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( 復興準備 )

 エイマン城砦都市にササキと共に戻り、冒険者組合に仕事の完了と、突如発生した此度の騒動を、ササキの協力の下無事に収めたこと、その証拠に魔石の提出を済ませる。


 魔物の討伐数に関する揉め事は多い、魔石は魔物から一つしか取れないので誤魔化すことは出来ないが、問題は魔石を有さない魔物の場合だ。【ゴブリン】や【オーガ】といった魔物がその代表である。なので討伐したさいは、特徴的な部位の提示が義務とされている。片方の耳などがそうだ。だが素材としても活用出来ることから、先の二種であれば、耳に限らず全身の素材を持ち帰ることがほとんどである。


 今回の討伐対象はアンデッドである。そのため魔石の採取に問題はないが、問題は素材だ。元が人間であることから、骨や皮を商品として取り扱うのは不可能だからだ。あっても朽ちた武器防具となるだろうが、擦り切れてボロボロの革鎧、錆びて今にも壊れかけの刀槍や板金鎧、もはや鋳潰すか破棄するしかない上に、重量がありかさばるそれらを持ち帰る冒険者は居ない。


 よってカオリ達が持ち込んだ討伐の証拠と換金素材は、魔石のみとなる。カオリ達は大量に詰め込まれた革袋を複数提出する。

 そのさい、その膨大な量と、それを持って来たササキの登場に、組合は一時騒然としたが、カオリが驚きを持ち込むことにいい加減慣れ始めた組合関係者達は、ほどなくして通常業務に戻っていった。

 ただカオリはササキ共々職員に呼び止められ、素材換金の時間の間、ぜひにと組合支部長の招待を受けた。


 ササキの存在にすっかり緊張しきったイソルダに案内され、カオリとササキは二階の一室に通された。

 イソルダが開けた扉の先、中央に革張りの長椅子と机、奥の窓際に執務机と、典型的な執務室の体裁をとった広い部屋に、カオリは刑ことドラマのワンシーンを思い浮かべる。

 以前にも語ったが、冒険者組合の持つ役割は、地域によって大きく変わる。そもそも場所によっては冒険者という名称すらなく、たんに組合とだけ呼ばれることもあるのだ。


 例を挙げれば、ここミカルド王国内においては、主に三種類の形態が存在する。一つはエイマン城砦都市のような、魔物退治や傭兵派遣に特化したもの、一つは地方領地に多い、建設業や農業といった単純労働なども斡旋する総合的なもの、最後に各町村が独自に運営する小規模組織だ。


 ミカルド王国の冒険者組合は、王都に構える本部の他に、幾つもの支部を有している。王家直轄領はもちろん各方面の領主貴族領の領都に加え、自治都市や交易都市、さらには他国の都市にまで支部を抱えている。何が言いたいかと言うと、田舎の独自組織を除き、同国内の冒険者組合は各方面に大きな影響力を持っているということだ。

 よって各支部の責任を預かる支部長には、そうした大きな組織力を背景に、地域に則して各々に裁量権が与えられ、場合によっては貴族に匹敵するほどの発言力を持っているのだ。

 そのため、ここエイマン城砦都市支部を預かる人間も、そんな重要な役割を持った一人であると言える。


「ようこそおいで下さいました。ササキ様、カオリ君、私がここ冒険者組合エイマン城砦都市支部の支部長、ベルナルド・アルマーニです。以後お見知りおきを」


 恭しく礼を取る支部長と名乗る男、高い上背に整った身なり、眼鏡が光を反射させる姿は知的な紳士を思わせるが、服の上からでも分かる引き締まった身体、切れ長の目によく焼けた肌は、なるほど荒くれものの冒険者達を纏める。支部長の名に恥じぬ迫力を湛えている。


 この男、支部長ベルナルドは、元冒険者でありながら、貴族の覚えめでたく実力もあり、今年で四十という年齢で支部長に抜擢された切れ者だった。帝国との戦線にもっとも近いこの都市を預かるには、ただ人では勤まらないのは明白、微妙な情勢に対して柔軟かつ迅速な判断が下せる人物であることは語るまでもない。


「カオリです。この都市で冒険者になって日も浅いのに、ここの職員さん達と先輩冒険者達には、いつもお世話になっています」

「丁寧な御対応に礼を言う、王都支部の冒険者、ササキです」


 カオリが日頃の礼を、ササキが簡素な紹介をし、支部長に勧められるままに、座り心地の良い長椅子に二人は並んで座り、支部長も対面に座る。退室したと思っていたイソルダが、三人分の飲みものを机に用意したタイミングで、支部長は切り出す。


「カオリ君は我が支部登録当初から注目され、その後の活躍も目覚ましく、ゆくゆくは当支部を代表する冒険者になるだろうと思っていた。しかし此度の報告によると、千体ものアンデッドを殲滅し、さらにはあのデスロードをも討伐したと聞く、それだけでも驚愕だが、かの神鋼級冒険者のササキ殿と懇意にしているとも聞けば……、君の存在は街中に認知されることになるだろう」


 支部長は鋭い視線を向けながら、冒険者組合の立場から、今カオリのおける状況を説明する。


(へ~そうなんだぁ、みんな優しくしてくれるから、こっちのことを考えてくれてるとは思ってたけど、お偉いさんの人にも注目されてたなんて思ってもいなかったなぁ)


 カオリは素直な感想を抱く、だからといって天狗になるようなこともなく、カオリは無感動に支部長の話に耳をかたむける。


「不躾で、しかも冒険者のルールに反するとは承知しているが、もしよければお二人の関係を伺ってもいいだろうか? 私も所詮下賤のもの、噂話を聞けば真相を聞かずにはいられなくてね」


 やや申し訳ない表情を浮かべながら、支部長は先とは打って変わって親しみ易い調子で言った。


「いえ構いませんよ、隠すほどのことではないのでね」


 片手を上げて返答するササキ。

 そこでササキはおもむろに兜を脱ぎ、素顔を晒す。


「ほう……、黒髪に黒眼、カオリ君と同じ……」

「ええその通り、何のことはない……、私もカオリ君の噂を聞いて会って見たいと思った下賤の一人、だが実際会ってみれば、何と噂の少女は己と同郷のものではないか、ならばと、彼女のこの大陸における活動を、先達として金身共に助けねばと思い、此度の騒動を収め、さらには今後の支援も約束した次第です――」


 「なるほど」とうなずいた支部長は、少し温くなった茶を啜る。ササキが兜をかぶり直す間、一拍の間のをおいて、支部長は静かに器を机に置く。


「支援と言うと、それはカオリ君が掲げる。村の復興開拓の支援も含まれているのですか?」

「それがカオリ君の、この大陸での居場所となるなら、支援を惜しむつもりはありません……、またそこはある意味で、私の寄る辺にもなり得るなら、なおのこと、私がこの件で個人資金を投資することは、意義のあることだと考えています」


(あ、そうなんだ。ササキさんが私達の村の一人として暮らすなんて、何だかすごくシュールな光景……)


