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訳あって年下幼馴染くんと偽装婚約しましたが、リアルすぎて偽装に見えません!  作者: 廻り


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24 街での買い物



 特に目的がなかったメイナードは、リリアナの買い物に付き合うと提案した。ありがたくリリアナは、今日の目的の続きを遂行することにした。


「メイナード様のおかげで、王家御用達の良い茶葉を注文できました。ありがとうございます」


 スカーレットから頼まれた買い物は、友人へ贈り物だ。

 お茶会の招待状が来たが、今のスカーレットは忙しくて参席する暇がない。そのお詫びとして、お茶会で楽しめるものを選んできてほしいとお願いされたのだ。


 メイナードが付き添ってくれたおかげで、王族以外には滅多に売らないという希少な茶葉を手に入れることができた。きっとお茶会の良い話題提供になるだろう。


「これくらいお安い御用さ。他に必要なものはあるのかい?」

「あの……、もう一つだけ。私の個人的な買い物なんですが……」


 王子に個人的な用事までつき合わせてしまうのは申し訳ないが、今日は絶対にアロマを買って帰りたい。


「僕が無理やり連れ出してしまったんだから、いくらでも付き合うよ」

「ありがとうございます」



 アロマオイルが売っているお店へと入ると、ほわぁっとお花畑にでも来たかのような香りに包まれる。外が寒いのに、ここだけは蝶でも飛んでいそうなほど暖かな雰囲気だ。


(わぁ! たくさんあるわ)


 おしゃれな小瓶に入ったアロマオイルの他にも、アロマソープや、香水、ポプリなども置いてある。香りに関するものなら何でもあるようだ。ついつい、目移りしそうになる。


「アロマオイルか。リリアナにこんな趣味があったんだね」

「私も買うのは初めてなんです。レイモンド様にプレゼントしたくて」

「レイモンドに……?」

「よく眠れるようにと思いまして」


 それを聞いてメイナードは「ああ……」と理解したように顔を曇らせる。一緒に留学していた彼も、レイモンドの悪夢には気がついていたようだ。


「リリアナが渡せば、きっとレイモンドも良くなるよ」


 根拠はないけれど、リリアナからの贈り物なら夢に出るほどレイモンドは喜ぶさ、とメイナードは笑った。


(本当にそうだと良いな)


 リリアナは店員に相談して、安眠に良いラベンダーをベースにした

アロマオイルを購入した。


「お待たせいたしました。メイナード……様?」


 買い物を済ませて振り返ったリリアナだが、先ほどまで後ろにいたはずのメイナードがいない。店内を見渡したがどこにもいないようだ。


「お連れ様でしたら、先ほど用事があるとおっしゃって出て行きましたよ。お嬢様にはこちらでお待ちいただくようにと」

「そうでしたか……。ありがとうございます」


(どうしちゃったんだろう殿下。いつもは急に消えたりしないのに……)


 厄介事に巻き込まれていないか心配になったリリアナは、店先に出て通りの様子を確認してみる。けれど幸い、取り立てて変わった様子はない。


 探しに行きたい気持ちもあるが、ここで待つように言い残したなら下手に動けない。

 どうしたものかと途方に暮れていると、突然。


 リリアナは誰かに口を塞がれた。

 彼女は抵抗する暇もなく、意識が薄れていった。




 宝石店でネックレスを購入したメイナードは急ぎ、アロマ店へと戻ろうとしていた。

 レイモンドのためにと、真剣にアロマを選んでいるリリアナを見ているうちに、彼は対抗意識でリリアナにプレゼントがしたくて、店を飛び出してきてしまった。


 馬鹿な真似をしている自覚は、本人にもしっかりとある。

 リリアナに友人としか思われていないことも、十分に理解していた。

 けれど、リリアナとレイモンドの関係が、昔から羨ましくてしかたなかった。


 第二王子という存在は、兄の予備(・・)でしかない。誰からも期待されず、強く求められることもない。

 それは侯爵家の次男であるウォルターも同じで、二人は傷をなめ合うように寄り添ってきた。


 そんな二人の前に現れたのが、リリアナとレイモンド。

 二人はお互いを強く求め合い、お互いがいなければ生きていけないような、強い絆があるように見えた。

 羨ましかった。

 誰からも求められることがなかったメイナードにとっては、二人の関係が眩しく見えた。

 気づけば、自分も同じように求められたいと思うようになり、リリアナをいつも気にかけていた。


「あっ! あの方です! お連れ様、大変です! お嬢様が!」


 アロマ店の店先には店員と治安警備隊がいて、メイナードを見つけるなり店員はそう叫んだ。


「リリアナがどうかしたの!」

「お嬢様が店先で、男たちに連れ去られたんです!」

「リリアナが……そんな……」


 とんでもない失敗を犯してしまったことに気がつき手が震えたメイナードは、どさりとプレゼントの箱を雪に上に落とした。





 リリアナは、馬車に揺られている感覚に気がつき目覚めた。

 一瞬、公爵家の馬車かと思ったが、これは乗合馬車のような縦長に座席のある馬車のようだ。


「――……ん。ここは……?」

「お姉ちゃんが起きたよ」

「大丈夫お姉ちゃん?」

「お姉ちゃん怖いよぉ……」


 リリアナの隣に座っている小さな子が、リリアナの腰に抱きついてきた。

 よく見れば、馬車の中には小さな子どもが、五人も乗っている。

 普段、大人ばかりと接しているリリアナでは見ることのない光景に、やっと頭が冴えてきた。


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◆作者ページ◆

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