恋といえるかどうかも怪しいけど)がダメになったから、都合よく転がってた暁人の気持ちに乗っかって甘やかしてもらおうなんて虫がよすぎる。

そんなの自分がかわいいだけだ、結局暁人を傷つけることに変わりないじゃないか。自分の気持ちだけ守って、全て暁人に委ねようとしてる。そんなこと考えてる自分の狡さに心底嫌気がさす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