 村人と笑顔で挨拶を交わす魔王の姿を夢想し、カオリは内心で苦笑する。


「ほほう、資金面での不安がなくなれば、カオリ君の活動も一層の進展を得るだろう、だがカオリ君としてはどうなんだい? 冒険者稼業で金銭を稼ぐ必要がなくなれば、危険な仕事をわざわざ続ける理由もない」

「? うぅん? そうなんですか?」


 考えてもいなかったことを聞かれ、首をかしげるカオリ。


(自分で稼ぐことを止めたら、駄目な気がするし、お世話になった人達との関係も、疎遠になるのはなんだか嫌だなぁ~)


 考えるというよりも、感情面での感想が思い浮かぶばかりで、支部長への返答に困ってしまったカオリは、助けを求めるようにササキに視線を送る。

 だがササキは目が合うと小さく頷くだけで、助言をくれることもなかった。自分で考えて答えを出せということか、思ったことを素直に言えばいいのか、カオリは少し間をおいて、纏まらない思考のまま、とりあえず言葉を探す。


「この一ヶ月だけでも、色んなことを知ることが出来ましたし、冒険者としての仕事は、私にとってすごく勉強になりました。なのでまだ新人冒険者でしかない私達は、上を目指して頑張ることで、もっと勉強出来るんじゃないかな~って思ってます。それに……、それにササキさんに、甘えてばっかりっていうのは、ちょっと違うんじゃないかって思うんです」


 素直な気持ちを探りながら言葉にするカオリ、支部長もササキも黙ってそれを聞いていた。


「だからとりあえず、今すぐ冒険者を止めるとかは考えてないです。ていうか、支部長さんに言われるまで、考えてもいなかったです。やっぱり自分の目標は自分の力で叶えなきゃって、今はそう思ってます」


 カオリの真っすぐな視線を受け、支部長は控えめな息を吐く、どんな答えを望んでいたのか分からないが、少なくとも呆れられるものではなかったかと、カオリは少し不安を抱くが、支部長は明らかに安堵した様子で、すっかり冷めた茶を飲み干した。


「いやぁよかった。正直に言うとね。注目していた分ここでカオリ君が冒険者を辞めてしまうのは、すごく惜しいと思っていたのだよ、出来ることならもっと活躍して、当支部の看板を盛り立ててくれたならとね。……後、君達を殊更気にかけている職員が、落ち込んで、仕事の能率が落ちるのも、責任者として無視出来ない問題だからね。その答えが聞けて安心したよ」

「はは、落ち込むってそんな、何ですかそれ?」


 自分が辞めたぐらいで落ち込むなど、そこまで自分達に価値があるかと思いながら、カオリは支部長の言葉に笑ってしまった。


「私はカオリ君の意思を尊重します。なので王都本部への引き抜きや、権益に媚びるような利用材料とは考えていません、私は冒険者として、中立の立場を崩すつもりは毛頭ありませんので、どうぞご安心下さい」

「参りました。ササキ殿には隠しごとは出来ませんね」

「?」


 何だか分からない二人のやり取りに、カオリは疑問符を浮かべるが、大人の話しはいつも難解だ。ここで問い正してもキリがないと、黙って話を聞く。


「そうだ。カオリ君が良ければだが、大きな成果もあることだし、ここいらで昇級試験を受けてみないかね? 私が考えることは皆も不安に思っていたことだ。試験を受けて冒険者を続ける意思を示すのもいいだろうし、昇級すればさらに高い報酬の依頼も請け負えるようになる。どうかな?」

「おお、いいんですか?」


 支部長の新たな提案に、カオリは少し興味が惹かれる。


「いいも何も、カオリ君は十分にその実力を示した。何なら飛び級試験にして、一息に銀級を得ることも、カオリ君達なら可能だろう、本来は担当職員の承認が必要だが、今回は私が許可を出しても構わない、……ササキ殿もどう思われますか?」


「私の目から見ても、カオリ君達の戦闘能力は新人の粋を超え、銀級でも十分に通用するでしょう、経験豊富な冒険者パーティーの教えも受けていますし、私も協力を惜しみませんので、私からも推薦状を出すことは、やぶさかではありません」


 降って湧いた話だが、二人が乗り気なら、自分に反論はないと、カオリは受ける意思を固めた。


「そういってもらえるなら、受けたいです」

「決まりだね。申請も説明もしておくから、後日、担当のイソルダから詳しい説明を受けてほしい、昇級試験のことと言えば分かるように言っておこう」

「お願いします」


 立ち上がり礼を言うカオリ。


「忙しい時に時間を取らせて、申し訳ありませんでした」

「いえいえ、支部長こそ我々を気遣って下さり、ありがとうございます」


 と支部長とササキが言い合い、そのまま支部長室を辞し、二人は一階の皆のところへ戻った。カオリには支部長の目的が分からなかった。昇級に関してだけなら職員にでも言えば済む話である。

 だがカオリが分からないのも無理はない、大陸に数えるほどしか居ない神鋼級冒険者のササキ、その後援を受ける期待の新人冒険者、しかも村の復興開拓を掲げて活動を始めたとなれば、支部長でなくとも注目を、あわよくば繋がりを得ておこうと考えるだろう、そしてついでに恩も売っておけば上々である。


 残念ながらカオリは自らの価値を自覚していない上に、神鋼級冒険者の重要性も把握していなのだから、今回わざわざ呼び出されたことの真意まで、考えが至らなかったのだ。

 目立つことを避けるカオリにとっては、知らぬが仏である。




「昇級試験? しかも飛び級! すごいじゃない!」


 話を聞いたロゼッタが驚きのあまり声を上げる。


「俺達と同じ銀級か、あっという間に追い付かれちゃったな」


 アデル達も苦笑交じりで、各々でカオリを称賛する。


「銀などカオリ様には足りませぬ、どうせなら聖銀(ミスリル)、いやいっそ不滅金(アダマンタイト)が相応しい!」

「いや、そんなのないから」


(ないよね? いや、金属としては存在はしてるのかな?)


 アキだけいつも通りだ。カオリは関係ないことを考えながらも、冷静にツッコミを入れる。

 カオリの承認を待って、報酬の分配を終える。満足げな様子の【赤熱の鉄剣】パーティーと、余りの額に困惑するカオリ達、対極的な様子のパーティーとそれを眺めるササキ。


「これだけあれば二ヶ月は食うに困らないなぁ、さっさと組合に預けてしまうか」


 ちなみにアデルが言った預けるということだが、冒険者組合では預金も受け付けており、大金を持ち歩くのを嫌がる冒険者は、皆組合にお金を預けている。

 ただし銀行業は国の認可がなければ出来ないため、手形を持って支部間での換金は出来ても、金利や貸付は出来ないし本当にただ預かるだけなのだが、屈強な戦士達がたむろする建物に、盗みに入ろうなどと考える命知らずは居ないため、どこよりも安全が保障されていると言えよう。


 往復六日間での討伐報酬、魔石の換金額、騒動でのアンデッド約千体とデスロード討伐報酬、しめて金貨六十八枚と大銀貨九枚と銀貨五枚、その中から赤熱の鉄剣への報酬は、色を付けて金貨十六枚、それでもカオリの手元には端数を切って五十二枚もの金貨が残った。生半な額ではない、持ち歩くなど以ての外である。


