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新たなる宇宙シリーズ

宇宙の再結合

作者: 尚文産商堂

メフィストフェレス神が、この世界に再び現れたのは、いったい、いつの事だっただろうか。

ファイガン暦37592年の今。古代の神々が復活し、スタディン神達は、どこかへ消えた。


そもそもの発端は、白の者と黒の者が合わさった事による世界崩壊であった。

世界は、疫病、戦争、災害などによって、痛めつけられていた。ファイガン暦4125年だった。

当時、この世界に住んでいた者達は、新たなる神の来訪を祈っていた。そして、現れたのが、メフィストフェレス神だった。

彼は、旧来の神々を復活させることを目的として、この世界を訪れたのだったが、住人は、スタディン神を追放するように頼んだ。

メフィストフェレス神はそれを実行し、旧来の神々である、カオイン神、ガイエン神、エクセウン神、アントイン神、サイン神、カオス神、イフニ神を、第18銀河の神々から分離し、さらには、彼らがいた宇宙空間をこの世界とつないだ。こうして、恐怖政治が始まった。


メフィストフェレス神は、自らの経典を作り、従わないものに対し神罰を与えた。

さらに、各宇宙空間に対して神を頂点とし、全ての権力を掌握するシステムを構築し、圧政を敷いた。人民は、最初の数年間は反乱を組織したが、神はすぐにそれを見抜き、すぐに制圧された。

ファイガン暦は廃止され、新たに暦が作られた。メフィストフェレス暦は現在、35894年。

メフィストフェレス神自身が、経典を作った日を元年とし、暦を作ったのだ。

しかし、人々は、スタディン神達に戻ってきて欲しくて、いまなおファイガン暦を併用していた。

メフィストフェレス神は、そういう彼らに対し、強行的に自らの経典を押し付け、さらに、教育に対して、自らの事以外は全て悪であるという感覚の教育をした。

メフィストフェレス神は、第1宇宙空間から第8宇宙空間まで、特に、前から神がいた宇宙空間はいいのだが、第8宇宙空間全体を治める神がいない以上、メフィストフェレス神がその統治に当たった。


それぞれの宇宙空間を統一した後、全ての宇宙空間を統合する意味で、全宇宙空間統合連邦国を樹立した。

宇宙空間を一つの国として、計8つの国を、そのまま一つにまとめる国であった。無論、その国の国家元首は、メフィストフェレス神だった。


「さて、我が臣民はどう言う調子かな?」

もともと、スタディン神の神殿があったすぐ横に、巨大な塔を立て、そこに、メフィストフェレス神はいた。

元々の神々の神殿からのエネルギー供給は止まって久しい。圧政下では言論の自由などなく、一言神について悪口を言うものならば、即刻連行され、そのまま、銃殺と言う事だった。

「現在の所、約32000年間、何事も起きずに推移しております。メフィストフェレス暦35894年時点では、人口は、人口抑制政策及びそれを実行する法律の効力により、全宇宙で、約200億人となっており、なおかつ、原住民族については、すでに、絶滅が確認されております。しかしながら、わずかながらも残党がいる可能性は排除できません」

神の座っている高級本皮の椅子のちょうど横に、メフィストフェレス神の補佐官がいた。彼は、強制的に補佐官にされたのであって、前任者は、残酷に処刑されていた。

「その任に当たっているのは、誰だ?」

「全宇宙空間について、サヴィア神がその任に当たっております」

「そうか、あいつならば、大丈夫だろう。他に報告は?」

「はい。現在、出産希望者がおります。今まで出産経験のない母親で、名前は、オーポ−ト・クシャツリと言います。父親はオーポート・スクディンで、第8宇宙空間第2銀河団全域にまたがる会社の社長です」

「社名は?」

「はい。社名は、オーポート・カルテルです。超多角経営で、現在の年間収益は、6兆3000億SCCです。現在の所、子供はおらず、双子を妊娠中です」

「そうか、ならば、大丈夫だな。書類を取ってくれ」

補佐官は書類をすぐに差し出し、それを確認しながらサインしている神を見ていた。

「人口抑制計画による出産許可証。これがあるからこそ、臣民どもの反乱を食い止められると言うもの。我ながら素晴らしいアイデアだったな。ああ、そうそう、俺がいない時に、とある場所から出頭するようにいわれるだろう。そうしたら、そこにお前が行け。分かったな?」

