よろず屋なので。
「次のお店の商品がいきなり巻きスカートと化粧品の口紅と化粧水だったら、お客様がガッカリするかな?」
私は懸念事項を話した。
「俺はやっぱ皆、串焼きかハンバーガーを目当てに来ると思う」
「じゃあ予告する?
飯屋の次は服と化粧品の販売ですって、看板、てか、チラシに書いておくとか。紙とペンならあるし」
私は修学旅行の旅行鞄に書く物は入れて来た。
オタクなので。
「でも差し当たり、明日は串焼きとハンバーガーどちらにすんの?」
「順番なら前回ハンバーガーなら串焼きかな」
「いっそ半々にする? 串刺し作業が半分になるから」
串刺し作業がめんどうで労力を半分にしたいので、私は雑な提案をしてしまう。
「うーん、じゃあ、俺が面倒な串刺し作業と焼きの作業やって、
奏がハンバーグの種作りと焼きの作業。
水木さんがハンバーガーのレタス挟んだりの仕上げってのは?」
「待って、コータ君、アタシが一番楽な作業になってるけど!?」
「代わりに翌日の服やコスメの接客はメインで頑張って貰うかで調整を」
「ああ、紗耶香ちゃんは綺麗だし、それは良いね」
「カナデっちも可愛いけど!?」
残酷ながら魅力数値でも差が有るのだ。一目瞭然。
紗耶香ちゃんが魅力80で私68だもん。
「人に好みが有るのは分かるけど、オシャレ系でカリスマ店員になりそうなのは水木さんだって、俺も思う」
「私も素直に同意」
「二人はそれでいい訳?」
「うん」
「私も良いよ」
「明日は飯屋。次が服飾。
その次が飯屋、その後は二日休みの後、また飯屋でどうだ?」
「そうだね! 休みは大事!」
「りょ!」
「それと、服飾の方はガラリと商品変わるし、臨機応変に接客して、場合によっては値引きサービスも有りで良い?」
「そうだね、お友達紹介で割り引きとかも良いじゃん! 客層変わるはずだから」
「いいね、お友達紹介料。私達もスカート生地買った時にその方法使って値切ったし」
「おけ」
「分かった。とにかく服飾系は在庫を全部売りたい、残るともったいないから」
臨機応変にお金を稼ごう。
* *
「明日は、売り物が食べ物ではなく、女性用の服と、化粧品となります」
開店直後からお客様にはご理解いただきたく……本日は明日の売り物の説明をしている。
「え? なんで?」
串焼きとハンバーガーを買い込んだ冒険者風のお兄さんは面食らう。
店の内容変わり過ぎだし、気持ちは分かる。
「うちは実はよろず屋でして、既に商品を作ってありますので、それに、いいものなのです。
化粧水は、シミ・そばかすを薄くして、美肌にするものです」
私は更に説明する。
「口紅も、色がとてもキレイで、贈り物にも良いですよ!
ホラ、アタシの唇を見れば、一目瞭然、この巻きスカートも、洗濯が簡単で〜、ピンで止めるだけなんで、ちょっと体型変わっても、長く着れるんで〜」
紗耶香ちゃんも自分がモデルになってアピールした。
「た、確かに良い色だが」
今日紗耶香ちゃんは売り物と同じ口紅を、スカートも例の巻きスカートで来ている。
「あら、本当? その紅とスカートが明日買えるの?」
「はい!」
「良いわね! 多少太ってもお直しもいらず着れる服!」
列に並んでた女性客が食いついた! 紗耶香ちゃんはモデルが良いから見栄えがする。
「食べ物屋はもうやらないのか?」
冒険者風のお客様はうちの食べ物のご執心のようね。
効率を考えつつも、思いつきで色々やってるとは、言いにくい。
「いいえ、メインは食べ物で、たまに化粧品といったところです。
化粧品はいいものですが、仕入れ値が高いので」
コウタが説明する。
コスメ系商品の仕入れ値が高いのは本当だ。
「私達、今は家を借りていますが、いずれは自分達の家をもちたいので、金策に色々やっているのです」
私も援護する。クレーム回避の為には情にも訴えるぞ。
「ああ、家が欲しくて色々頑張ってるのか」
「「「そうなんです!!」」」
私達は力いっぱい、拳を握って肯定した。
「じゃあ私は、明日、化粧品を目当てに来るわね」
女性客を逃したくないから、追加アピールしよ!
私と紗耶香ちゃんはアイコンタクトをした。
「良ければお友達も連れて来ていただけたら、紹介割り引きをいたしますよ」
「紹介割り引き? 友達を連れてくれば良いの? 買うかは分からないけど」
「ええ、呼んでくださるだけで良いです」
「分かったわ」
「明後日は飯屋か?」
「はい、ですがその後は二日休みです。よろしくお願いします」
連日働いたら2日は休みたいのだ。
「分かった! 俺は飯屋の明後日来るぜ!」
「はい、お待ちしております!」
「またのお越しをお待ちしております」
コウタの言葉は私よりずっと丁寧だな。
高級店の店員さんみたい。