 アデルから組合の預金の存在を教えられ、さっそくほとんどを預けることに、そこから大銀貨数枚だけを残してロゼッタに半分を渡す。これはあくまでお小遣いだ。仕事の支度金などはパーティーで負担し、あくまで報酬をパーティーの一括で預けているに過ぎない、パーティー内での細かい分配も、今後考える必要があるかと、カオリは心のメモに加えて置く。


「今日はここで解散して、俺達はここで食事も済ますつもりですが、そちらはどうします?」


 アデルがカオリとササキに聞いた。


「私達は宿に帰って、アンリに話しをします。ロゼッタもそれでいい? たしか宿を私達と同じ宿に移すって言ってたけど……」

「ええそうよ、今頃ステラがアンリちゃんを手伝って、食事の用意をしているはずよ」


 仕事に出る前に、連絡が面倒なのと節約も兼ねて、以前の上流宿から、カオリ達の泊る安宿に移すと聞いていたカオリは、ロゼッタに確認を取る。


「私も適当に宿を取って、食事はこちらで取ろうかと」

「おお、ならササキ殿、是非食事を共にしましょう、貴方の冒険のお話を是非伺いたい」


 オンドールが喜色を浮かべササキを誘う。


「ええ構いません、ご一緒させていただきたい」


 ササキもそれに応じ、一同はそこで解散した。

 宿に戻ったカオリ、アキ、ロゼッタの三人を出迎えたのは、アンリとステラ作の豪華な食事だった。

 白く柔らかく、軽く焼き直したもちもちのパン、野菜と玉蜀黍で丁寧に作られた温かいスープ、肉料理も豪勢なもので、生ハムと腸詰が盛られ、色取々で新鮮な野菜が彩りを加える。

 飲みものには果実水が用意され、一気に飲み干したカオリは、その染渡るような喉越しに嘆息した。


「私が居ない間、こっちはどうだった?」


 ロゼッタがステラに対して質問する。


「テムリ様に手伝って頂き、宿からの荷運びもすぐ終わりましたので、空いた時間はご指示の通り、ご姉弟様達の勉強に、またお嬢様が帰られてから御不便がないように、市井の調査とうをしておりました。本日お出しした料理の食材も、この都市の市場で見付けたアルトバイエ領のものです。多少の品質劣化は見受けられますが、偽物が出回っている様子もなく、この都市の検閲は厳しいと言えましょう」


 淡々と業務報告をするステラに、ロゼッタは「ふーん」と素気ない返事をする。領主貴族の令嬢といっても、冒険者にあこがれるくらいなのだから、自領の特産品が外でどう取引されているかまでは興味がない様子だ。


「二人の勉強まで見てもらって、ありがとうございます」

「いえ、飲み込みも早く、何よりやる気があるものには、教え我意がありますので、私も熱が入りました。とても良い子達です」


 カオリの礼にステラが返答する。アンリを見ると可愛くはにかむ様子から、順調に教養を身に付けているのが分かる。カオリの従者でもないのに、熱心に教えてくれているステラに対し、カオリは感謝を告げる。

 聞けばこの従者、ロゼッタの家とは遠戚であるらしく、幼少よりロゼッタ付きの従者として奉公に出されたそうだ。そうした長い付き合いから、当人同士が信頼し合った関係は、いっそ他の兄弟姉妹より仲が良く、今回家を出たロゼッタに付き従ったのも、ステラ本人の強い要望があったためだ。


 それを領主が許した背景に、彼女の家事能力はもちろん、深い教養や戦闘力は、ただの女中にしておくのが勿体ないと言えるほどだったため、普通なら彼女と別に護衛が付きそうなものを、彼女一人がロゼッタに付くことが許されたのだ。

 片手間とはいえ、アンリ達に勉強を教えてくれることになったのは、ステラ本人が言い出したこと、カオリはとくに拒否する理由などなく、諸手を上げて歓迎したのである。

 一通りの報告を終え本題に入る。


「今回の遠征での騒動で、金貨五十二枚を得ました。これを元手に本格的に復興開拓に着手しようと思いま~す」


 カオリの報告に動きを止める一同。


「五百二十万ゴルドですか……、ちょっとした財産ですね」

「……金貨って一枚幾らだっけ?」

「カオリ姉ぇすごいっ!」


 驚くそれぞれの反応に満足しつつ、カオリはここ最近考えていたことを告げることにする。


「ロゼの加入を機に、考えていたことがあったんだけど……、今後私達は、国とか貴族とかからの支援は、断ろうかと思うの」

「一応理由を聞いても?」


 カオリの方針にロゼッタが反応する。


「冒険者の実入りが思ったより大きいことと、冒険者のササキさんからの援助で、当面十分な資金があるから、しがらみが多い貴族からの援助に頼らなくていいのが理由、ただし、ロゼッタみたいに個人的に冒険者として加入してくれるなら、国の権益を気にしなくてもいいけどね」


 資金援助をしたからと、勝手に国に権利を主張されても困るのがカオリの気持ちである。

 ササキやオンドールの談ではそれが起因で帝国と王国の両国の戦争に巻き込まれる可能性もあるのだ。付け入る理由を与えるべきではないと、二人から注意を受けていた。

 ただし、貴族の不興を買うと、商人や組合からの協力を得られ辛くなるのは、現段階では気にしない、今はあくまで方針を決めただけで、実際の対応まで決めたわけではない、距離を置きながらも、機嫌を損ねない対応などは、ロゼッタやステラと相談出来ればと考えていた。


「そういうことなら任せて、これでも社交界ではそれなりに経験があるし、不埒な貴族の申し出くらいは、あたり障りなく回避出来るようにしてみるわ」

「私も、可能な限り対処しますし、このさいです。皆さんも淑女として、折を見て色々とご教授させていただきます」

「え? それ必要?」


 二人の頼もしくも、ステラの思わぬ提案にカオリははなじろむ。

「平民や商人が相手であれ、侮られない最低限の立ち振る舞いや作法は、身を守るためにきっと役に立つはずです」

「まぁそうか~、作法かぁ、自信ないなぁ~」


 現代日本で礼儀作法を問われることは少ない、せいぜい目上に対する敬語に気を配る程度だ。


「それより、明日からの動きを決めたいんだけど、何かある?」


 話題転換も兼ねて話を振ってみる。


「開拓に向けて動き出すってことは、明日は仕事は休んで、具体的な手配に着手するってことでいいの?」


 ロゼッタが確認をする。


「ん~、その前に、今の情勢? 緩衝地帯ならではの問題をちゃんと知っておいて、手配はそれに合わせていきたいかなぁ~」


 ロゼッタの後ろで控えるステラが、目を見開く。

 オンドールやササキと接する中で、開拓は人を集めて働けばいいなどという簡単なものではないことを知り、カオリなりに事前準備が必要と感じての問いかけだったが、カオリと接する機会のなかったステラには驚きがあったようだ。