「分かりました」

「そう、それでいい」

そして、ひとしきり笑うと、補佐官に書類を渡し、どこかへ消えた。


「許可が下りたわよ」

オーポート・クシャツリは、そう言って、夫であるスクディンに渡した。

「メフィストフェレス神自体はなんと言っているんだ?」

「何も。ただ、補佐官が書類を渡しに来ただけ」


そして、出産した。男女の双子だった。名前は、男の子をニスダットと女の子をラスコフトと言う名前にした。


それから、10年が流れた。世界は、大きく変化などするわけもなく、ただ、ゆっくりと流れて行くだけだった。


この年、初めてラスコフトとニスダットは同じクラスになっていた。

そして、神学の授業中、先生が招いて、特別講師として来たのは、神を除いて全宇宙最高年齢の、ファイガン・スクレンだった。

現在の年齢は、34890歳で、神に対して忠実だと言う理由で、永久の命を約束されていた。さらに、模範市民の称号も受けており、彼に対する行為は、神に対する行為ともいわれるほどだった。

「さて、今回彼をここに招いたのは、神について教えてもらうためです。では、スクレンさん。どうぞ」

教室には、つまらなさそうに講義を受けている、男女合わせて30人の生徒がいた。

教室の一番前は少し高くなっており、その上に立ち、言いはじめた。

「さて、皆さんは、神についてどれだけの事を知っていますか。そもそも、現在のような状況になったのは、皆さんが生まれる遥か昔の、今から、35904年の昔の事。その時、さまざまな災害が発生しており、それらは全て、当時いた18神、今や禁句とされているが、全てのことを伝えるためには、彼らのことも伝えなければなりません。さて、この中でその神々の名前をいえる人はいますか?」

スクレンが教室を見渡すが、先生を含めて誰も手を挙げなかった。

「そうですか、やはり誰もいえませんか。いいでしょう。この機会ですから、教えておきましょう。元々の神々とは、スタディン神、サトミ神、ユウタ神、オールド・ゴットの4柱神を中心として、クシャトル神、ナガミ神、ショウヘイ神、カナエ神、サダコ神、アユ神、クニサキ神、タカシ神、クリオネ神、ヒデキ神、タマオ神、ミント神、レモングラス神、ハーブ神の計18人いました。しかし、彼らは、オールド・ゴット以外、皆追放されてしまいました。その追放の時起こった一連の出来事のことを、現在、「第1次大異変」と言われている事なのです。彼らが今どこにいるかは誰にもわかりません。そもそも、第1次大異変自体は歴史ですぐに終わる単元なのですが、それ以前の数十年間の災害の数々を起点として、神々の追放を終点としたこの年代をさす単語だったのです。神々の空白を埋めるために、現れたのが今の神である、メフィストフェレス神です。今の最高権力者である彼は、当時、この宇宙に住んでいた人々にとても喜ばれたそうです。それもそうでしょう。神々が起こしたと言われる第1次大異変初期の、言語を絶する災害の数々の張本人を追放したと思っていたから。確かに、災害は終わりを告げました。しかし、その直後にすぐに「第2次大異変」がおきます。それが、この宇宙以外で生き残っていた宇宙間の結合のことです。現在、第8宇宙空間を中心として、第1から第7までが繋がっています。この、今我々がいるこの宇宙が、第8宇宙空間といわれる宇宙です。しかし、それ以前に栄えていたであろう、それぞれの宇宙の文明の一部は既に消滅している所もあります。さらには、名前のみがあり、実際は存在しないところもあるのです。第1宇宙空間がその好例でしょう。さらに、第3宇宙空間も誰も住んでいません。第6宇宙空間も存在していません。その宇宙空間がどうなったかは、誰も知りませんし知りたくないでしょう。現在、神と共に高度知性生命体が住んでいる宇宙空間は、第2、第4、第5、第7、第8だけとなりました。神も滅び去り、その神がいたと言う証拠は、元々のオールド・ゴットの中にしかいないという神もいます。それが、イフニ神、サイン神、ガイエン神の3柱です。彼らは、帰る場所がなく、人の生活に溶け込んでいると言いわれていますが、彼らの姿を見た者は誰もいません。神は人の前に出ることを極力避けると言う伝承がありますし、仮に出る必要が出てきた時には、その時点で生きている人の中で神になる可能性がある存在がいると言う事らしいです。第2、第4、第5、第7宇宙空間には、それぞれ、カオイン神、カオス神、エクセウン神、アントイン神がおり、この、我々がいるこの第8宇宙空間には、メフィストフェレス神がいます。彼は、我々の宇宙と前に存在していた宇宙空間をつないぎました。その衝撃は、両宇宙中に広がり、結果として、人口は1/100にまで減少しました。これが、第1次、第2次大異変のあらましとなります。さて、それを踏まえた上で、私の神についての話を聞いていただきたい」

