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研究所

 ニャッシュビルの村を挙げての大宴会から二日。

仮住まいで、日々ケットシー達と戯れる仲間達と離れ、俺は連日様々な施設に通っていた。


今来ている施設の名前は『先端技術研究所』

文字通り、人族より進んだ彼等の魔導技術、その最先端の研究の場だ。


「…であるからして、我々にも改ざんが可能なのである。」

俺に力説しているのは、ここの長たる主任研究員の『パーシヴァル』。

体毛は灰色の長毛(確かこんなのをペルシャ猫って言うんだったか?)で、ひどく分厚い眼鏡を付けた、年配だ。

彼は、今俺が聞いた、ギルドカードを何故改ざん出来るのか?と言う質問について、延々と語ってくれている。


「そもそも、このカードの技術自体は、遺跡から発見された物を流用しておる訳だが、人間は発見当時から何の進歩もさせとらんのである。見たまえ!」


そう言いながら、彼が迷宮に落ちていたというカードを、水晶の様な玉にかざすと、何やら文字が浮かび上がる。

「いいかね、名前とランクは解るだろう。その隣にある数字は、到達階層。この魔物の名前に青と赤の表記があるのが見えるかね?青は、遭遇、赤は討伐を示す。人名があるのは、ある程度の戦闘、つまり小競り合いがあったと言う事である。普通にすれ違うだけでは反応せんが、ある一定以上の戦闘行為を行った者同士には、それぞれのカードに記載が残る」


そこまで聞いて、ガイウスとの一件を思い出す…。


「これが、対冒険者で無ければ、戦った相手のジョブが表記される。農民や盗賊といった具合である。これらは、通常戦闘は青、相手を死亡させれば黒で表記されるのである。ああ、ただし、指名手配や討伐依頼の出された者は、もちろん名前が出る。じゃなきゃ無関係の者を殺して、報酬を…って事になりかねんであるからして」

パーシヴァルは、カードを外すと、不満気に明りに照らして見せた。


「このカードも我々の技術を以ってすれば、より詳細な情報を書き込み、読み出す事が出来るだろうに、人間は進歩が無くていかんのである…」


実際、このカードの記録基準は、かなり曖昧な部分もある。例えば、ナーサの召還獣と魔眼で使役するガブリエラ、これらが魔物を倒した時は、どちらのカードにも記録されるが、これが対人戦となると、ナーサは記録されるが、俺は記録されない。

これは、既にスキルとして認知されている召還能力と、未知の魔眼の能力と言うのが、関係しているらしい。結局、カード自体の仕組みが幼稚な為、よく解らない物は、記録しないという事だ。


例外として、ガイウスの魔獣化した魔剣は、『不明(アンノウン)』として表記されていた。

魔物に分類される物は、そういう表記になる場合もあるらしい。


「そう言えば、これをこちらで封印出来ませんか?」

ガイウスの件を考えていた俺は、『魔剣ダーインスレイヴ』を持っていた事を思い出し、彼に見せた。


「むむ、これは吸血の魔剣かね…成程、倒されて低下しているが、それでも尚高い魔力を感じる…吸った血を魔力に変換するシステム…では、低位の魔物から採取した血を魔力に…新型の魔力変換……」


「あの…」

没頭して、魔剣にブツブツと語りだしたので、思わず声をかける。


「おお、すまないのである。未知の可能性を感じたので、つい。だが、シンリ殿の許可がもらえるのであれば、是非とも研究したいのである」

そう俺に言いながらも、パーシヴァルの目は、魔剣に釘付けだ。


「魔獣化すると、厄介ですよ?」

興味を持つのはいいが、無理な事をして、この村で、あんな魔獣が暴れる等、想像したくも無かった俺は、真顔でそう言った。だが…


「ふふん。厄介と言っても『キャスパーリーグ』に比べれば小物である」

確かに、そう言われてしまえば、納得せざるを得ない。


俺は、『魔剣ダーインスレイヴ』をここに預けて、平和的に利用してもらう事にした。




「ところでパーシヴァル、昨日言ってた、俺に見せたい物って?」


かなり脱線していたが、今日俺がここに来たのは、昨日、彼の研究と俺の前世での記憶に、通じるものがあり、それではどうしても見てもらいたい物があると、呼ばれたからだ。


「そうだった。準備に手間取って…まあ、魔法員が3人程ぶっ倒れたが、期待して欲しいのである!」



そう言って、奥の部屋に案内された俺が、見た物は…。


「…ガトリング砲?」


金属製の筒が、数本円形に束ねられた物騒で重厚な姿のそれは、かつて漫画や資料で見た、ガトリング砲に酷似していた。


「ほう、良い呼び名であるな。我々は『連射式魔導発生器』と呼んでいるのである。それより、がとりんぐとやらの方が、格好いいであるな」


そう言いながら、その後方にパーシヴァルが立ち、にやりと笑って、付いたハンドルを回すと、ボンボンボン…と大きな音が連続して響き、前方に置かれていた()の絵の描かれた木の看板が、粉々に砕け散った!


「ふむ、やはり金属部分を強化せねば、実用化は難しいのであるな」

ふと見ると、確かに金属の筒の根元が、真っ赤に焼け付いている様だ。


「でも、凄いですね!どんな仕組みなんですか?」

俺がそう聞くと、再びパーシヴァルによる、長い講釈が始まった。


曰く、炸裂系の魔法を小さな魔石に込め、先端に金属球を付けた弾を作る。

それを小さな突起で傷付ける事により、魔法が発動。破裂の勢いにより金属球が、筒へと押し込まれていく。そこで得られた推進力に長い筒の中を通る事により、直進性を持たせる。


まあ、基本的な銃の原理に近い物だが、単発ならこの世界には魔法があるので、特に必要性は無いが、対軍勢を想定しての対抗兵器として考えているのだとか。

欠点は、強度不足と、一発一発に魔法を込める、魔法員の消耗がとても激しい事らしい。


では、範囲攻撃性のある速効性魔法を開発しては?と言ってみたのだが、きっぱりと「それではロマンが無い!」と言われてしまった。


結局、金属の筒の膨張により、俺は一発も撃つ事が出来なかったのが残念だ。


その後、パーシヴァルとの、ロマンと言う名の武器談義が延々と続いた…。


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