「情勢の確認とは具体的に、何を必要とお思いになったのでしょう? カオリ様のご年齢でそこまで考えが及ぶとは……」

「そもそも、アンリ達の村が魔物の大集団に襲われたこと、そして今回の騒動と、はっきり言ってあの土地が開拓に向いているとは思えないの、でもあそこには実際アンリ達が住んでいて、今まで平和に暮らせて来たんだから、私がこの土地に来る前後で、まだ見えていない部分があるんじゃないかな? て思うの」


 寝具に並んで座るアンリとテムリの表情を見ながら、カオリは自分の所見を言う。


「戦争の前に、帝国と王国側の兵隊さんが、遠目に確認に来ること以外で、人の出入りは殆どなかったよ? 魔物の襲撃も、大人が十分に追い払えるくらいだったし、あんなゴブリンの群れを見たのなんて初めてだったよ、きっと他に何か、あの村の場所に悪いことが起きる理由があるんだと思う……」


 恐る恐るといった様子で、カオリに視線を送るアンリ。

 きっと村の放棄のさいに、カオリの出現と共にゴブリン達が森から出て来たと邪推した村長達の判断を、カオリが気にしていないかと気遣ったのだろう、カオリは何でもない風を装い、アンリに笑顔を向ける。


「私が調べた範囲では、近年冒険者組合にて、魔物の討伐と野盗の撃退依頼が増えているようです。考えられる原因として、帝国と王国連合間の衝突がなくなり、緩衝地帯の両軍の行き来がなくなり、魔物が活性化し出したことと、戦場という稼ぎ場を失った傭兵や、解雇された兵士が野盗化したことが上げられます」


 カオリ達が不在の間も、精力的に情報収集してくれていたステラにお礼を言いつつ話は進む。


「戦を止めた結果、諍いが増すなど皮肉ですな」


 今まで黙っていたアキが、見下したような発言をする。人の営みを、人種そのものを侮るようなアキのいつもの態度に、カオリは溜息が洩れる。


「いやいや、そもそも戦争が無ければ生まれなかった問題だよ、戦争なんて一部の人が望んでるだけで、普通の人達は平和を望んでるはずだから、一括りに悪く言っちゃ駄目」


 カオリに諌められ、バツが悪そうな表情で俯くアキを無視して、ロゼッタが発言する。


「増えたことで脅威があることは分かっても、具体的にどう対処するの? 私達は戦えても、開拓民の中には戦闘能力を持たない人もきっといるでしょう?」

「……そもそも緩衝地帯って、どれぐらいの範囲を指すの?」


 カオリは再びステラに話を振る。何となくで話を振っただけだったが、ステラは当然のように答えてくれる。


「帝国と違って、王国側は国境が曖昧ですので、おおよそで言えば、東西南北にそれぞれ約三十里の範囲ですね。この都市から帝国領までは、徒歩なら道中の魔物との戦闘を含めて、七日はかかる距離かと」


 ステラのざっくりとした説明に、正確な地図は存在しないのかと首をかしげるカオリ、後にササキに確認しようと決める。


「ならその範囲で、冒険者に斥候依頼を頻繁に出して、脅威の早期発見に努めようか――、村を通る順路で最低三人組の冒険者が行き来した場合の、適当な報酬額の試算を出して、実現可能かどうか検討するために、冒険者組合支部長さんと相談する場を、明日の朝にでもアポ取りにいってほしいかな」


 この具体的な提案は、オンドールからの助言である。


「分かりました! 私、アキが行ってまいります!」


 先の失言を払拭するためにか、アキが意気込んで名乗りを挙げる。


「開拓民の募集は、前期と後期、段階的に分けたいかなぁ……、最初は直ぐに放棄出来る人数で、最低限の設備を復旧して、後は人数を入れて防衛施設を仕上げて、最終的に防衛しつつ開拓出来るようにしたいから、中長期的な開拓計画を組まないといけないから、詳しい人に相談しないとねぇ」


 これもアデル達の意見を参考にしたもので、カオリは思い出すように説明する。もちろんこの計画の有用性に納得しての提案である。けっして言いなりになっているわけではない。

 それでもステラには驚きの計画性だったのか、内心で感心しながら、自らも積極的に発言する。


「……でしたら、労働者組合に話を持っていくことをお勧めします。あそこであれば大工や石工の専門業者への伝と、大規模敷設において、計画立案の知識を持つものもいるでしょう」


 ステラは自身の持てる知識から、役立ちそうなものを選んで提案する。


「おおぉ~、冒険者組合に雑用系の仕事がないなぁ~って思ってたら、そんな普通の組合もあったんだ。進んでるねぇ~、それなら商人組合とかもあるのかな?」


 カオリの疑問に答えるのは意外にもアンリだった。


「あるよカオリお姉ちゃん、私もテムリもそこで商店を紹介してもらって、そこで働かせて貰ってるから、もしお話をしに行くなら、私が聞いて来るよ」

「材木とか道具は労働者組合で手配出来るかもだから、かかる日数と人数が分かれば、食料の買い付けの時にお世話になるかもだから、手が空いてる時にでもその方向で軽く話してみてよ~」

「なら労働者組合の方は私が行って来るわ、一応朝から向かうけど、その足で報告のために戻るから、カオリは明日はどこにいるか聞いてもいい?」


 ロゼッタが消去法で予定を決めて、カオリに伺う。


「私は何にせよ、次の仕事のための物資調達と、一度ササキさんやアデルさん達と相談したいから、冒険者組合にいるようにするね」

「承知しました!」

「了解よ」

「分かったよぉ」


 三者三様の返事で、今日は休息となった。




 一方そのころ、冒険者組合の酒場、隅の一角を陣取ったアデル達【赤熱の鉄剣】とササキは、円卓で夕食を囲んでいた。

 ササキは尊大に椅子に背を預けながら、杯を片手に切り出した。


「さて、オンドール殿、私からは区画整備における。最終目標規模の策定を議題に上げたいと思うがどうか?」


 問われたオンドールは、どっしりと腰かけながら、腕を組んでゆっくりと頷く。


「ふむ、防衛の観点から見ても、防衛設備を維持出来る必要最低限の規模を策定しないと、人夫も資材も手配のしようがありませんしな」

「なんで、自然にそんな話が始まるんだ?」

「まあ、珍しくおやっさんが人を誘ったから、何かあるんだろうなとは思っていたが」


 呆れ顔でアデルとレオルドは二人を見やる。イスタルは澄まし顔で杯をかたむけている。


「どんな村にするにせよ、降りかかる脅威が存在することは変わらん、事実、この前の騒動のようなことが起らんとも限らん、脅威を想定した備えを予測するのは、我々年長者の務めだ」


 ここ最近でオンドールの口癖になりつつある言葉に、ササキも同意を示すように頷く。


「帝国と王国は今のところ、戦争を再開する動きはない、私の個人的な伝からのたしかな情報だが、貴族や商人達がどう動くかは分からない、なので目下注意すべきは、魔物の異常発生と、賊の大量発生だな」

