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愛の春夏秋冬  作者: 綾咲 彩希
9/9

秋の語り

 語りの秋


 あの日は冬の寒さが目立ち始めたことだった。

 あの時のウチは優等生そのものだった。遅刻なし。成績よし。態度よし。

 悪いことなんてしたことがなかった。つまらない人生と言われれば確かにそうかもしれないけど、だけど。ウチには夢があった。

「早く家を出たい」

 ウチの両親は本物の親ではなかった。最初の両親が離婚してウチは父に引き取られた。父は、幼い私は嫌いだったようで、よく「なんで産まれてきたんだ?」が口癖だった。八歳ぐらいのウチは嫌われないように、幼さを無くそうとしたけど、八歳という精神的に肉体的にそんなことが出来るわけがなく。父は再婚し、ウチを捨てた。養護施設に保護されたウチには新しい家族が出来た。

 だが、その家族には愛がなかった。ウチが会話をしようとしても会話がなかった。誘っても一緒に出掛けることもなかった。家から音がなかった。

 だから、早く家を出たかった。あんな息苦しい家にはもう居たくない。でも、世の中お金がいる。お金を集める為には仕事をしなければならない。いい仕事を見つける為には資格が必要だ。資格を手に入れる為には、学校で学ばなければならない。だから、ウチはこの学校を選んだ。

 この学校には、有名な大学、短大、専門。数多くの所から募集がかけられる。だが、募集だけでは、ウチが行きたい学校には行けない。推薦が必要だ。

「後、二年の我慢か」

 あと二年我慢すればいい子ちゃんで居なくていい。

 化け猫の皮を被って、先生達に媚を売る。

 推薦はどれだけ先生達に媚を売ったかどうかで決まる。



 ウチの学校には、色々な行事ある。

 その日は、学年対抗の競技が行われる日だった。外は雨で使えない状況だったので、その日は体育館でバスケを行われる予定だ。自慢するわけじゃないけれど、スポーツは出来る方だ。特質、特な競技だけれど、下手でも無いことを自負しているつもりだ。

 試合は、一年vs二年。二年vs三年。三年vs一年。という、総当たり戦。バスケは一人だけで勝てる競技だとは思っていないけれど、一年に負けることは無いだろう。試合のホイッスルが体育館に鳴り響いた。



 結果から言うに一年生は惨敗。足元にも及ばなかった。

 今年の二年は経験者が多い。これなら三年生にも勝てるのではないかと期待が頭を過る。

 だが、それは期待は裏切られるものだ。体育館がざわめきだし、何事かと思うと、次、ウチ達が戦うコートに五人の選手が既に立ってる。一瞬にして納得出来た。ウチの学校、エリート中のエリート。また、異人達の集り。

 小人。奇人。鬼人。番人。白人。友人。

 それが六人の名前だ。本名は誰も知らない。ただ、ウチ達に取っては誰が何者であろうとも、異人には変わらなかった。



 まぁ、エリート中のエリートと呼ばれていることはある。惨敗だ。足元にも、いや、戦うこと自体がおこがましいとすら思った。何故、負けたのかと聞かれれば実力差。何が足りなかったのかと聞かれれば才能。それぐらい、異人達は圧倒的だった。

「ねぇ、そこあんた」

 ふと、後ろから声をかけられ振り向くと、バスケ部のエースにして、今回の試合で圧倒的な実力と指示でウチ達二年をフルボッコにした、小人と呼ばれる小さな異人だった。

「なんですか。先輩」

「さっきの試合、いい試合だったわ。ありがとう」

 いい試合?どこがと思わず言ってしまいそうになる。皮肉なら別の所で言ってほしい。何故、ウチにわざわざ言うのが理解が出来ない。

「でも、あんた一人で頑張りすぎる点が弱点ね。もっと、周りを頼りなさい」 

 それだけ、言うと小人は踵を返し、体育館を後にした。

「頼れるならとっくに頼ってんだよ……」

 ぼそりと呟いた。



「家から早く出たい」

 そう考えるようになって、出来ることは一人でするようになった。家事をするようになった。洗濯から炊事まで何から何まで、とにかく一人で生きれるだけの技術を身につけた。

 他人と合わせることを覚えた。だが、同時に弱みを見せてはいけない。弱みを見せなくなった。見せれば頼ってしまうだろう。相手は助けてくれるだろう。それが、何よりも怖かった。そのことを思うと震えて眠れなくなることもあった。他人は他人。他者だ。いつ裏切るかわからない。いつ居なくなるかわからない。それなら、一人がいい。

 傷つきたくない。傷物になりたくない。

 ウチは臆病だ。



 冬が近づくに連れ、寒さが徐々に増していく。先生がウチを呼び出さなければもっと早く帰れていた。夜は昼と違い、寒さが段違いだ。厚着をしてくればよかったと後悔をする。手や足が寒さでかじかむ。いつも帰りたくない家に帰って暖かなスープを飲みたい。作るのは私だが。とにかく、この寒さでは風邪を引いてしまいそうだ。そんなことになれば内申に響いてしまう。

 暗くて足場が悪いがウチは近道を帰ることにした。小学校の時もよく使った道だが、今はどうなっているのか、不安と高揚感が押し寄せて来る。

 着いてみると案の定やっぱり暗かった。月明かりがなければ、前すら見えなかっただろう。上を見上げれば、綺麗な満月が美しく輝いている。

 視線を戻した時、突如後頭部から強い衝撃を感じる。そのまま地面に倒れ込んだ。何が起こった?意識が朦朧とするなか、思考だけははっきりしている。逃げなければ。立ち上がろうとした瞬間、首筋がチクりとした痛みが走った。何かを打たれた??立ち上がろとしても、身体がいうことを聞かない。まるで自分の身体ではないみたいだ。

「ふふ」

 誰かの笑い声がする。女の声だ。

「見られてもいいんですけど、面倒ですから」

 視界がスカーフか何かで遮られる。これでは。顔が見れない。

「よいしょっと」

 身体を仰向けにされ、服を一枚一枚、刃物で引き裂かれる。掌で肌をゆっくり優しく撫でらる。分かった。分かってしまった。

「」

 出ない声を必死に出そうとするが、やはり出ないものは出ない。そして女は言った

「さて、いただきます」

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