みんなは、何も音を出さなかった。先生ですら知らない話であり、今まで神々が封印し続けてきた話だった。

「さて、まずは、なぜ神々の神殿があるかだが、この宇宙空間には常に巨大な収縮力、つまり、縮こまろうとする力が働いています。その力は、神が放出している力、神力によって生み出されている反発力によって、宇宙は広がりもせず縮こまりもせず生きてこられたのです。そのエネルギーを放出していたのが、元々の神々の神殿に住んでいたそれぞれの神々です。今は、それぞれの宇宙空間の神々の神殿から出しています。この宇宙空間を例にしてみましょう。この第8宇宙空間にはメフィストフェレス神がいます。彼は、現在の神の最高神であり、彼が全ての実権を握っています。さて、この宇宙空間でエネルギーが放出されている神殿は、スタディン神の神殿のちょうど横に建てられた建物となりますが、しかし、メフィストフェレス神のさらに上にいる神の存在を、君達は知っていますか?」

誰もが、首を横に振った。

「さすがに、誰も知らないですね。その名前は、時の神と呼ばれている事だけが伝えられている神です。その神は、光を生み出し、時を動かし始めた神だったと伝わっています。その神が、世界で最初の神であるメフィストフェレス神を産み出したそうです。さらに、神が神を作ると言う権限を与えたのも、この時の神であったと言われていますが、この神は、時間を自由に操れたので、好きなように進めたり戻したりし続けました。さて、光があるならば、闇も出来る。それが、この世の必定です。その時の神の影から生まれたのが闇の神といわれる神です。闇の神は、時の神の双子のような存在で、時間を調整する役目を任されていました。時の神が動かしている時間を、闇の神が調整している状態です。その結果、光の速度や時間の進み方は一定となることが可能になったのです」

ここで、チャイムが鳴った。先生が教室の一番後ろから前に歩いていって、

「では、みなさん、今日の授業はこれでおしまいですので、そのまま帰宅しましょう」

しかし、スクレンが、ニスダットとラスコフトを呼んでもらうように頼んだ。誰もいなくなった教室に、3人が対面して座っていた。

「さて、さっきの話を受けて、どう思った?」

「どうって、そんな唐突に聞かれても…」

ニスダットがうろたえた。

「私は、神という抽象的な存在が、逆に本当に存在するのか不安になった」

ラスコフトが言った。

「そうか、どう不安になるのかな?」

スクレンがたずねた。

「だって、そこに存在しているのは分かっているのに、つかむ事が出来ないもののような感じで、そんな時、なんとなく不安になるでしょ?」

「そうだね。それはそうと、君達は、名前の綴りを気にしたことはあるかな?」

「僕達の、名前の綴り?」

「そう、ちょっと、黒板に書いてみてよ」

ニスダットは、Nisdat、ラスコフトは、Lascohtと綴った。

「やっぱりね。これはちょっとしたゲームだよ。これをちょっと入れ替えると…」

その綴りの横に、スクレンは新しい綴りを入れていく。ニスダットには"Stadin"、ラスコフトには"Cshatol"と書いた。

「これは、スタディン神とクシャトル神の綴りと同じなんだ。君達は、神の代理人として生まれてきているんだ。君達のお母さんとお父さんは、オーポート夫妻だったね」

「うん、そうだけど…それがどうかしたの?」

ニスダットが聞いた。

「そうだな…今日、君達の両親が少しの間いなくなる。それについておいで。ファイガン・ネビスの実子である、スクレンが許可を出したから大丈夫、と言えば、問題ないから」


その日の夜、午後8時ぐらい、帰ってからすぐにその事を話すと、微笑みながらその会合に連れていってくれた。連れてこられたのは、スクレンの家だった。玄関のベルを3回押すと、内側から扉が開いた。