「帝国も王国も、疲弊した国力の回復と、北の塔の魔王への備えに躍起だ。停戦を望む動きには納得出来る。ササキ殿の情報の信用度は高いでしょうな……、やはり、戦争が減ったことによる行軍路上の魔物の異常発生、そして仕事を失った傭兵や軍人の野盗化が深刻化して来たのは、冒険者組合での最近の依頼を見ていれば、たしかに目立つようになっているので、我々冒険者も注意を払っているところです」


 ササキとオンドールで情報をすり合わせる。そこへアデルも発言を挟む。


「緩衝地帯での開拓なんて、盗賊達の鼻先に餌をぶら下げるようなものだ。防衛設備を整えるのを、奴らが大人しく待ってくれると思えないが、実際どう対処するんだ?」


 アデルはもっともな懸念を示す。


「ここから先はカオリ君の意思を聞いてからになるが、我々が提案出来る方法はいくつかあるが……」


 ササキが指を立てつつ説明する。

 中にはカオリが言ったものと同様のものがあり、主旨としてはは早期発見に重きをおいたものとなる。


「実際に攻めて来たらどうします?」


 ここでイスタルが発言する。もっとも重要な事柄に、イスタルが言及する。防衛に備えることと、実際に防衛することには大きな隔たりがある。被害を最小限に抑えるためには、剣を持つ実戦を経験したものの意見はとても重要である。


「「潰す」」

「「は?」」


 前がササキとオンドール、後がアデルとイスタル。


「カオリ君達の開拓を邪魔する不届きものは、面倒だから徹底的に潰す。慈悲はない、下手に生かして数を揃えての報復に出られては癪だ。殺して身ぐるみ剥いで装備は売るなり備蓄にするなりして、死体は魔物の餌にする。あるいは国に突き出して報奨金を開拓資金に充てる」

「お、おう……」


 オンドールにしては過激な発言だが、それだけカオリ達の開拓に精力的だということである。


「まあ、俺達もそうだが、ササキさんが賊如きに遅れを取るとは思えねぇし、実際野盗の十や百なんざ、簡単に蹴散らしちまうだろな」


 レオルドが納得顔で笑う。


「私とカオリ君は、魔道具での緊急連絡手段もあるのでね。これはオンドール殿にも追々共有してもらうつもりだ。仮に私が村に不在でも、すぐに駆け付けられる」

「まさか! 転移魔法が使えるのですか! ササキ殿!」


 イスタルがすかさず声を上げる。

 この世界には失われた魔法が存在する。内実は多岐に渡るが、その筆頭が転移魔法である。目視範囲であれば、高位の魔導士に使い手が数えるほどだが存在するが、まったくの遠方へ自在に転移する魔法は、もはや伝説に語られるのみとされている。

 魔導士の一人であるイスタルには、その存在を示唆されただけで、人生を変えるほどの衝撃があったことだろう、さっきまで我関せずとまでは言わないまでも、静かに杯をかたむけていた彼の変貌振りに、皆呆気に取られた表情をする。


「魔道具を使っての、二点間が限度だが、私が神鋼級冒険者に叙されたのは、この転移魔法の存在が大きいと思っている」

「なん、ということか……」


 本当は魔道具も使わず、既知の場所であれば自在に転移出来ることは伏せつつ、ササキはこともなげに言う、それでもこの世界では破格の能力であるのは間違いない。


「なるほど……、ただ強いだけでなく、脅威に即座に駆け付けられることは、英雄の素養として重要でありますな」


 少し考えただけで、その有用性は計り知れない。

 連絡、運送、襲撃、逃走、あらゆる状況からも活路を見出せる転移魔法は、産業や軍事における需要は非常に高い、例え魔導具による限定的なものであっても、それを欲する権力者や冒険者は多い、だが所有者が実質最強の冒険者のササキならば、おいそれと手を出せないのであれば、情勢を揺るがす心配はないだろう、オンドールはササキ個人の持つ力を再認識する。


「現状、その転移が可能な範囲というのはどんなものでしょう? もちろん手の内を明かすことになるので、全てお答えしていただかなくても構いませんが」


 オンドールが確認のためにと、ササキに問う。


「カオリ君にまつわることであれば……、まずはカオリ君の下と村には、いつでも転移出来る用意をしています。それ以外に関しては、魔導具の数量の関係で、増やすつもりは当面ありませんが、しかしゆくゆくはカオリ君の信のおける人物には、何らかの形で、技術の恩恵か、あるいは伝播は可能かと考えています」

「! つまり場合によっては、私も転移魔法を会得する機会も、十分にあると考えていいのでしょうか!」


 ササキの返答に、イスタルが柄にもなく、色めき立って喰いつく、魔導士にとってはそれほどに魅力のある話なのだ。


「ええ、イスタル殿であれば、カオリ君も、否とは言わんでしょう、私個人も皆さんを信用していますので、折を見てきっと」


 ササキがにこやかに答える。


「話が脱線しましたな……、であれば、村が致命的な危機に陥る可能性をかなり回避出来ますな、……ではここで一つ、皆に言っておきたいことがある」


 オンドールが真剣な表情で一同を見回す。


「どうしたんでい、改まって」

「俺は予想が付ついているがな」


 レオルドとアデルが反応を示す先、オンドールは重々しく口を開く。


「カオリ君達の村の復興開拓に、我々はどこまで力を貸すか? 皆の意見を聞いておきたい、ちなみに私は……、残りの余生を懸けてもいいと考えている……」

「それは、場合によっては【赤熱の鉄剣】を抜けてもいいってことか?」


 レオルドが即座に問う、とくに詰問するような雰囲気はないが、相談もなく、一方的な意思表示に多少思うところはあるだろう。


「ああ、それだけの価値があると、私は考えている」

「「……」」


 ササキが黙って見守る中、しばしの沈黙、最初に声を上げたのは、以外にもイスタルだった。


「私もカオリ君に協力したい、ササキ殿の転移魔法を学ぶ機会など、ここを逃せば、一生機会に恵まれない可能性が高い、それにこの数カ月で、カオリ君達の成長と活躍を思えば、私自身の今後の成長に、活路を見出せるかもしれない、何と言うのか、そういう漠然とした予感があります。また――」

「待て待て、イスタルの言いたいことは十分に分かるから、俺も思っていたことだ。俺達が冒険者として、そろそろ限界を感じ始めていたのは俺も実感している。とくにカオリ君達の戦闘力と志の高さは、この場にいる奴なら皆肌で感じている」


 勢い込んで説明するイスタルを諌め、アデルもイスタルに同意するように言葉を繋げる。


「なんだよ~、そういうことかよぉ、俺は頭が悪ぃからああだこうだと言えねぇけどよ、ここ最近新人教育ばっかで、冒険者らしいことしてねぇなってのは納得だぜ」


 レオルドが遅ればせながら、腕を組んで大仰に頷く、オンドールの表情を伺えば、相好を崩し、まだ若い三人を見詰めていた。

 アデル率いる【赤熱の鉄剣】の結成は、アデルが十七歳の時だった。

 村で力自慢のレオルドが、一つ年上のアデルに、村を出て冒険者になるには、どうすればいいかを聞きに来たことが切っ掛けだった。


 それから少ない蓄えを握り締めて、村を飛び出し、街でイスタルと出合い、冒険者稼業に慣れたころに、オンドールを迎えて今の形になったのである。

 現在アデルは二十八歳、冒険者組合で新人教育を引き受けるようになって早三年、当時レベルアップに悩み始めたころ、人に教えることで自身も成長する。というオンドールの言葉に従い、始めた仕事であったが、生来の面倒見のよさから、以降やり甲斐を持って従事して来た仕事である。


