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「ルマトって何が好きか知ってる?!」
「知らないよ。それより仕事中なんだけど……」
「いいじゃない。ミアはお隣さんだからあたしたちよりルマトのこと詳しいでしょ!」
ルマトの噂が広がるやいなや村中の年頃の少女はルマト見たさに隣家に詰めかけたが、ルマトは病気療養のためにこの村に来たのにこれでは療養にならないとやんわりとルマトの家の人、ジョゼフさんって言うんだけど、ジョゼフさんは家族じゃないそう。
詳しくは聞いてないから分からないけど、ジョゼフさんは50代半ばぐらいの男性だ。
に止められてしまったから彼女たちはこっちに聞きに来てるんだけど、ずっとこの調子で仕事になんないったらありゃしない。
「あたしだって名前ぐらいしか知らないわよ」
「嘘おっしゃい! ルマトがあんたの家に入って行くの見た人居るのよ!」
「それも一度や二度じゃないでしょ!」
ぎくり。
その言葉に冷や汗が流れそうになる。
そう、彼女たちが言うようにルマトは何故かうちに出入りしてるし、ちゃっかり食事までしていく。
そりゃあたしだってルマトに会えるのは嬉しいっちゃ嬉しいけど、このことがバレたら彼女たちに何をされるか分からないから出来るだけ自分の家で食べてと言っているのに!
「ランセルが仲良くなったみたいなのよ」
嘘ではないが本当でもないことを伝える。
「ランセルね。ランセルならもっと詳しいこと知ってる?」
「さあ? でも今は放牧中だから後にしてくれる?」
「あ、そういえばそうね。あたしたちも仕事があるからまた後で来るわ」
「そうして……」
彼女たちもようやく自分たちの仕事を思い出したのか知りたいことを知って満足したのか分からないけど一応満足したみたいで立ち去ってくれた。
「行った?」
「……ルマト居たんだったらあなたがあの子たちの相手をしてくれたらいいじゃない」
ドキドキし始めた胸を押さえて文句を言う。
「うーん。でも、あんなに沢山居ると怖いし」
彼女たちが出ていった出入口とは反対側にある作業小屋の窓からひょっこりと顔を出したルマトに文句を言うがこの男飄々とした態度でさらりとかわした。
「それよりミア今日のお昼何?」
また食べて行くつもりか。小首を傾げるルマトに内心ため息を吐く。
ルマトが初めて来た日にあたしは昼食の準備をしていたところだった。
父さんたちが戻って来るまでにまだ少し時間があったけど、あたしはルマトに見惚れていてしばらく固まったままでいつの間にか父さんたちが戻って来てせっかくだからと父さんがルマトを招いて昼食をご馳走したのがきっかけだった。
彼はあたしが作った料理を気に入り、母さんに習ったから味は母さんと同じだと思うんだけど、何故かあたしが作った物だけを食べたがる。
これだけなら特別扱いされてる?! と舞い上がりそうなものなんだけど、こんな風に女の子たちから逃げ回りあたしのことを盾にしようとしてくるので少々憎たらしいとさえ思ってしまう。
「今日は母さんが作った料理と昨日おばさんにお裾分けしてもらった煮込み料理よ」
「ミアは作ってないの?」
「今日はね」
「ちぇ」
「可愛くないから」
ルマトが拗ねる姿にこんな顔をしていても綺麗な顔に嫉妬すら覚えてる。
「今日は食べてかない?」
「そうだね。また今度作った時は教えて。食べにくるから」
「分かった」