「ああ、君達か。どうぞ、入って。他の委員達はみんな来ているから」

「お母さん、委員って?」

「入れば分かるわよ」

そのまま、4人は中に入った。


中は、電気一つ付けていなかったが、不思議とぼんやりと見えた。

「やっぱり駄目だわ。何にも見えやしない」

クシャツリが言った。

「そうだな、ここの家の闇は特別だからな」

スクディンが言った。

「え?なんで?ぼんやりとだけど見えてるのに…」

「やはり、お前達は、神の子だよ」

そう言って、地下室に入っていった。いや、正確には、地下室と思われる部屋だった。まわりが、ぼんやりとしか見えてなかったので、感覚的にしか分からなかった。


突然、明るい所へと出た。4人は目を覆った。

「ここは?」

ラスコフトが聞いた。

「ここは、正史調査委員会。私達は、二人とも、この委員会の委員をしているの」

クシャツリが答えた。

「え?正史調査委員会?なにそれ」

ニスダットが聞いた。部屋の真ん中には、一つのテーブルと、周りには、いくつかの椅子と、さらにそれに座っている人がいた。テーブルの上には、謎の色つき水晶玉が置いてあった。

「君が言っていた神の子と言うのは、この二人の事か?」

「伝説によれば、「陰と陽の者現れ、秩序を構築する。彼らこそ、新たなる神々なり」と言うが、彼らが、陰と陽の者か」

「え?ちょっとまって?これ、どういう事よ」

ラフコフトがスクディンに聞いた。スクディンは、とある伝説を言い出した。

「「光の力を持つものが現れる時、光が勝利する。されども、闇の力を持ちし者と合わさりし時、世界は崩壊へと突き進む。さりとて、秩序無き混沌の時代、陰と陽の者現れ、秩序を構築する。彼らこそ、新たなる神々なり」これから分かる事は、光の力を持っている人が現れた時には、光が勝つ。しかしながらも、闇の力を持っている人と一緒になった時、世界は崩壊する。恐らくこれが言っているのは、第1次大異変と第2次大異変の事だろうね。その後、秩序がない混沌の時代に、陰と陽の人が現れて、秩序を再び作る。彼らこそ、新しい神々だ。そう言う事だ。陰と陽というのは、男女の事。君達は、双子の姉弟。さらに、これは君達には言っていなかったが、そのテーブルの上に置いてある水晶玉は、スタディン神が残したものだ。委員長でもある、ファイガン・スクレン氏は、真実の神調査委員会の委員でもいる。その委員会は、スタディン神を筆頭とした、18神がどのような存在だったかと言うのを調べる会だ。無論、メフィストフェレス神にばれたら、一発で極刑だ。だから、全ての銀河に一つ、このような組織を作り、それぞれが元々の神々に守られると言う仕組みを作り上げた。それが、いわゆる裏組織だ。これらは、現在の神に発覚されないように、さまざまな措置をとっている。だから、絶対に発覚する事はない」

「それと、その水晶玉と、何の関係があるの?」

ニスダットが言った。

「ああ、そうだったな。さて、お前達を産む前、そもそも、妊娠が分かる前日、それまで1回たりとも輝いた事がない事が確認されているこの水晶玉が、突然光を発し始め、何者かが現れた。それが、スタディン神だった。第1銀河系を最初に統治をしていたのは、スタディン神だったのだ。彼は、クシャツリを指差してこういった。「こいつは、我が兄妹の化身となる存在を妊娠しておる」。その翌日の検査で、本当に、双子を妊娠している事が分かったんだ」

「それで、僕達が、神々の名前を持っているわけですね」

「そうだ。既に、委員長から聞いたと思うが、ラフコフトが、クシャトル。ニスダットが、スタディンだ。すでに、所属する全ての委員会において、同様な事例が報告されている。だが、報告されていないところもある。むらがあるが、合わせると、18人いるのだ。メフィストフェレス神を除く全ての神々、但し、現在のイフニ神などの神は合わせて一人だ。メフィストフェレス神自身の化身は存在していない。未来に現れるかもしれないが、今の所は、確認されていない」

そして、全員がテーブルの周りに座った。ただ、ニスダットとラスコフトの分の椅子は、テーブルの周りにおく場所がなかったため、クシャツリとスクディンの後ろに置かれた。二人は、両親の隙間から委員会の様子が見る事が出来た。その時、備え付けられている電話が鳴った。

