第三話 真夏の蚊にはご用心
今回はキャラクター性を伝える部分以外の無駄シーンをなるべく削るよう意識してみました。
とはいえ、未熟ゆえ不完全だと思いますので、思う点がございましたらお気軽にお書きください。
さて、仕事を受注する前にギルドから「何も装備がないのもかわいそうだ」と
まさにゲームのキャラみたいな革の装備一式と鉄製の剣と盾が渡された。
(俺もコスプレするのか...)
更衣室に入り、早速胸当てやらすね当てなどを着ける...
(お、重い...!!)
総重量はせいぜい10㎏あるかないかだと思うのだが、
運動不足の俺の体には重すぎる。
とりあえず胸当てだけを残し、他は諦めた。これだけでも重いが...
言い忘れていたが、今の恰好は制服だ。制服に革の胸当てって...
次に剣と盾を手に取ろうとするが、持ち上がらない。
両手でなんとか剣だけは持ち上げられたが、これを携帯して動き回りたくはない...
結局剣と盾も返却した。
(本格派だな...何もほんとの鉄で作ることもないだろ...)
更衣室から出ると彼女はちょうど仕事の受注を済ませ、こちらへ向かってきた。
「あら、おそろいね。」
彼女が一言発した。
確かに、俺は白のカッターシャツ(俺は夏でも長袖派)に革の胸当て
ディアブラも白の長袖(よく見ればフリルなんかついてる)で革の胸当てだ。
(まぁ。よく見れば俺のと彼女のでは胸当てのデザインに違いはあるが)
「あ、すみません...」
風のうわさだが、女子はファッションに敏感だと言う。
俺とおそろいなど反吐が出るだろう...そう思ってしまう卑屈さが悲しい。
「何を謝ってるのか知らないけど、剣とかは?」
彼女は得に気にも留めない様子だ。
もっと怒りっぽい性格だと思っていたが...読めないな。
「あ、剣は...その...おm、重くって...」
しかしろれつが回らない。
これからもしばらくはついていくことになりそうだし、
早くコミュ障状態は脱却したいな。
「そう、まぁいいわ。あんたは戦わなくてもいいし。」
さっきから魔物退治だとか言ってるけど頭大丈夫なのか?
「仕事はもう取ってあるわ。『モスキュートの駆除または安全確保』。」
モスキート?たしか蚊だよな...?蚊の駆除って...
「簡単な仕事だけど、初仕事だから仕方ないわね。行きましょ。」
彼女ははや足でギルドを出た。
俺も急いで彼女を追いかけた。
◇
ギルドが出してくれた馬車に乗り、大通りを通り抜ける。
(ほんとにゲームみたいだな)
しばらく走ると景色が変わってきた。
建物は一気に減り、のどかな緑が広がる。
さっきまでが中心街でここはその外れの郊外だそうだ。
物珍しそうに景色を眺める俺に、馬車の手綱を持つおっさんが教えてくれた。
(いい景色だな...)
少しひたっている間に目的地に着いたようだ。降りるよう促される。
馬車を降りると、落ち着いた雰囲気の小規模な村だった。
ディアブラは降りてすぐにはや足で歩きだし、聞き込みを始めていた。
俺も一応聞き耳を立てる。
「ギルドから派遣を受けて来ました、ディアブラです。モスキュートの件で聞きたいことが...」
彼女の聞き込みで得た情報を整理するとこうだ。
・モスキュートは吸血魔物でありどこからかやってくる、家畜がその被害に遭って死んでいる。
・このままでは村の存続にも関わりかねないので何とかしてほしい。
・モスキュートは夜中にやってくるため、その頃家にいる村人達はまだ直接被害には遭っていない。
・しかし、放っておけば間接的に食糧難などで死にかねない。
なるほど。もうさっきからあんまり考えないようにはしていたが、
この国ではもう魔物って言葉は当たり前に使われているらしい。
異文化ってやつか。
あとは、蚊で家畜が死んでるってことは、病気とかを媒介してくるのか?怖いな。
「とりあえず、夜にならないとだめみたいね。宿をとりましょう。」
村の小さな宿をとる。もちろん部屋は別だ。
「あんたは寝てていいから、仕事は私に任せて。」
それだけ言うと、彼女は部屋に入って行った。
まあ、男として情けないことこの上ないが、病気とか持ってそうな蚊は怖いし、
彼女も任せてと言っているのだから任せよう。
あまり考えないことにして、俺は夕方まで時間をつぶし、そのまま眠りについた。
◇
...ゴンッ!...ゴンッ!
窓に何かぶつかる音と、差し込んでくる淡い光で目が覚める。
「なんだよこんな夜中に...」
上体を起こし、時計に軽く目をやると2時を回っていた。
そのまま、目線を窓の方へ動かした時、
俺は驚きのあまりベッドから落ちてしまった。
窓の外には体長50センチほどだろうか、
とにかくバカでかい蚊が窓に体当たりしていたのだ。
「ゆ、夢か...?」
俺はテンプレさながら、頬をつねるが、ちゃんと痛い。
恐怖しかなかった。こんな大きな蚊なんて見たことも聞いたこともない...
「魔物って...マジだったのかよ...」
とにかく、窓を突き破っては来なさそうだ、息を整え、外も見る。
外では、何匹もの巨大な蚊と、ディアブラが戦っていた。
ディアブラは手から炎の玉を出し、蚊を焼き払っている。
「ははは...魔法もホントなのか...」
乾いた笑いがこぼれる。現実がまた呑み込めなくなった。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
次回はやっとバトルパートですね。これからやっとこの物語の特徴も出せると思います。
評価、感想をいただけるととてもありがたいので、気が向かれましたらよろしくお願いいたします。