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他殺の理由
吉川エリカ
精神疾患を持っていたことは周知のことであるが、彼女も短く不幸な人生になろうとは...
彼女は一人娘で甘やかされて育てられてきた。父は忙しく家庭を省みず、すべてカネで解決してきた。母も自分の趣味に没頭し、子供に対して愛情を注がなかった。その結末が精神障害である。
裕福な家庭が全員心も豊かではないのだ。
エリカのお屋敷にはふたりのヘルパーがいる。執事のヨセフと召使いのヘルペスだ。執事は高齢の71歳、ヘルペスは人件費の安いベトナム国籍の女性で年齢は18歳だ。
エリカの知らせを聞いて、執事のヨセフは泣き崩れた。『お嬢様ぁ...うぅ...』
その一方でヘルペスは安堵の気持ちを抑えずにはいられなかった。ヘルペスもかさぶたと同様に虐待を受けていたのだ。