ランク上げRe
翌朝、ギルドに4人で向かう。エレノアは昨夜、積もる話(口喧嘩の続き)もあり、エレナのトコにお泊りだ。
ギルドに着いて、掲示板の前に行くとそこにエレノアがおり、冒険者達がそれを避ける様にしながら依頼を取り合っている。
まあ、さっきギルド正面に数人の男達が黒焦げになっていたのを見たので何となく想像はつくが……。
「おはようエレノア」
「おはようじゃ我が君よ。会いたかったぞ!」
開口一番いきなり抱き着いてくるエレノア。あ、弾力が……いや、その前に周囲の視線が……あとシズカ達の殺気が……。
それら全てを涼しげに受け流し、何食わぬ顔で俺の顔をその双丘に押し付けるエレノア。やっぱりこの人、エレナの先祖だな。ってか、直接行動してくるだけ数段厄介だ。
「ところで、エレノアのギルドカードは出来たのか?」
俺はやんわりと、エレノアを引きはがしながら聞いた。
「エレナに聞いた通り、奥手なのじゃのう我が君は。カードならほれ、ここにあるぞ」
そう言って双丘の谷間に手を入れ、わざとらしくゆっくりとカードを取り出すエレノア。
今この瞬間だけは、喧騒に溢れてたはずのギルドが静けさに包まれ、ギルドじゅうの男達の視線が固まっていた。
「お婆ちゃんのくせに何たる事ですの!キイィィー!」
とてつもない敗北感に包まれたシズカが、ギルドの壁を指で削っている。
「ありがとう。カードは手続きに使うから預かっとく。では、依頼を見に行こう」
このままでは色んな意味でギルド全部が敵になりそうなので、皆を急かし掲示板を見る事にした。
「取りあえずツバキとエレノアをCランクまで上げておきたい。だからC級以上指定の依頼を数件取って来てくれ」
俺が皆にそう言うと、各自依頼書を手に戻って来た。うん、ツバキ。『血影』討伐の依頼書は戻そうね。それ元々キミだから。
依頼書をまとめると手続きをしにカタリナの列に並ぶ。エレノアがいるせいか、周りがかなり距離を取ってるように見える。
まあおかげで特にトラブルも無く手続きが済み、俺達はギルドを後にした。
「大体、エルフは白い肌に控えめな胸じゃありませんの?」
「妾は、第三次成長後なのじゃ。あんな貧相な連中とは違うての」
「肌もですの?まるで話に聞いたダークエルフにしか見えませんけど?」
「ほほほ。これは旅をしている内にこうなったのじゃ。陰気臭い森の奥にいれば、白いままじゃったろうがの」
「日焼けした巨乳エルフって、どんだけエルフ感を台無しにするキャラですのよ!」
「どうじゃ我が君よ。そなたが白い肌の妾を抱きたいのなら、そうするのじゃが?」
「いや、それは別にいいんだけど」
俺達は街道脇の洞窟に棲みついてしまった、大量のオーク討伐に来ていた。
洞窟からは奥が見えないほどの大量のオークが次々押し寄せて出て来るのだが、それをシズカはハンマーで叩き潰し、エレノアの杖にある鷲の頭から出る炎が次々と消し炭にする。そんな事を、先程の会話を呑気に話し込みながらやってる二人。
奥から出てくるオークの数がまばらになり始めた時、俺の影からツバキが出てきてチョイチョイと裾を引く。
「主様、奥、殲滅完了」
「終わったのか、お疲れツバキ」
労い、頭を撫でてやると本当に気持ちよさそうに目を細める。やっぱりツバキには癒されるなあ。
「主様。この奥、巨大豚」
「ツバキ、オークの亜種が居たのかい?アイリ、奥に行って回収してきてくれるかな」
「はい、行ってきますシンリ様!」
「お兄様、こちらも片付きましたわ!」
「我が君よ、これではたいした運動にもならぬ。大規模魔法にて、洞窟ごと溶かし尽くせばよいものを」
「いやいや、地形は変えちゃだめだよ。俺達も苦労はしてるが、何事も加減する事を覚えてくれ」
「我が君の仰せとあらば仕方あるまいのう」
オークの死体回収から戻ったアイリと合流し、俺達は次の依頼に向かう。
農家の畑に現れた巨大植物の魔物。
山道に現れ旅人を襲う、大きな蛇。
普通サイズのミノタウラウノス。
谷のつり橋に巣食う盗賊の殲滅。
湿地帯に現れた、突然変異の巨大スライム。
魔物が飛び交う断崖絶壁にのみ生える薬草採集等々…。
途中、型のいい大鬼に遭遇したので、それもリッペ達への土産にと倒して回収した。
「あははは……」
夕方、ギルドに依頼達成の報告と素材引き渡しに来ると、カタリナはすっかり固まってしまった。
「いや、先日のミノタウラウノス亜種の件もあり、大抵の事なら驚かないつもりだったんですが。この難易度の依頼をこの量、それもたった一日で片付けちゃうなんて…。本当にシンリさんのパーティは、何でもアリですね。あははは…」
報酬受け取りとカードの処理を行うと、ツバキはCランク。エレノアはDランクになっていた。
ちなみにBランク以上は試験があるので、俺達はCランクのままだ。
宿に帰ると空室が出来たというので、もう一部屋借りようとしたら満場一致で却下される。
「いや、5人になったし、皆も狭いかと……って、あれ?」
既に誰もいない。なんだこの女性陣の団結力。
夕食は、アンナに差し入れた豚三昧にしてもらう。オークは役職持ちほど、いいもの食べてて美味いらしく。今回見つけたのは将軍。かなりの高級食材だ。
「いやあ、こんだけいい肉だと腕の振るい甲斐があるってもんさね!」
お世話になっている御礼にかなり大量にあげたので、アンナも大喜びしてくれたようだ。




