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消えた声
確かにおかしい。
いつもならここで、
「圭ちゃーん、おはよー、好きー!」
って喚いてるのに席に座ったまま微動だにしない。高嶺たちと顔見合わせ慌てて暁人に声をかける。
「暁人!」
ゆっくりこちらを振り返る暁人、虚げな顔で俺らの姿を捉えると、
「ああ、おはよー圭ちゃんもう大丈夫?」
「いやいやいや、お前どうした?お前が大丈夫かよ!?」
高嶺が暁人に詰め寄る。
「ほらー、圭吾が怒鳴るからじゃん!ちゃんと謝りな」
理玖が俺をぐいぐい押してくる。
「暁人、昨日はごめんな。俺ちょっと嫌なことあってお前に八つ当たりしちまった。本当にごめん」
和真が暁人?と声をかけなければ黙ったままだったであろう暁人が、
「そうなんだ。大丈夫だよ、俺の方こそごめんね。いつもごめんね」
どうしたんだよ、暁人。
次の日には前日の虚げな顔とは打って変わり、いつものような喧しい暁人に戻った。
相変わらず、
「圭ちゃん、圭ちゃーん」
と賑やかだ。
ただ一つを除いては。
暁人はその日から俺を好きだと言わなくなった。