 だがそうして行く中で、効率的なレべリング、臨機応変な対応力、稼ぎやすい仕事の選び方など、多くを学びながらも、それを自身に生かす機会を失していたことに、思い馳せることが度々あったのだ。

 それはレオルドもイスタルも同様だったようで、当人達が意識しないところで、小さな不満は溜まっていたのだろう。


(俺もずいぶん安定志向になっちまって……、村を飛び出したあのころの若さを、いつの間にか懐かしい思い出にしちまってたのかなぁ)


 もう答えは出ている。すぐに答えられなかったのは、パーティーのリーダーとしての責任感から、慎重になっていたからに過ぎない、だがメンバーの大半の意思が、前へ進むことに向いたならば、それを後押しするのも、リーダーの務めだと、アデルは久しく迫られた責務の要求に、胎に力を込めて応えるのだった。


「よしわかった! 今日より我ら【赤熱の鉄剣】は、カオリ君達の復興開拓に参加し、全面的に協力することをここに宣言しよう、明日の朝にでも早速、カオリ君にそれを伝えて、各員準備をするようにしてくれ!」

「「了解!」」


 メンバー全員の返事を持って、意思が決定した。ササキがそれを眺めながら、大きく頷くのが視界に映る。




 翌朝、それぞれが忙しなく動き出す。

 カオリが各人からの報告を聞き終えたのは、昼に差しかかる時間帯で、冒険者組合の酒場には、多くの冒険者が出入りしていた。


「冒険者の斥候派遣の依頼は、組合も出資して貰えることになって、費用も大分抑えられることになりました。今日中に範囲とこちらが提示出来る資金案を出せば、明日にでも掲載して貰えるそうです。それと労働者組合と商人組合が、一度現地を視察したいそうで、具体的な日取りの調整のために、もう一度会合をしたいから、今日の夕方にも私が向かうことになりました」


戦争の停滞による経済の滞りが与えた影響は小さくなく、人手を得た農村部と、戦争による死者が減り、逆に増えた人口の食料確保による需要が満たされても、戦場に近い商業都市では、軍や傭兵、またそれらを当て込んだ人の流入が減って、逆に需要が下がってしまった。

 労働者組合も商人組合も、そうした中で、大口の取引が舞い込んだことを、大いに歓迎した。


「ササキ様のお名前と、騒動で得た報酬の明細書を出したら、すぐに喰いついて来たわよ」


 ロゼッタはそう言って優雅に茶を口に運んだ。冒険者組合で出される飲食は、基本的に粗野で大盛りが普通だが、貴族の子息や騎士が出入りすることもあり、種類は少ないが、中には良い品質の茶や軽食も取り扱っている。

 ロゼッタが今口にしている茶も、山間部で採れる茶葉を使って淹れられたもので、カオリも好んで飲んでいた。と言ってもそれ以外では酒類がほとんどのため、未だに日本の尊法精神が抜け切らないカオリなので、酒に手を出す気にならないだけなのだが。

 カオリは午前中にあった報告を簡単に伝え、アデル達【赤熱の鉄剣】の面々とササキに向き合っていた。

 その異様な面子の会合は、冒険者組合でも良く目立つ、とくにササキの存在と、それに並ぶカオリ達の様子はかなり目を引く。


「さすがカオリ君だね。感心するほどにいい仕事をする。これなら俺達もすぐに動けるね」


 アデルがカオリの報告を受け、大いに驚いていた。


「でもまさか、アデルさん達が開拓団に参加して下さるなんて、とっても嬉しいです。今までさんざんお世話になったのに……」

「気にするほどじゃない、我々も思うところがあっての決断さ、カオリ君が動き出したことが、我々に勇気を持たせてくれたんだ。感謝をするのは我々の方だ」


 オンドールが本心から告げる。


「斥候依頼に冒険者組合が噛んで来たのは……、単純に、半分の資金で、冒険者に遠方の仕事を与えられるのと、我々に恩を売れるからか……、依頼料については状況次第で変えるものとして、後で掲載されたものを確認しておこう」


 依頼料が高過ぎれば資金が持たず、低過ぎれば請ける冒険者が居なくなってしまう、カオリもそのあたりの適正価格を判断する知識は、さすがにまだない、ここはアデル達に任せてしまう。

 夕方に行われた会合で、【赤熱の鉄剣】パーティーを加えた面々での、視察団編成の準備をする。

 出発は翌日の朝、各組合の意気込みが感じられる。

 だが宿に戻って夕食を摂っていたカオリに、アンリから思わぬ提案を受ける。


「ねえ、カオリお姉ちゃん、私も村の視察団に同行したいんだけど、いいかな?」

「ん? ん~、悪くはないけど危ないから、参加するなら開拓団が出発の時にって思ってたけど、どうしたの?」


 問い返すカオリに、アンリが思案顔で答える。


「視察団って、具体的な開拓の準備を整えるためのものでしょ? なら村の元の姿を知ってる私がついて行けば、色々応えられるかもって思って、それに斥候依頼?で冒険者の人達も、たまに村を通るんだよね? その人達の食事とか寝床の用意とか、手伝えることがあると思うの……」


 そういうこともあるか、とカオリは思う。


「でも視察が終わってから、開拓に着手するまで、どうしても期間が空くから、実際に手伝いって言っても知れてるし、そのためにお仕事をお休みするのって、大変じゃない?」


 視察団が出発してから現地視察を含め往復で七日間、開拓のための人夫の確保と、食料の買い付けや準備に二日、そして開拓団が村に到着するのに三日、馬車を使っての移動なのでこれでも短縮した方だが、それでも十日間以上もエイマン城塞都市を離れるのだ。昨日今日で休暇を申し出るのは無理がなかろうか? 


