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悪役令嬢と名高い私ですが、巷で人気の『光の賢者様』の正体は私です  作者: サトウミ
9.獣人族の王女と土下座

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今がチャンス

昼下がりのカフェに、ヒヒさんの叫び声が響き渡る。


私は、その悲痛な叫び声に警戒して、あたりを見回す。しかし、特に怪しい動きはない。

ヒヒさんの声のせいなのか、すぐ近くで料理を運んでいた店員さんが、転んで勢いよく床に倒れてた。

手に持っていた料理も床にばら撒かれて、とても残念なことになっている。


「ヒヒ! どうした!」

「尻尾が……!」


ヒヒさんは自身の尻尾を両手で掴むと、痛みを堪えるかのように背中を丸めた。


「もしかして、踏まれたのでしょうか?」

殿下の質問に、ヒヒさんは首を縦に振った。


恐らく店員さんが誤ってヒヒさんの尻尾を踏んだのだろう。店員さんが転んだのも、きっとそのせいだわ。

店員さんも店員さんで、痛そうに顔を押さえながら片手で床に散らばった料理を片付けていた。


「なんじゃと! 大丈夫かヒヒ!」

「………はい、大丈夫…です」

ヒヒさんはそれでもまだ、痛そうに尻尾を握っている。

一方の店員さんは、痛がるヒヒさんを気にかけることなく、片付けた料理を黙ってキッチンへ持って行こうとしていた。


「……おい、待たぬか! そこの店員!」

タマモ様は、立ち去ろうとする店員さんを呼び止めた。

店員さんは眉間に皺を寄せながら、渋々タマモ様達の前に来る。


「…お呼びでしょうか?」

「お主、ヒヒに対して何か言うことはないのか?!」


タマモ様が注意すると、店員さんは謝るどころか口を尖らせ反論し始めた。


「お客様、今後は尾を通路に出さないでいただけますでしょうか? 他のお客様の迷惑になりますので」

「何じゃ、その言い草は! ヒヒが悪いとでも言いたいのか!?」


「お客様の尾は『少し出る』どころではありませんでしたので。他のお客様も通るたびに踏みそうになっていたことに気づきませんでしたか?」

「そ、それは…」


店員さんの指摘に、タマモ様は言葉を詰まらせる。

態度が素っ気ない理由は、それだったのね。


「そもそも、お客様の尾のせいで先ほど他のお客様の料理が台無しになってしまったのですが?」

「…じゃが……」


「本来であれば料理代を弁償していただきたいところですが、尾を踏んだこちらにも非はあるため、あえて言及しませんでした。その上で難癖をつけるのでしたら、お帰りいただいて結構です」

「なっ…!」


ヒヒさんも良くなかったとはいえ、流石にそれは言い過ぎだわ。

店員さんの喧嘩腰の態度に、タマモ様は顔を真っ赤にして立ち上がった。


「なんじゃ、この店は! もういい! 帰るぞ、ヒヒ!」

「は、はい…!」

「あっ! お待ちください!」


タマモ様は受付に行ってお金を叩きつけるように置くと、地団駄を踏みながら店の外へ出た。ヒヒさんとユミル殿下も、そんなタマモ様の後を追うように店を去った。


私とレディーナは席に座ったまま、その様子を呆然と眺めていた。


……タマモ様、悪魔憑きにならなければいいのだけれど。

顔を真っ赤にして苛立つタマモ様に、私は一抹の不安を感じた。



◆◆◆



「すみませんタマモ様。先程のお店に忘れ物をしてしまいました」


俺はそう言うとタマモ達と別れ、店に戻るフリをする。そして誰もいない路地裏に隠れると、怒りの感情を辿った。


あのカフェで水の賢者と遭遇した時は心臓が止まるかと思ったが、おかげでいい情報を聞き出せた。

光の賢者と風の賢者はここに来れない。

ということは、水の賢者しかいない今が世界樹を狙うチャンスだ。


悪魔憑きにする人物は、勿論決まっている。


(何なんじゃ、あの店員! あれが客をもてなす態度か! 理由はどうであれ、ヒヒの尻尾を踏んだのだから一言謝るのがスジじゃろ! 向こうが謝れば、こちらも一言詫びて『お互い悪かった』で済んだ話じゃろうに! なぜああも最初から喧嘩腰なんじゃ!)


タマモの怒りは一向におさまらない。

あの店員も、店内で暴れたり尻尾を通路に出したりするヒヒに怒りを抱いていたが、俺達を追い出したことで怒りがおさまってしまった。

まぁ、その代わりにタマモが悪魔憑きにできるから、別に構わないが。


(モリョウ・タマモ。貴様、カフェの店員に謝罪させたくはないか?)

(なっ?! なんじゃ、お主!)

(貴様達人間が『悪魔王』と呼ぶ存在だ)

(なんじゃと?! 本当に悪魔王はこちらの大陸じゃと、怒りで現れるのじゃな!)

(その通りだ)


正確に言えばゴンドワナ大陸の悪魔王は俺ではない。アイアイだ。

人間どもは悪魔王は一人だと考えているようだか、こちらの事情を知らなければ仕方のないことだ。


しかし、今世のアイアイはもう()()したのか。アイツは面倒くさがりだが、一番信用していたのに残念だ。

キキやラックラークには期待できない以上、今世はもう俺しかいない。


(貴様が望むなら、礼儀を知らない店員に謝らせる力を授けてやろう。ただし、その代わりにこの国の世界樹を奪い取って俺に差し出すのだ)


(うむ! あの店員は100回土下座させねば気が済まん! 奴を土下座させる力を貸してくれ!)


俺はタマモに怒りの加護を授ける。

するとタマモは黒い狐のような姿に変身した。


(さぁ行け、モリョウ・タマモ! 無礼な店員に謝罪させるのだ!)


そして今度こそ、世界樹を奪い取れ!

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