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接触

翌日、俺はシズカとツバキを伴ってギルドにダレウスを訪ねていた。

24階層以降の話と、『黒の使徒』や『時音のおばば』に関する情報を聞く為だ。


一応、受付で取次ぎを頼むと、今日も組長室(あのへや)(本部長室)に居ると言われた。いつも暇なのかな?と苦笑いしていると、ダレウスはここに泊まり込んでるのだと教えてくれた。なるほど、そう言う事か。

部屋に入ると、ダレウスが居り、しばらくしてお茶を持ってシルビアが入って来た。


「なんだ『黒衣』の、今日はナーサは居ないのか?」

「ナーサは、買い物に出かけてるよ。迷宮に入る準備が必要だからな」

残念そうなオーラが、ダレウスとシルビアから溢れてくる。王都にはナーサが一番詳しいので、しょうがない。

その後、まずは迷宮24階層以降の、現在解ってる範囲の情報を聞かせてもらった。


「ところで、『黒の使徒』と言う言葉に、聞き覚えは無いかダレウス?」

迷宮の話が一段落した所で、ダレウスにそう切り出した。ダレウスもそしてシルビアも驚いた様な顔をしている。意外と知名度が高いのかも知れない。


「『黒衣』の、そいつを聞いてどうするつもりだ?」

出来れば関わらせたく無いのだろう、鋭い目つきでそう聞き直してくる。

「身内が、そいつらの被害を受けた。だが、こっちから今すぐどうこうするつもりでは無いから安心してくれ。ただ、いざと言う時、相手の事が何一つ解らないのでは、話にならんからな。少しでも情報を、知っておきたいんだ」


既に関わったと知り、渋い顔をする二人。重い口を開き、説明しだしたのはシルビアだった。


シルビア曰く、『黒の使徒』が表舞台に最初に現れたのは、アストレイアが止めた2大国の戦争勃発の少し前。両国に突如現れ、貴族を扇動して戦争へと導いたと言われている。戦争がアストレイアの介入により回避されると、国内での権力を急速に失い、姿を消した。

その後も、封印された魔物の復活や、軍部の扇動等、事有る毎にその名を聞くそうだ。

彼等の思想は、大いなる魔の復活と破滅による地上の浄化だそうで、貴族達は、浄化後の統一国家での地位を狙っているのだとか。有力な貴族が、裏でパトロンになっている事もあり、ギルドとしても表立って対応する訳にいかないらしい。


「なるほど。ちなみに二人は『時音のおばば』なる人物を知らないか?」

「知らないも何も、その『黒の使徒』の幹部と目されている人物で、表向きは貴族御用達の有名占い師って事になってる。最も目に付く奴らの尻尾さ」

「じゃあギルドは何で放っておくんだ?」

「そりゃ、さっきの話の通り動けないんだ。それに、予言を出したってだけで、捕まえて拷問する訳にもいくまい?占いって事になってるだけに、余計厄介なんだコイツは」

「今、奴はどこに居るんだ?」

「ああ、お前等が王都に来たのと、すれ違い位で、帝国に向かったよ。どっちの国でも貴族に人気があるからな」


一応、ギルドとしては、危険人物と認識しており、その行動は逐一把握しているらしいので、今後『黒の使徒』並びに『時音のおばば』の情報が入れば、教えてくれる様に約束を取りつけ、組長室(本部長室)を出た。


1階に降りた俺達は、迷宮関連の依頼書を掲示板で見て行く事にした。


「おい!そこの黒っぽい3人?」

すぐにギルドを出るべきだったろうか、また妙なのが絡んで来た。金髪碧眼で、軽鎧を纏った長身の男、武器は持って居ない様だ。


「はあ、変な奴だな。何の用だ?」

「お前等が、ブラなんちゃらとか言うパーティのメンバーか?」

「『黒装六華ブラッディシックスブラック』ですわ!なんて失礼な方なのかしら!」

シズカが怒りを顕にするが、その男は、気にする様子も無い。


「ああ、だからその、ブラなんとかで合ってるんだな。シンリってのは、どいつだ?」

「俺だが、お前は失礼極まり無いな!まずは名乗りでもしたらどうなんだ!」


「ああオレを知らないのか田舎者め!この『百戦器(ハンドレットウエポン)』のガイウス・シュトラウス様を!」


「ああ、知らんな」

「全く興味も無いですわ」

「主様、帰ろ?」

俺達3人と対照的に、1階に居た受付や冒険者達は、一様に驚いた顔をしている。


「ふん、驚くのも無理は無い。オレは数少ないS級冒険者なんだからな!」

「別にどうでもいいんだが、俺に何の用だ?」

「無理して平静を装って居るな?無理も無い、S級冒険者に会う機会等、滅多に有るもんじゃないからなあ」

「もう、帰っていいか?」

どうにも面倒くさい奴だ、シズカもツバキも、無視して掲示板を眺めている。


「喜べ、お前を迷宮に連れてってやるから、今すぐパーティを解散して、オレと来い!」

「はああ?」

「聞こえなかったのか?オレのパーティに入れてやるって言ったんだ」

「冗談じゃ無い!それにお前のパーティはどうしたんだ?ずっとソロでSランクになった訳じゃ無いだろう?」


「ああ、壊れたから捨てたよ」

「…なんだと?」

「少し前に迷宮に挑んだんだが、オレ以外は負傷してついて来れなくなったんだ。だから、捨てて新しいパーティを作るんだ」

「お前、仲間を何だと思ってるんだ?」

「仲間?迷宮攻略等、本来オレ一人で十分なんだ。それを規則だから6人集めて連れて行くだけの事。まあ、素材回収なんかもあるからな、荷物運びだ」

「荷物運び?それなら奴隷でも買って連れていけよ!」

「それでもいいんだが、一々俺が護らなきゃならないのは面倒だろ?自分の身位、護れる奴じゃなきゃ下層は、目指せないからな。と、時間の無駄だ、さっさとパーティを解散して…」

「断る!」

「は?今なんて?」

「断るって言ったんだ!この外道!」


俺とは真逆の考えを持ち、それをさも正しい事の様に口にするガイウスに、虫唾が走る思いがした。

ガイウスも、俺の反発を感じ取った様で、顔つきが変わり、臨戦態勢になる。

1階のホールで、対峙する俺達の様子を、遠巻きに冒険者や、ギルドの職員達が見つめてる。


その誰の目にも、衝突は避けられない様に見えた。



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