「はい、第8宇宙空間第1銀河正史委員会委員本部です…え?本当ですか?ええ、第18銀河系…男女の双子の予言…分かりました。伝えます」

電話を置き、こちらに向かって言った。

「第18銀河系正史委員会本部よりです。つい先ごろ、神の宝玉が発光し、19人目と20人目の双子が産まれます」

その事は、一同の空気を重くした。しかし、その事が理解できていないニスダットとラスコフトは両親に聞いた。

「ねえ、それって、どういう事?」

スクレンが立ち上がり、言った。

「すまないが、前期神の書を持ってきてくれ。それと、神々の系統図、あとは、紙とペンだな」

「それと、真実の神の書も持って来てくれ。子供達に教えないといけない」

そして、テーブルの上には、スタディン神の宝玉と、紙とペンと古い本が2冊と比較的新しめの紙が一枚置かれた。

「いいか、ここであった事は、誰にも言ってはいけないし、誰にも伝えてはいけない。どんな事があったって、それが守れるね」

幼い姉弟は顔を見せ合い、うなずいた。

「絶対だよ」

そして、両親は、話しはじめた。

「今いる神の名前、全部言えるかな?」

「え?え〜っと…」

ニスダットが悩んでいる横で、ラスコフトが全部言った。

「イフニ神、カオイン神、サイン神、カオス神、エクセウン神、ガイエン神、アントイン神、それに、メフィストフェレス神でしょ」

「そう、その8神ともう17神いるんだけど、そっちも言えるかな?」

今度は、ニスダットが答える番だった。

「スタディン神、クシャトル神、ナガミ神、ショウヘイ神、カナエ神、サダコ神、ユウタ神、アユ神、クニサキ神、サトミ神、タカシ神、クリオネ神、ヒデキ神、タマオ神、ミント神、レモングラス神、ハーブ神だね。でも、それがどうかしたの?」

「そう、それが重要なんだ。さて、ここに、前期神の書という本がある。これは、元々の神々である、後で言ってもらった方の17神になるんだけど、彼らのつながりが書かれているんだ。さらに、これに神々の系統図を加えると、兄弟姉妹や、家族が入っている事がよく分かる」

「どういう事?神様って、それぞれがばらばらで生れたんじゃないの?」

ラスコフトがスクディンに聞いた。

「それが定説になっているけどね」

ずっと説明を続けていたスクディンがさらに続ける。

「さて、真実の神調査委員会が出した結論と、さらに、これらの古文書を読み解いた結果、分かった事は、まず、スタディン神とクシャトル神はスタディン神の方が年上の兄妹である。それに、最も神になった時期が早いんだ。次になったのは、ナガミ神、ショウヘイ神、カナエ神だ。彼らは、友達のような関係でしかなかった。しかし、宝玉の事に巻き込まれ、神々が保護をして、当時の第8宇宙空間を統治する事になった神だ。年令順に並んでいるようだな。最後は適当だ。まず、サダコ神とアユ神とユウタ神とクニサキ神とサトミ神が友達だ。さらに、サダコ神とタカシ神は姉弟の関係にある。それに、サダコ神とタカシ神の両親がヒデキ神とタマオ神だ。最後のクリオネ神は、サダコ神達の先生に当たる人らしい。それが判明している。さらに、分かった事もある。メフィストフェレス神や他のオールド・ゴット達の上に存在する、新たなる神の存在だ。彼らは、時間を決めた時の神と、その時間や光の進み方を一定にする闇の神がいる。その二人が今存在する全ての神々の基礎となっているのだ。実際には、それ以上の神々もいると言う噂なんだが、それはまだ確認されていない」

「じゃあ、その二人がいなかったら、この世界は…」

「存在しなかっただろうな。メフィストフェレス神は、完全に彼らが創った神だと推定することができる。しかし、それ以外は、さまざまな神々が創った神になる。まあ、こんな知識も、知らなくても構わない内容だ」

「それで、それと19人目と20人目の子供に何の関係が?」

ニスダットが聞いた。

「なんだ。ここまで話を聞いて、理解していなかったのか?」

スクディンが言った。

「メフィストフェレス神の子供と、時の神か闇の神かの能力を持った子供が、この世に生れるんだ。時の神か、闇の神かで、世界は大きく変わるだろう。そう言えば、伝説の本をちょっと貸してくれないか?」

