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ナーサとダスラ 2Re

 目の前のナーサは、先程までの俯きがちで大人しい感じが消え、粗野で自信に満ちた目で俺を睨みつけている。


「面倒な話は要らないじゃん!要はアンタらがナーサを悲しませないだけの強さを、持ってるか持っていないかだけの話じゃんか!」

「キミは本当にナーサなのか?」


「オレはダスラだ、つってんじゃんか!」

「いや、今聞いたんだが…」


「だぁぁ!ごちゃごちゃうるせえじゃんよ!」


 そう言って彼女が着ていたローブの前を開くと、その下には黒い革製の、ボンテージとしか表現出来ないような過激な衣装を身に纏っていた。先程まで手に持っていた杖を腰に差すと、彼女は後ろから、棘が無数に付いた鞭を取り出し身構えた。まさに女王様スタイルだ。


 俺はそんな彼女を【嫉妬眼(レヴィアタン)】で見て、我が目を疑った。

 そこには、さっきまで


 ナーサ(16)  LV71  召喚師(サモナー)


 となっていたのに、今は


 ダスラ(16)  LV71  魔物使い(テイマー)


 に、なっていたからだ。


 これも二重人格と呼ぶのだろうか。それでは砦に溢れる魔物は、彼女がテイミングした周辺の野生の魔物達か。

 そんな事を考えている間に彼女は側にいた[アンフィスバエナ]に近づくと、その鞭で激しく地面を叩き言い放った。


「アイツを殺っちゃうじゃんよ!」

「よせ、止めろ!」


「シンリっつったな?言葉だけじゃなく、お前らが簡単に死なねえって事を証明してみせるじゃんよ!」


「くっ、シズカは皆の防御を頼む!エレノアは、対毒の結界を張れ!」


「かしこまりましたお兄様!」

「容易い事じゃ!」


 相手の毒主体の攻撃スキルが見えて(・・・)いる俺は、ただちにシズカ達を護るべく指示を出す。


[アンフィスバエナ]は、そんな俺に向かって早速、毒の息(ポイズンブレス)を吐き出した。しかし、俺にはミスティの加護があるので、そんなものはもちろん効かない。


 毒が効いてないと知ると、今度はそれぞれの頭を噛み合い、身体を大きな輪にして転がって体当たりを仕掛けて来る。その巨体故、当たれば破壊力は大きいだろうが、それが俺に当たる筈もない。


 俺がその突進を躱すと、今度は翼で羽ばたき宙に舞い、空から足の鍵爪とそれぞれの頭で咬みついてくる攻撃に切り替える。当然牙に当たれば強い毒の影響を受けるだろう。

 だが、それすらも俺は全て楽々と躱す。この程度なら剣を抜くまでもない。


 攻撃が続く鬱陶しさに強い殺気を放つと、それに威圧され混乱状態に陥った[アンフィスバエナ]は、空中でくるりと向きを変え攻撃を命じたダスラに向かって飛んでいった。


「ちぃっ!」


 ダスラに迫り飛び掛かる[アンフィスバエナ]。今まさに、毒蛇の牙が彼女を貫かんとしている。


「ヒィッ!相手は向こうじゃんかぁぁl!イヤアァァー!」


「コイツ殺すけど、恨むなよ」


 俺は彼女にそうことわると、無詠唱でやや強めに黒い炎を放って[アンフィスバエナ]をあっという間に焼き尽くした。


「大丈夫か?」


 相当怖かったのだろう、俺が声をかけ近寄ると彼女はひしと俺に抱き着いて来た。

 俺の胸に顔をうずめ、小さく震える彼女は…。


「ぐう…ご、ごわがっだ…怖がっだよぉぉ!し、死ぬがど、おぼっだぁぁ!」


 …そう言いながら、ボロボロ泣き出してしまった。


 その過激な衣装の為、柔らかな膨らみが当たってたり、腰に回した手に持つ鞭の棘がチクチクしたりするのだが、とりあえず我慢して泣き止むまで彼女の頭を撫で続ける。


「えっぐ、アンタ優しいね。それにオレを護ってくれた…」


 そう言って彼女は俺の頬に手を添える。


「強い奴は大好き!アンタならナーサをきっと大切にしてくれるじゃんね!」


 彼女の顔が近くなり、そのまま俺に口づけをした。


「え?え?えええええ!なんで‥なの??」


 驚きの声を上げたのは彼女の方だ。たった今自分からキスしてきた相手が、その状況に驚いて目を丸くしている。


「言っておくが、体勢を見て解る通り俺からした訳じゃない」


「また‥ダスラ‥なの」

「いいじゃんか!オレ、シンリに惚れたじゃんよ!」


「そんな‥ダスラは勝手‥なの」

「なんだよ!シンリは強いじゃんか!格好いいじゃんか!」


「でも‥キスとか……」

「ナーサは嫌だった?じゃあ、オレが出てる時だけシンリとイチャつくじゃんよ!」


「…それはずるい‥なの」

「ずるい?はは~ん、ナーサもシンリの事まんざらでも無いんじゃんか?」


「…だって優しいし‥パンも‥美味しかった‥なの」

「そうそう、さっきも優しくオレを撫でてくれたじゃんよ!」


「撫で……ダスラばっかり‥ずるい‥なの」


「…ちょっといいかな?」


 放っておくといつまでも終わりそうにないので、俺はその会話に割り込んだ。


「はい。シンリさん‥ごめんなさい‥なの」

「邪魔してすまない。一応はっきりさせたいんだが、ダスラの課題通り[アンフィスバエナ]を倒し、それなりの強さは証明出来たと思うが?」


「はい‥なの」

「うん!シンリはめちゃめちゃ強いじゃんよ!最高!」


「では最初に言った俺のパーティへの加入の件なんだが、返事を聞かせてくれないか?」


「ワタシで‥いいの?」

「俺は是非パーティに入ってほしいと思った」


「ワタシ()の事、気持ち悪く‥ないの?」

「全然。多分シズカなんかはキャラがいいって大喜びしそうだ」


 俯く彼女からは拒絶の意思はもう全く感じられない。それどころか、耳まで真っ赤になっており、まるで告白シーンのようだ。


「…俺と一緒に来てくれないか?」


「はい。ダンナ様‥なの!」

「オレ達、シンリの嫁になるって決めちゃったじゃんよ!」


「(嫁ってなんだ嫁って?)ありがとうナーサ。ダスラもこれからよろしく」

「「はいなの!」じゃんよ!」



 その後みんなに一人で二人の不思議な新しい仲間が加わった事を報告した。


「さすがお兄様!よくキャラと言うものが解ってらっしゃいますわ!」

「アイリも、シンリ様の妻になりたいです!」

「主様の奥方!決定事項!」

「妾は、いつでも子作りの準備万端じゃ!」


「ライバル‥いっぱい‥なの」

「けっ、だが本妻はオレじゃんよ!」

(だから君達は何故結婚の話を?)


 とまあ、なんとも居心地の悪い会話を聞かされつつ、俺達は王都への帰路につく。

 ちなみに、砦の魔物達はダスラが解散させ、それぞれの棲家に帰って行った。


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