「大丈夫、今日の朝に薬師屋の店主さんに事情を説明したら、昨日まで働いた賃金と一緒に送り出してくれたの」

「僕も宿屋とかのおっちゃん達に言ったら、いっぱい手伝っておいでって言われて、お金貰ったよ!」


 アンリに続き、テムリまでもが、カオリの懸念を払拭し、既に着いて来る気まんまんの態度を示す。


(そういえば、村を復興するからって言っても、ほとんど私が勝手に一人で動いてばっかりで、二人には危ないからって何もさせてなかったな~、もしかしてすごく不安に思わせちゃってたのかも)


 カオリは反省した。

これから行うのは、復興とは名ばかりの、要は開拓である。

 いくら元の形が残っていても、実際に人の手が入れば、建て直さなければならない家もあれば、新規に建てる施設もある。自分達の知る村の姿が、知らない間に変えられるのは、普通なら不安に、ともすれば不快に思うものだ。

 まだ子供だからと、無意識の内に二人を遠ざけていたことを、カオリは初めて認識した。


「分かった。これから二人には色々動いて貰うことになるかもしれない、この街での生活で、アンリもテムリも沢山勉強して、もう十分働けると思うし、一緒にがんばろうね!」

「「うん!」」

「ご姉弟様ぁ! 立派になられて! アキめは感動です!」


 やり取りを見ていたアキが、号泣しているのを横目に、カオリも二人の想いに、頬を緩めた。




 カオリは視察団の護衛と案内の道中で、一つ、考えていたことがあった。


(やっぱり、アンリとテムリに、嘘を吐き続けるのはイヤ)


 出した結論は、ギルドホームの存在を、二人に告げるか否か、カオリは結局、感情から、秘匿し続けることを否定した。


(ロゼッタにも打ち明けたいけど、やっぱりまずは二人に正直に話すことが先だよね……)


 このまま村の開拓の指揮を執れば、村の代表者はカオリということになる。だがあの村は二人の故郷だ。二人にはその故郷の発展を、誰よりも近くで見ていて貰いたいし、時には未来の姿について、二人の要望を、いや夢を反映させたいとカオリは思った。

 今でこそ幼い姉弟だが、後数年もすれば、身体も経験も知識も、今よりもっと大きく、立派に成長することだろう、それを思えば、今の内に村の全てのことを知り、いずれは采配を振るう立場となるべく、早くから仕事に従事すべきだろう。

 村に到着後、村の中に仮設でテントや釜戸をこしらえ、組合から派遣された視察員に、一通りの案内をした後、今度は村の柵や全体像の把握のためにオンドールが帯同し、カオリは一行をお暇した。

 カオリとアキ、アンリとテムリだけは、かつての家に荷を降ろし、今晩からここで眠ることになる。

 埃を払い、寝具を整え、荷物から食材を選んでいたアンリとテムリの二人に、カオリは声をかける。


「夕食を食べ終えたら、二人に大事な話があるの」

「? うん、分かった」


 きょとんとした顔で返事をするアンリ。

 その後、【赤熱の鉄剣】パーティーと視察員とカオリ達で夕食を囲む、それぞれのパーティーから見張りを交代で出しているため、全員ではないが、和やかな雰囲気で一同はアンリとイスタルが用意した夕食に舌鼓を打ちつつ、村の未来の姿について話を弾ませる。


「上流から水を牽いて、上下水道を敷きたいとは思います」

「なるほど、どうせなら、更なる発展を見込んだ基礎工事を、今の内に計画しておいて損はなしか」

「柵はいずれ塀に代えるとして、堀は必要か?」

「先ずは空堀で代用して、後から考えればいいだろ?」


 それぞれが思う村の姿、理想と現実をすり合わせて、可能な限り望み通りのものを作り上げる。

 遠足の前夜のように、大の大人が子供のようにはしゃぐ姿を、カオリは暖かな気持ちで見詰めていた。時折意見を求められ、兄から教わった開発系シュミレーションゲームの知識から、便利そうな施設が、この世界にあるかの確認をしつつ、適度に要望を伝える。


 アンリも事情を聞いた視察員から、建物の用途や主産業がどんなものだったかなどを質問され、嬉々として答えていた。

 結局家主が去った家々は、区画整理と資材確保のため、大部分を解体し、新施設に回すことになり、明日、その位置や規模を計り、人夫の人数と、新たに持ち込む資材を計算するという。

 食器を片付け、見張りから戻ったアキと交代し、ロゼッタが離れたところで、カオリはアキ、そしてアンリとテムリを伴って、祠、もといギルドホームに入った。


 アデル達には、アンリ達の父親の形見を奉納している関係から、二人にも祈りを捧げさせたいと伝え、人払いをする。

 アキが先頭で、三人が並んで続く、あの騒動からホーム内は意図せずして拡張されていたため、三人が横に並んでも十分な広さがある。

 松明の明かりを頼りに進み、やがてほのかに明るい広場へ、四人は入った。


「村の丘に、こんな空洞があったなんて……」


 記憶にない洞窟に、また人口光とは違う、魔術特有の不可思議な光の光景に、アンリとテムリは息を飲む。


「この洞窟は、自然にあったものじゃなくて、私が作った(ホーム)なの」

「カオリお姉ちゃんが?」


 アンリとテムリ、二人の繋いだ手を、カオリはチラと見る。

 魔王と呼ばれる。英雄から支援を受けて作られた。神の領域(チート)

 この世界で盤石な力を得るために、アンリ達の村の復興開拓を隠れ蓑として、秘密裏に勧めるギルドホームの施設拡張、ササキが何を望んでカオリに手を貸すのか、その真意を知らぬまま、ササキの庇護を受け続けた先に、何があるのか、いやどんな戦いが待ち受けているのか、カオリは分からない。


(教えることで、その戦いに二人が巻き込まれた時、私は後悔しないと言える?)

「――この剣……」

「父ちゃんのだっ」


 広間の中央に祭られた。姉弟の父親の形見に、二人は近付き、しゃがんで見詰める。触れようとしないのは、祭られたことによる神秘性に気後れしたからか、それともたんに懐かしいだけなのか。


「えーと……、私の故郷の風習で、土地の悪いものを鎮めて、発展を祈願する神殿的な場所なの、お父さんの剣を楔にして、将来的にはここで、職人や農夫の技術だけでは出来ない、色々な物作りが出来る場所にしようと思ってるの」

「いろいろ?」


 「そっ、いろいろ」と、カオリは拙い説明を続ける。


「洞窟自体が魔法の影響下にあるから、錬金術とか魔術付加とか、食料生産とか、普通じゃ作れないものが作れる。らしい……」


 アキから聞いた話を、ササキが言葉を変え、あたり障りのないように言い換えた説明を、若干自信なさげに伝える。


「ただ……、仕組みが迷宮と似ているから、放置したり、楔を取ったりしたら、迷宮化しちゃうみたいで、この国とか地方では御法度なんだよね?」


 暗黙の了解といえど、魔法も使えない一般の民には知る由もないことなのか、アンリもテムリも首をかしげる。


「まあ、そんなわけだから、人には内緒にしてほしいの、表向きには地鎮祭の祠ってことにしているから、誰かに聞かれたら、そうやって誤魔化してほしいかなって……」


 お願いの体を取りつつも、内心は懇願であるカオリ、伺うように二人の反応を待つ。


「ん~、よく分かんないけど、カオリお姉ちゃんがすることなら、私は反対しない、……きっと私達と村のため、なんだよね?」


 カオリは力強く頷く。


「テムリもそう思うよね?」

「魔法で洞窟作っちゃうとか! カオリ姉ぇすげぇ!」


 アンリもテムリも、にっこりと笑みをカオリに向ける。カオリは安堵の溜息を吐き出し、緊張を解いた。

 アンリは父の剣を振り返る。


「それに……、こうしていれば、お父さんの剣が、お父さんが、私達と村を、ずっと守ってくれるってことでしょ? 森に行って帰って来なかったお父さんに、私達はお墓も作ってあげられなかったから……、それがずっと心残りだったの」


 初めて聞かされた想いに、カオリは少し驚く、だが同時に何故今まで黙っていたのかを察する。もしそのことを事前に聞かされていたならば、カオリならきっと、危険な森に遺体を探しに行ったのではないか? それを危惧して、あえて黙っていたのではないか? 

