可皆 needs to take a nap.
およそ400字の短編小説、二つ目です。
前回よりは世界観を出せたかなぁ、と思いつつ、今日も約400字。
よろしくお願いいたします。
腰回りが少しきつくなってきたから、ホックの位置を少しずらしたスカートのポケットに意味もなく手を入れる。
「よっ、今帰り?」
「あっ、うん」
学校を出てすぐの横断歩道で声を掛けられた。束の間の白昼夢から引き揚げられたみたいだ。一人で居る時よりも、誰かといる方が、俺は嬉しい。それも、片想い相手の子に話しかけられたら猶更だ。
普段、話さないのにな。
ちゃんと可愛くできてるかな。
「なんか違うね。髪切った?」
「よ、よく気が付いたね。俺、今日初めて言われたよ」
「ふふん。今日はいつもより可愛かったから」
あ、青だ。
その子がすたすたと歩いて行く、車輪の世界が止まる時間。
高鳴る胸のせいで、俺の時間も止まって、耳が熱い。
「どうしたの」
「あっ、いや」
ひょこ、と俺の顔を覗かせ、微動だにしなくなった俺の手を握って、その子は横断歩道を行く。
「一緒に行こ」
そんな背中がかっこよくて、どうしようもなくて――。
「う、うん」
俺は、笑った。
ここまで読んでいただきありがとうございます。