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日本歴史絵巻 杉勝啓短編小説集  作者: 杉勝啓


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苅萱道心の話 二人の女を殺した男 平安時代

筑紫の国の武将加藤繁氏は妻の桂子と仲良睦まじく暮らしていました。


ある日、繁氏は遠乗りに出かけ、雨にあい、雨宿りをした家の娘に親切にしてもらいました。繁氏はその娘、千里に心ひかれ、館に迎え入れ、側妾としました。


桂子と千里は、表面上は仲良くしていました。

しばらくした、夜のことです。


桂子と千里は琴を、あわせていました。そのときです。二人の女の髪の毛が伸び、蛇の形になり、あい争っていました。その姿は障子の影に映りました。それを見ていたのはほかでもない、繁氏でした。

繁氏は、二人の女の心を知り、信頼していた女たちでさえ、あのような心なのだ。ましてや、ほかの者の心は、いかばかりか、そう思えば、世の無情を感じるのでした。そして、家も妻もすべて捨て、出奔してしまいました。


繁氏は、法然上人のもと、一心不乱に修行に励み、苅萱道心と呼ばれる人になりました。


桂子は悲しんで悲しんで、とうとう狂い死にしてしまいました。

千里は、子供を身ごもっていました。月満ちて。千里は男の子を生みました。石童丸と名付けました。千里は夫を捜して、さまよいました。


何年もたって、夫がようやく、高野山にいることがわかりました。ですが、高野山は女人禁制の山でした。千里は仕方なく、石童丸だけで夫を捜しにゆかせました。


ようやく、石童丸は訪ね当てましたが、苅萱道心は別人の墓を石童丸の父の墓だと嘘をつきました。がっかりして、石童丸は高野山をおりました。山をおりたとき、長年の苦労がたたったのか、千里は世を去っていました。


父母を失った石童丸は、この上は、頼るのは山で会った苅萱道心と、父とは知らず頼って。ふたたび、山に登りました。


苅萱道心は、最後に自分を頼って来るとは、親子の絆は切っても切れぬものなのかと、しみじみ思うのでした。


二人は、仏道に励み、親子の名乗りをすることもなく、生涯を終えました。

昔、高野山のおみやげにもらった絵本にあった話です。

親子の情愛は切っても切れないものだというふうにまとまっていましたが、じゃあ、もともとの奥さんは?

そもそも繁氏が浮気をしなければよかった話なんじゃ。

直接手を下してなくても、桂子と千里を殺したのは苅萱道心ではないかと思います。

なお、苅萱道心の話にはいろいろと派生した話があります。また、苅萱道心自体が伝説上の人物で実在していなかった可能性があります。

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