「ああ、いいとも。これだ」

スクレンが渡したのは、非常に古い本だった。

触ればすぐに崩れてしまいそうだった。

「えっと、ああ、これだ。読むぞ。「始めに時の神有り。時の神「時よ進め」と言いし時、時、動き出す。時の神「光よ動け」と言いし時、光、動き出す。さりとて、光、動き出す時、闇、生れる。時の神「時よ止まれ」と言いし時、闇より産み出されし神「時よ留まる事を知らずして、永久に進みたまえ」と言う。時の神「光よ止まれ」と言いし時、闇より産み出されし神「光よ留まる事を知らずして、永久に進みたまえ」と言う。時の神「誰ぞ」と言いし時、「我、時の神の分神、闇の神なり」と言う。時の神「時よ止まれ」と言う。さりとて、時、留まらず、時の神「光よ止まれ」と言う。さりとて、光、留まらず。闇の神「我が力、時、光、留まらず。永久に動き続ける」と言う。時の神「我が力、奪いし時、この世に災い起こる。我が力は時なり。光の者産み出されし時、この世に光満つ」と言う。闇の神「この世に闇のもの産み出されし時、この世に闇満つ」と言う。時の神「さりとて、光の者、闇の者合わさりし時、この世界秩序、崩壊されよ」と言う。闇の神「さりとて、陰と陽の者生まれし時、この世の秩序、再び動き出す」と言う。それを以て、神々は合意す。しこうして、神、二人に分かれ、それぞれの道、歩みだす」と言う事だ。要約すると、時の神が時と光を動かして遊んでいたら、闇の神が出てきて、永久に一定の速度で動くようにした。それに怒った時の神は、力を奪った時には、災いが起きると言って、光の人が生まれた時には、この世界に光が満ちると言い、闇の神は、闇の人が生まれた時は、この世界は闇に満ちると言った。そして、光と闇の二人が合わさると、世界の秩序は崩壊する。しかし、陰と陽の二人が生まれた時、秩序は回復して、再び世界は動き出すという内容だ」

「その伝説の中に出てくる陰と陽のものって、それが、私達の事と言う事?」

ラスコフトが言った。

「そう言う事だ。ま、伝説は伝説だがな。この本は、その後、どうやって前の宇宙が出来たか、どうやって今の神々が生まれたかが載っている。今は言わなくてもいいだろう」

ニスダットがそこまで言うと、再び電話が鳴った。「はい、第8宇宙空間第1銀河……あ、中央評議会ですか。はい、既にその情報は入っております…ちょっと待ってください。それだと、二人をそちらに渡せと、そう言う事ですか?分かりました」

そして、電話を置いた。こちらを見て言った。

「ニスダットとラスコフトは、全世界正史委員会中央評議会に出頭せよとの事です」

「全世界正史委員会?何よ、それ」

ラスコフトが言った。

「とうとう動いたか。いいか、ラスコフト、ニスダット。君達は、中央評議会に出席する事になる。10歳になったのは、君達だけだからな。それに、中央評議会の代表権は、現代の年齢換算で10歳だ。君達は、第1銀河系本部代表となる。ああ、学校の方は心配する事はない。彼らにはすぐに君達の事を忘れるだろう。戻ってくる時までな…」

スクレンが言った。

「さあ、もう時間だ。そろそろ扉が開く。そうすれば、君達は向こうの世界に行く。詳しい事は、向こうの人に聞くが良い。答えてくれるだろう…」

そして、目の前に、青い光が現れ、木製の扉が現れた。

「最後に、これを持って行くがいい。餞別だ。君達が帰ってくる時には既に我々は生きてはおらぬ可能性がある」

餞別として渡したのは、袋に入った何かだった。そして、何も聞かずに二人の背中を押し、開かれていた扉の中に入れた。二人が入ると同時に、光は最高潮を向かえ、それが消えると同じように扉も姿が消えた。

