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パーティ結成Re

 翌日、朝から買い物に出たいというシズカ達と別れ、俺は一人で王都の正門に来ていた。予定では、シャルロッテ達が護衛する商隊が今日到着するからだ。


「シンリ様!」


 通用口から入り俺を見つけたシャルロッテは、商隊には目もくれず俺の下へ走ってきた。


「任務お疲れ。でも商隊の方はもういいのか?」

「はい、後はヨハンが上手くやってくれるから…ところでお姉様達は?」

「ああ。用事があって俺だけなんだ」


「そうですか。ところで、あの馬は反則なんじゃ無いですか?」

「すまない。まさかあんなに速いとは、俺も知らなかったんだ」


「おかげで、ボクがみんなを王都で華麗に出迎える計画が台無し…ゴニョゴニョ」

「なんか言ったか?」


「なんでもないよ!」


 その後合流したヨハン、アンガスとも挨拶を交わし、お互いの連絡先を伝えて別れた。



 宿に戻ると既に全員帰っていて、何故か皆完全装備で待っている。

 よく見るとアイリの装備が大幅に変わっていた。王都の武具店に詳しいナーサに店を案内してもらい買ってきたらしい。

 彼女にはしっかりとした装備を身に着けて欲しかったのと、仲間達が全員何故か黒い装備なので、自分も黒い装備が欲しいと常々言っていたから丁度良い。新装備は黒い軽鎧。黒い金属板を付けた額当てと、漆黒の陣羽織風の上着はシズカの手縫いの品だが、これはまるで幕末の…まあ似合ってるからいいか。


「お兄様、この姿でパーティ登録に参りましょう!」

「私も、みんなのおかげでお揃いです!」

「黒は、主様の色!」

「ほほ、妾とお揃いの色じゃ!」

「ワタシも‥お揃い‥なの」

「もちろんオレもじゃんよ!」


「パーティ名も昨夜話し合った事だし、ナーサの件の報告もある。じゃあギルドに行くか」



 ギルドに着き案内窓口で尋ねると、俺達が来たら本部長室に通すようにとの伝言があった。そこで例の組長室(・・・)に向かうと、ダレウスとシルビアが待っていた。


「おおナーサ!元気だったか?」


 開口一番、ナーサの姿を見て喜ぶダレウス。そのナーサは今、シルビアから無言の抱擁を受けているところだ。

 聞けば出張中の旅路でナーサに出会い、王都で冒険者になるよう薦めたのはダレウスだったらしい。その後王都での生活の面倒をみたのがシルビア。二人はナーサにとって父と姉のような存在なのだ。


「しかし流石シンリだな。ありがとう!」

「いえ、紹介していただいた、こちらが感謝したい位です」

「ワタシも‥ダレウスに‥感謝‥なの」


「ほう、早速息も合ってるとみえるな」

「そうですか?まあ、ナーサは素直でいいコですので」


「もちろん‥だってシンリさんは‥ナーサのダンナ様‥なの」


「ちょっと待てや、ごるああぁぁ!」


 ナーサの発言を聞いた途端、ダレウスの本気の怒気が溢れ出した。部屋の壁がびりびりと振動している。


 ガンッ!

「やめて下さい!」


 しかし、すぐさまシルビアにトレーで叩かれ諭される。やっぱりシルビアすげえ…。


「まあ、その辺の話はいずれきっちり付けるとして…。これでパーティ結成だな!」

「シンリさん、皆さんギルドカードをお預かりします」


 シルビアが全員分のカードを集め、シズカにパーティ名を用紙に記入させると、それらを持って彼女は退室した。


 十五分ほど経って戻って来たシルビアから、各自にカードが返される。


「我求めるは、旅の記憶…」


 カードを手に詠唱すると、皆のカードには所属パーティ名が刻まれていた。



 俺達のパーティ名『黒装六華ブラッディシックスブラック』と。



 元案では六華ではなく六血だったのだが、あまりに暗いイメージだったので、女性が多く華やかな様子を盛り込んだものになった。

 意味は、血よりも濃い(えにし)で結ばれし黒衣の六人という事らしい。なんとも中二臭のする、シズカ好みの名前だ。

 まあ、俺も嫌いじゃないし他の仲間達も大層気に入っている様子なのでいいだろう。


 ちなみに、ナーサのランクがCになっていた。ダレウスとシルビアからのお祝いらしいが、そんなんでいいのかギルドの組織って。


「しかし『黒装六華ブラッディシックスブラック』か、これからその名をよく聞く事になりそうだ!あっはっは」


 ダレウス、余計なフラグになりそうだからそんな言い方は止めてくれ。シルビアには、美しい響きの名前だと好評価だった。女性受けする名前なのかもな。

 ともあれ手続きが済んだので俺達はギルドを後にした。



 その足で俺達は家を買うべく、内区の壁近くにある不動産屋を訪ねている。

 迷宮までは馬車で二日ほど、つまりスーさんなら半日程度だ。それなら馬車泊や野宿をせずとも、物資も豊富で環境もいい王都に拠点を作り、定期的に帰ってきた方が便利がいい。


「いらっしゃいませ。本日はどんなご用でしょう?」

「家を探しているんだが」


 と言いながら、シルビアが不動産屋の場所を教える時にくれた羊皮紙の手紙を渡した。すると…。


「ようこそリッターマン不動産へ。私が店主のリッターマンで御座います!」


 突然、彼は凄く丁寧な対応になった。だからシルビアって何者だ。


「シンリだ。六人で暮らせればいいので、たいした広さは要らないんだが…」

「わかりました!では、こちらの物件はいかがでしょう?」


 そう言って彼は、手元の資料を開いて色々と説明を始めた。俺も暫く一緒に見て話を聞いていたのだが、途中からそれをシズカ達に奪われ、以降は殆ど見れなかった。


「お兄様、これから馬車を出していただけるようなので候補を見に行ってまいりますわ!アイリとツバキを連れて、先に宿に帰ってらして下さいな」


 しかもここに来て候補も見られず先に帰らされるとは…。まあ、女性が大勢集まるとその中の男の扱いなんてこんなもんだ。ここは大人しく任せよう。


 俺は、不安を抱えながらも仕方ないので、後を任せて宿に帰った。



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