 どこまでも優しく、何よりも強い少女、しかし時には目に涙を溜めて、だがそれでも笑みを絶やさぬアンリは、テムリの手を握る力を強めた。


「偶然出会っただけの私達に、お父さんの剣を届けてくれて、その剣で村を守ってくれて、その後もずっと、危ない冒険者の仕事で私とテムリを養ってくれた。それどころか、誰も居なくなった村を復興するために頑張ってくれて、私、どうやったら感謝を伝えられるかなって、ずっと考えた……」


 込み上げる想いを、ぽつぽつと語り出したアンリに、カオリは心が揺れるのを感じつつ、真剣な表情で耳をかたむけた。

 堪え切れなくなった涙が、一筋、アンリの頬をすべり落ちる。


「ありがとう、それと、大好きだよカオリお姉ちゃん」


 暖かく、ともすれば儚くも見える少女の告白に、カオリは震える四肢から、熱い感情が目頭に昇って来るのを堪えられなかった。


「アンリ……」


 気付けばカオリの頬も、暖かい涙に濡れていた。

 この世界に来て、初めて流した涙は、悲しみや怒りなどではなく、とめどない愛情と喜びである。


「だからっ、カオリお姉ちゃんの思う存分にやっていいよ! 私とテムリも、たいして役に立てないかもだけど、いっぱいお手伝いするからっ!」

「俺も! がんばるっ!」


 カオリはそこでようやく思い出した。最初の想いと、今日までの激動の日々で去来した。自身の心の内を表す言葉を。


(何もなかったから、可哀相だなって思ったから、私は二人を守るって決めたんだ。――でも違う、私が今日まで泣かずに済んだのは、二人が笑ってくれたからだ。家族に会えない寂しさを、二人がずっと暖めてくれたから――)


 アンリとテムリは、カオリを挟んで輪を描くように、左右から力強くカオリの手を握った。

 三人が寄り添った姿はまるで、家族のように、家族であろうとするように。


「わぁーんっ! カオリ様っ、 アンリ様っ、テムリ様っ、このアキめもっ、お三方の幸せを実現するためにっ、生涯を捧げる所存であります!」


 姉弟が広間に足を踏み入れた時から、すでに泣き始めていたアキが、ついに声を上げて号泣しながら、精一杯の宣誓をする。

 結局、跪いて同じような言葉を繰り返すアキを、三人で慰めるのに結構な時間を費やした。

 いつしか皆で、笑い声を上げていた。




「もう驚かない、ええ、もう驚かないわ……、魔法で作りだした神域? 迷宮の模倣? ていうかカオリって、魔法が使えたの?」


 見張りを交代したロゼッタを招き、アンリ達同様の説明に加え、同じパーティーなのだから、ロゼッタには、ギルド【ブレイド・ワン】に加入してもらうつもりでいる。

 驚きを溜息と共に吐き出し、諦観の交る言葉を吐きながら、ロゼッタはカオリの話を、何とか飲み込もうとしていた。

 しばしの黙考の後、ロゼッタはカオリの話を了承した。


「カオリ達の強さの秘訣に、少しでも近付けるなら、貴方達の目標の実現に、少しでも貢献出来るなら、私が断る理由はないわ、あのデスロードがこの祠を占拠して、あの剣を奪い取った理由、そもそもここで、デスロードなんて強力な魔物が発生した原因が、この祠の力と関係しているのは推測出来るもの、魔導士組合とか冒険者組合の人間が聞いたら、飛び付いて来るでしょうね」


(魔導士組合なんてのもあるんだ)


 ロゼッタが挙げた組織名に、初めて聞く名があり、カオリは興味を惹かれる。ロゼッタに早々に話をしたのには、ギルドへの勧誘の他に、もう一つ理由があった。

 冒険者は銀級に昇格すれば、迷宮探索の許可が与えられる。カオリは当然、まだ銅級でしかないため、話こそ聞くも、まだ迷宮に挑戦したことはない。


 魔物を生む苗床、財宝が隠された遺跡、魔法が生み出した異界、一般に迷宮の謎と括られ、日夜研究者がその存在の解明に明け暮れる特異性は、畏怖の念と共に、憧憬の対象でもある。

 階層を下れば、出現する魔物を筆頭に、採取出来る鉱物や植物、果ては財宝に至るまでもが、強力で希少なものへとなるのは、語るまでもない事実である。


 ゆえに、溢れる魔物の討伐に加え、内部の探索を目的に、迷宮に挑戦する冒険者は多い、場所によっては訓練と利益を目的に、騎士団を派遣する領地や国も存在する。

 だがそれは力あるもの達に限った話だ。

 力の弱い民や、魔物を憎む宗教家達からすれば、迷宮など害悪以外の何ものでもない、そのため、自然発生はともかく、人為的に迷宮を生み出す行為を、人々は暗黙の内に禁じたのである。


 教会の教典に至っては、正式に禁止を明記して、犯したものには天罰が下ると脅しているほどである。

 カオリは知らないことがあまりに多い、帝国と王国の関係も、最近ようやく知るようになった程度で、この世界の歴史や文化、果ては常識や法に至るまで、何が良くて何が悪くて、そして、どれほど忌避される行為であるかを、ほとんど知らないのである。


「ロゼにはもっと強くなって、活躍してもらいたい、でもその他にも、この国とか地方の歴史とかを教えてほしいなって……」


 カオリの提案を受けて、ロゼッタが再び黙考する。


「私も知っていることは、他の人も知っていることではあるけど、このホームの存在を知りつつ、適切な助言が出来る人物となると難しいのは分かるわ、賢い人程、組織の責任ある立場の方が多いでしょうし、おいそれとご教授していただけないこともあるでしょうね……、場合によっては国家転覆罪に、教会の異端指定に、考えただけで寒気がするわね」


 貴族令嬢らしからず、眉間に皺を寄せて考えるロゼッタ。


「他に信用出来る協力者は必要でしょうけど、当面は私の方でも考えておくわ、カオリには私の知る知識を教えるから、いざという時はお願いね」

「じゃあとりあえず、【―ギルド・ブレイド・ワン―】」


 ギルドメンバーのマスター員のみが使える。ギルドメニューを開いて、カオリは慣れない操作で項目を探す。現在ギルドホーム内に居るものの中から、ロゼッタを検索してギルド加入を選択、無事ロゼッタをギルドメンバーに加えることが出来た。

 これでギルドメッセージや、後にギルド章を使った帰還魔法なども問題なく使用出来るはずである。

 カオリは早速ギルドメッセージを起動、この手の魔法は使用魔力も少なく、特段詠唱も必要としない、突然頭に響いたカオリの声に、ロゼッタは目を見開いたが、無理やり自分を納得させるように頭を振る。


『頼りにしてる。ありがとうロゼ』


 『ええ、任せて』と短く返事をするロゼッタに、カオリは胸を暖めた。


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