「がんばれよ…ニスダット、ラスコフト…」

スクレンは、扉があった位置をずっと見ていた。


二人は、扉を通ると、そのまま、道をずっと通っていった。その道は、時に曲がり、時に直進し、続いていた。外に出ようとすると見えない壁があり、出れなくしていた。


歩き続けると、建物があった。その横には通話管があり、そこに近寄り言った。

「オーポート・ニスダットとラスコフトです。第8宇宙空間第1銀河正史調査委員会より来ました。この扉を開けてください」

いい終わると、すぐに扉が開いた。向こう側から声が聞こえた。

「入りなさい。扉は既に開かれている」

二人は中に入った。入ると、扉はひとりでに閉まった。


扉が閉まると、中が明るくなった。見ると、半円状の机と、誰かが座った椅子と、その机の前におかれた数脚の椅子があった。

「まず、君達から見て左端から、ニスダット、ラスコフトの順で座りなさい」

そして、座ると、また扉が開いた。

「第8宇宙空間第2銀河正史調査委員会から来ました。井東長見、澤田翔平です」

「君達は、今座っている彼らのすぐ左に、長見、翔平の順で座りなさい」

さらに扉が開いた。

「香苗、定子、裕太、香魚、国崎、聖美、崇志、クラエンの順で座りなさい」

さっきからずっと同じ人が指示を出していた。最後に扉が開いた時、

「秀木、玉尾、ミントン、グラレモンス、ハーブの順で座りなさい」

と言った。そして、ニスダットは、ふと、18脚の椅子が半円状の机の向こう側に余っている事に気がついた。その途端、誰かが扉も開かずに入ってきた。

「やれやれ、既に全員揃っていたか」

「当たり前じゃない、お兄ちゃん。だって、ずっと遅かったし」

「着替えに手間取っていたからね」

「あ、着替え現場覗いていたのか?覗きだぞ」

「そんな事どうでもいい。とにかく、今はそんな場合ではないだろう?」

「そうだな。では、みんな、席は分かっているな」

「当然」

「じゃあ、座ってくれ」


彼らが席に座ると、不思議と落ち着き始めた。

「あなた方は?」

「自分達は、追放された神々だ。君達の力の源にもなる。ちょうど、君達から見て左側から、自分、スタディン神、クシャトル神、ナガミ神、ショウヘイ神、カナエ神、サダコ神、ユウタ神、アユ神、クニサキ神、サトミ神、タカシ神、クリオネ神、ヒデキ神、タマオ神、ミント神、レモングラス神、ハーブ神だ。君達の名前も同じ者や近い者があるだろう。それぞれの名前と、神の名前は相対関係にあり、それぞれ相対関係にある神から力を得ている。それに、もう間も無く我々に力を与えた者達が来るだろう。彼らは、昔の宇宙空間を作り上げ、それらを統治した神だ」

その途端、扉が開いた。


一陣の風と共に、8人の影が見えた。

「彼らは、オールドゴットを構成していた神々と、メフィストフェレス神だ。無論、彼らは代理人を立てたようだがな」

オールドゴットとは、スタディン神が作った宇宙の前に存在していた宇宙空間を治めていた、イフニ神、カオイン神、サイン神、カオス神、エクセウン神、ガイエン神、アントイン神の事で、メフィストフェレス神は、それらの頂点に立つ神だった。扉が閉まると同時に、新たなる椅子が出されていた。それは、半円状の机の両脇にあり、全てがこちらを見ていた。

「さて、なぜ、我々、旧来の神を呼んだのかを聞かせてもらいたい」

イフニ神がいった。

「しかし、その前に、元始の神を見ていただきたい。どうぞ、お入りください。時の神「ジョアー」神よ。闇の神「ウィネ」神よ」

そこを見ると、二人の人間が入ってきていた。彼らは、それぞれ、黒色と白色の服を着ており、服と同じ色をした杖を持っていた。

「バカな。時の神と闇の神だと?今まで、誰もあった事がないではないか。なぜ、ここにいるのがその二人だと言える」

メフィストフェレス神の代理人が言った。イフニ神達も口々の同じような事をいった。

「ならば、我々の力を見せよう」

いうと、光の速度が落ちたような感覚がした。時が止まりそうになった。しかし、それぞれは今までと同じ速さで行動できた。

「これが、神の…」

音の早さも遅くなり、とうとう、互いの表情さえも緩慢に見えるようになった。音が聞こえなくなり、光が、時が、止まった。


それは、全ての世界で起こっていた。全ての者の行動が、全ての物質が、例外なく遅くなった。そして、完全にその速度を止めた。世界は、止まった。


その中で、時の神と闇の神は動いていた。

「我が名はジョアー。古の惑星、第1宇宙空間太陽系第3惑星にて、初めて人類を作り出したイフニ神らの力の根源。我らなき場合、神、姿現す事叶わず、神、力生み出す事あたわず」

