人の縁。
「しっかりとした噛みごたえがあり、噛む程に旨味が出てくる肉だ。
ワイルドボア、侮れないな」
コウタはワイルドボアのカレーのお肉をそう評した。
「つーか、カレーはやっぱサイツヨだよね〜〜!
美味しい!」
紗耶香ちゃんはシンプルにカレーを褒めてる。
「本当にこのとろりどろりとした調味料、やや辛いけどなんかやたら美味いな!」
「ああ、驚く程美味いな。癖になりそうな味だ」
リックさんもラウルさんもカレーは初めてみたいだけど、お口に合ったみたいでホッとした。
「猪肉、凄まじく油ありましたけど、後でランプにでも使います?」
コウタは経験者なのかな? 獣脂で照明にしちゃうやつ。
「そうだな、無駄にするのはもったいないからほぼそうしてるよ」
「ん? 次のお店は休憩所? 食べ物は出るのか?」
「美味しい飲み物と美味しいデザートですね、主にフルーツ」
「それにしてもお前達は本当にしょっちゅう店の内容が変わるな」
同じ事ばかりは飽きるし、安全で効率の良い稼ぎ方を模索してます。
「色んな食材や商品を使いたいので……」
とりあえずこれも嘘じゃ無いから言っておく。
「そうか〜〜、でもお前達は食べ物系だと何作っても美味しいのはすげえと思ってるぜ」
「美味い飯食わせて貰ったし、やっぱり今回のような森行きの護衛とは別にお礼がしたいのだが……」
ラウルさんは、今回の同行もまだ命の恩人に対するお礼としては弱いと思っているみたい。
義理堅い人だ。
「そ、そこまでの事はしてませんよ」
スキルでサクッと鑑定出来たし。
「カナデっち、結構背水の陣だったのに、謙虚過ぎィ〜〜。
フツーに海とか祭りにでも連れてって言えば良いのに」
え!? それってデート!? デートに誘えって言ってる!?
「さ、紗耶香ちゃん、祭りって?」
私は内心の動揺を抑えつつ、気になるワードの情報を得ようとした。
「サヤ、雨の日に情報収集しに行った風呂屋で聞いたんだけど、もうすぐ収穫祭ってのが有るっぽいよ。
かぼちゃとか色んなトコにいっぱい並べるんだってサ」
「祭りで護衛でもすればいいのか? 出店側と言う事か?」
「いえ! たまには遊びたいんでぇ! 一緒に回ってあげてください! みたいな」
「それくらい構わんが、それでお礼になるのか?」
「は、はい……」
本当にラウルさんとお祭りデートしてもいいの!? ドキドキして来た!
「ハイ! 俺は胡椒を安全に捌けるルートが有れば知りたいです!」
急にコウタが挙手して割り込んで来た。
「コータ君、今は空気読もう!」
あ、紗耶香ちゃんが……私の為にそんなに必死になって……。
いい子だなぁ。
「おお、胡椒か! それはこのリック様に任せておけ!」
「有るんですか!? リックさん、流石です!」
え!? 本当に!? やはり商売人的に人の縁って大事ですね!
「珍しく性格の良い貴族の知り合いがいるから、盾になってもらおう」
「貴族の知り合いがいるなんて凄いですね!」
コウタの食いつきが凄い。
しかし、珍しく性格の良い貴族って事は、性格の悪い貴族の方が多いのかな? 怖いね。
「俺はなるべく早く自分達の持ち家欲しいんですよ、今はゲストルームと居間を使わせて貰ってますけど、旅の商人さんの留守中に借りてるだけで、やはり気を使うので」
「まあ、コウタは自室らしい自室も遠慮して使えてないもんね、リビングにいるし、気持ちは分かるわ」
紗耶香ちゃんが空気読めって頭抱えたからフォローをしとこう。
「ちとボロ屋でいつもの市場からはやや遠くても良いなら安い家は見つかると思うぞ」
「リノベ、なんなら修理して使いますので! ややボロでも我慢出来ます!
市場でなくても自宅で開業出来るなら移動の手間も省けるんで!」
「ま、家の為なら仕方ないかぁ」
紗耶香ちゃんも唇を尖らせつつも納得したみたい。
うん、お金は大事だよ。
毎回市場に移動するのも面倒だしね。
色々他の店舗の品を見て回れるメリットもあるけど。
「貴族のお嬢様が野盗に襲われてたのを助けた所から縁が出来てな」
「うわ! リックの兄貴かっけ〜〜! ヒーローじゃ無いですか!
ロマンスに発展したりしたんですか!?」
コウタが勝手にリックさんの舎弟になってる!?
「いや、それは身分が違うし、ロマンスは無いけどな。
だけど今でもたまに別荘に行く時とかお祭りの日には護衛を依頼されたりするぞ」
「へ〜〜、でも貴族の令嬢なら綺麗なんでしょうね?」
「そりゃあな、可愛い人だぞ」
「マ? リックさん、成り上がればワンチャンあるんじゃないですかぁ?」
紗耶香ちゃんまでリックさんと貴族の令嬢とのロマンスに介入した。
恋バナが好きなんだろうな。
「あはは、俺は無駄な夢は持たないぞ。
でも冒険者としてはもっと上には行きたい」
「リック、気持ちは分からんでも無いが、あまり無茶はするなよ」
ラウルさんは堅実派かな? 地に足ついてそうで素敵ね。




