なんとか家殺人事件(未遂)
お読みいただければ、幸いです。
僕にとって、家は呪いだった。
僕の生家は何もない田舎にあったけれど、村一番の名士の家で。当主である祖父の五郎衛門は、自分の子供達には厳しく孫である僕には矢鱈と、甘い人だ。
祖父には三人の息子がいる。長男と三男は、既婚だ。
祖父の子供達、つまりおじさん達はそんな祖父を良くは思っていない。一番上のおじさん、守一さんは大学で教鞭をとっているのだが近頃人間関係のトラブルに悩まされていて、お金が必要なようだ。二番目のおじさん、靖二さんはギャンブルが大好きで常にお金に困っている。三番目のおじさん、清三さんは家族関係が上手くいっていないらしくやはりお金が必要なようだ。
三者とも別の要因だが、金子が必要なことは一致している。だが息子に厳しい祖父が金に困っている息子達に、金を貸してやろうとは口が裂けても言いはしないだろう。
最近、おじさん達は三人集まってなにやら画策しているようだ。
そして祖父の体調は、近頃よろしくない。
祖父が亡くなった後の、遺産の取り分を相談しているのかもしれない。
家の中に形のない、嫌な雰囲気が漂っている。
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