「我が名は、ウィネ。古の力、神の力の根源。我々無くして、世界はならず、我々無くして、神はならず」

「どういう事だ…体が…動かない…」

メフィストフェレス神がその場に現れた。さらに、イフニ神、カオイン神、サイン神、カオス神、エクセウン神、ガイエン神、アントイン神も現れた。

「ようやくお出ましか」

ジョアー神は、再び時の早さを戻した。ウィネ神も、それを許可した。光の速さも元に戻り、全てが復元された。

「なぜ、ここに、ジョアー神とウィネ神が?」

「メフィストフェレス、お前を生み出した事こそ、我々の過ち…全ての種族は我々の力を蝕む…」

「お前の役目は既に終わった。今や、お前に神の名を語る資格などない。早々に、往くがいい。我々の力が届かぬ場所、神々の墓場である、オメトルに行くが良い…」

目の前で、メフィストフェレス神の姿が消え始めた。

「いやだ、あそこにいくのは、いやだ!」

「あきらめよ。我らは常にお前を見ておる」

その時、扉が開かれた。

「すいません、なんか、呼ばれたんで来たんですが…」

それは、子供だった。

「誰だ?」

「オールド・ゴットの力を受け継いだと予言された、オートと、その妹、メフィストフェレスです。さらに、道中であった、ジョーアとウィネです」

スタディン神は、座っていた椅子から勢い良く跳ね上がり、

「全ての神とその力を受け継いだものがここにそろった」

「予言は、ここで成就する。我々は、ジョアー神とウィネ神なり!」

「させるか!」

メフィストフェレス神が、一瞬で来た隙を縫って、沈んでいた深みから脱出した。

「この俺がオメトルに行くものか!行くぐらいならば、全世界を道ずれにしてやる!」

「やめろ!それをするといかなる種族も行き残れなくなるぞ!」

「構うものか!俺の命の方が重要だ!」

その瞬間、誰かが空から降りてきた。

「おやめなさい、メフィストフェレス。見苦しいですよ」

優しいその言葉は、全ての者の心に響いた。

「あなたは?」

ニスダットが聞いた。他の人や神々は、その姿に見とれていた。上から光り輝く階段が現れ、それを通り、建物の中に降りてきた。

「私は、ジョアーとウィネを作った神、この万物を作る事を命じた神、全ての悪の根源である神、全ての善の根源である神、全ての混沌の根源である神、全ての秩序の根源である神、全ての生き物の神、全ての死する物の神、我が名は「マギウス・レメゲトン」。即ち、全ての存在を超越した存在」

「マギウス、レメゲトン。神を作りし存在。しかし、なぜそのような方が、この場に?」

「全球に対して非常に激しい揺れが響いてきました。それの発信源は、ここだったので、何をしているか見ていると、メフィストフェレスを、オメトルに行かそうとしているところでしたので、何事かあったのと判断して」

「そうです、ジョアー神と、ウィネ神が、私が、神としての品格がないというものですから…」

「そうですか、では、ジョアー神、ウィネ神。それらと判断した要因は?」

「単純な事です。ここに彼らを呼んだ理由のひとつです。全ての宇宙空間を、一つにつなげ、人類及び、当時生存していた種族の多くを絶滅に追い込み、さらに、それぞれの宇宙空間に自らの腹心の部下として、神々を派遣し、人々を苦しめ続けました。さらには、スタディン神を追放処分にし、自らがその座に居座りました」

「なるほど、では、スタディン神は、そのことについてどう考えているのですか?」

「はい、自分は、確かに、まだ若い神です。しかし、神として世界を動かす事が出来るほどの権力については、手放しがたい衝動に駆られているのも、また、事実です」

マギウス神は考えた。

「ならば、こうしましょう。メフィストフェレス、もう一度機会を与えましょう。我が名に於いて、一つの宇宙を与えましょう。しかし、その宇宙は外部と完全に隔離され、いかなる干渉も受けない代わりにいかなる干渉も許しません。さて、それぐらいにして、それぞれの神々は元に戻ったり、元のように統治してくださいね。私は、元の世界にもどらさせてもらいます」

そして、彼らをおいて、光り輝く階段に乗り、そのまま戻っていった。


気がつくと、メフィストフェレス神もいなくなり、イフニ神達は、再び、オールドゴットとなっていた。そして、委員会に呼ばれた子供達は、そのまま返される事になった。伝説は、成就されたかどうかは、未来の人が決めるだろう。


宇宙は再び平穏が訪れた。戻ってきた子供達は、神の子と呼ばれ、全ての宇宙の統合的存在とされた。そして、この平穏期に、全宇宙空間統合連邦国が解体され、宇宙連邦国が再組織された。


メフィストフェレス暦から再び、宇宙連邦暦、つまり、ファイガン暦に戻り、数年が経った。世界は、やはり、予言が成就されたと思っていた。そして、スタディン神達は、再び元のように治世を始めていた。


ファイガン暦37692年。この年は、ファイガン暦に戻ってから、50年目に当たる年だった。50年前、メフィストフェレス神がいなくなった直後に発生した第3次大異変により、世界は崩壊の危機に立たされていた。しかし、それを立て直したのが、スタディン神を筆頭とする、追放されていた神だった。そして、彼らは歓迎されていた。繋がっていた宇宙空間は、再び外そうとしていたが、それをすると、世界が今度こそ滅ぶ恐れがあったので、とりやめにした。そして、時代は、再び、動いて行くのだった。


神の子達と呼ばれるようになった、中央評議会に呼ばれた子供達は、それぞれの名前が指し示す神殿に行き、神殿がない場合は、スタディン神の神殿に居候させてもらい、天寿を全うしたそうだ。

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