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日本歴史絵巻 杉勝啓短編小説集  作者: 杉勝啓


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出雲のお国の話

あたしの名前はお国。

物心ついた時、あたしはややこ踊りの一座にいた。

あたしのおっかあは出雲の神社の巫女だったそうだけどよくわからない。おっとうはなんでも浅井長政っていう殿様に仕えていた武士だったけど戦で討ち死にしたらしい。その殿様である浅井長政っていう人も織田信長っていう人に敗れて死んでしまったらしい。

あたしは思ったんだ。おっとうもその殿様も天下はとれなかった。だから、あたしが天下をとってやるって。あたしが幸運だったのは、あたしがいた一座は芸は売っても色は売らないっていうのが信条だっていうこと。だって、多くの一座は有力な人のお屋敷に呼ばれるっていうことは色の接待を意味したから。


年頃になって、あたしは一座の花形になっていた。

ある年、あたしたちの一座は関白、豊臣秀吉様の甥の豊臣秀次様のお屋敷に呼ばれたんだ。その使者として一座にやって来た名古屋山三郎様は男なのに綺麗な顔立ちしていた。あたしたちは一目で恋におちた。山三郎様も秀次様の元を辞して一座に入ってくれるって言っていたんだ。


でも、そうならなかった。山三郎様が仕えていた秀次様が関白になってしまったから。秀次様は山三郎とあたしに頭をさげられたんだ。自分に関白という地位は荷が重い。何度も辞退したけど、叔父に天下のためと説得された。なんとか後を継いでくれる人を見つけるまで、山三郎様に支えて欲しいって…


山三郎様もそこまで言われて断れなかったみたい。

あたしは一座のみんなと旅をしていたけど、京で興行したときはつかの間の逢瀬を楽しんだ。


豊臣秀吉様にお子様が生まれて、秀次様はその子が大人になればようやく、関白の座を降りられるって言っていたって。


それなのにいきなり秀次様は謀反の疑いをかけられ、高野山をに追放されたんだ。そんなはずない。秀次様は関白の座を降りたがっていた。僅かな供を連れて高野山に行って秀次様は腹を切ったと知らされた。その時、一緒にいた方々も、腹を切ったって…山三郎様も一緒に行ったから、あたしは心配でたまらなかった。でも、山三郎様はあたしたちの一座に姿を見せた。なんでも、秀次様は山三郎にあたしの元へ行けって言ってくれたんだって。長くあたしたちの仲を裂いて悪かったって謝っていたって、山三郎様から聞かされた。秀次様は自分が腹を切ることで収めようしたんだって。だけど…それですまなかった。秀次様の妻妾、幼い子どもたちまで処刑されたんだ。なんで…秀次様の奥様達や幼い子どもたちにどんな罪咎があるっていうの?

山三郎様は言った。

「俺は太閤が憎い。秀次様を駒のように扱い、邪魔になったら切腹に追い込み、あの方の妻子まで…」

山三郎様は一座から姿を消した。

それでもあたしは踊って唄った。そして演じた。


天下をとった徳川家康様の次男の結城秀康様が言ってくれた。

「天下に幾千万の女あれども、一人の女を天下に呼ばれ候はこの女なり。我は天下一の男となることかなわず、あの女にさえ劣りたるは無念なり」




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